風信子(ひやしんす)の☆本の紹介&エッセー☆俳句

濫読・雑読の風信子(ひやしんす)が気の向くままに、お気に入りの本を紹介いたします。

4月6日 今日、紹介する本は『武士の娘』杉本鉞子 著作です

2005年04月06日 | ☆ひやしんすの☆好きな本の紹介♪


雪深い、越後長岡藩に彼女は生まれた。生まれた時、へその緒が首の周りに巻き付いていた。当時の人は、このことを仏様に特別の思し召しを受けていると解釈したようである。『ヱツ坊』は、尼にして仏様に差し上げる。杉田家の女たち、祖母や母はそう決めていた。

かくして、6歳の歳に菩提寺の僧が勉学の師匠として家に通ってくることになった。『ヱツ坊』はいそいそとしてこの勉学にいそしんだ。わからないなりに漢籍の勉強が始められた。

彼女は師匠のことを、こう語っている。
「後になってこのお方は、真の信仰を持つ人はまた同時に革新的な心情の持ち主でもあることを身を以って証明されました。と申しますのは、このお方は、仏教とキリスト教とを結びつけた新しい教義を主張されたため、本山から破門されたのでした」

父は、偶然か故意か、寛い心の僧侶を私の師匠に選んでくださったのだと言っている。このことは彼女自身が、成長してから日本という伝統社会とアメリカという文明社会で二つの世界を生きながら、両方の長所短所を理解し、自分を解放していこうと考えていたことを示す良い例だ。

尼になるはずが、どうしたことか不問に付されて、アメリカへ渡っていた兄の知人と結婚することになった。婚約した。相手が長期間アメリカから戻れないことがわかり、家族会議の結果、東京の親戚へ預けられて、宣教師の経営する学校で勉強することになった。

とまどいは多かったが、「質問することは進歩の第一歩である」と悟るようになったとある。固くむすぼれていた精神がだんだんに解放されていく驚き。歓喜、心のときめき。

やがて渡米。夫との新婚生活をおくりながら、彼女は、アメリカへの思い込みや誤解があったことを知る。女の人が結婚を申し込むんでしょう。どうして自分で選んでおいて離婚が多いの。

なぜ、寄付やバザーでわずかな家庭用品を買うのに夫の許可がいったり、夫にお金を管理されていて上手にお金をおねだりしないと駄目なの。なんて恥ずかしい立場なんでしょう。日本では妻は自ら判断して一家の支出を司っているのに。婦人が自由で優勢な、このアメリカで、威厳も教養もあり、一家の主婦であり、母である婦人が・・・。







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『武士の娘』 杉本鉞子 著