風信子(ひやしんす)の☆本の紹介&エッセー☆俳句

濫読・雑読の風信子(ひやしんす)が気の向くままに、お気に入りの本を紹介いたします。

4月1日 今日、紹介する本は『血脈』 佐藤愛子 著作 です。

2005年04月01日 | ☆ひやしんすの☆好きな本の紹介♪


今晩は、突然の思いがけないことがあって読書日記も中断して、オオ・・・。なんと、もう4月。入院した身内(6才しか違わない母方の叔母)を案じる物憂い気持が、すっかりと意欲を失わせてしまっていたのだと今になって気がつきます。それほどの情を感じるのも、幼い頃にたっぷりとその女が情を掛けてくれていたからなのです。

とはいえ、相手(叔母)にも家庭があり家族も、嫁いだとはいえ娘たちもいれば、不安を感じているだけです。果たして病院の手配は大丈夫かなとか、口に出せるはずもなく医療は都会のほうが良いのではないかななどと、心配するばかり。今は回復に向かっているのを嬉しく思っています。目を掛けられて、微笑みを向けてくれて、孤独な子供時代のオアシスであった母の実家。

2月末からは、こちらも夫の入院とヘルニア手術。流行のディンクスではないけれど、子供のいない共稼ぎの夫婦の一方が病気をすれば、並ならぬ孤独を感じます。田舎の身内は遠くて誰もくることはかなわず、病院帰りに一人で夜の街に電車を降りれば、つい本屋へ寄って、深夜の息抜きに本を求めたくなるのでした。

思えばPCの勉強ばかりに明け暮れて、小説を手に取る余裕のなかった昨今でした。なんだかストレスと戦うようにというか、息抜きといっては文庫本や雑誌を手当たりしだいに買いこんでは家路につくのが日課になってしまっていたよ。

今日、紹介する本『血脈』 佐藤愛子著はその中でも、分厚い本です。8百円×3冊は読み応えあるけれど、文庫になるのを待っていた本。
孤独な気持で、孤独な作中人物の生と死を読んでいきました。
佐藤紅緑とサトウハチローの2人ともハチャメチャナ人生を送った親子作家を、佐藤愛子が出版社から届けられる膨大な資料を読み解きながら、あたかも歴史小説のように、家庭騒動を俯瞰して綴っていきます。愛子さん、マダ生まれていないときから始まっている話を、このときはハチローはこんな気持だったんだ、義理の母のシナはこう思って不甲斐なかったんだと、忖度する。そして、自身の愛子も正直に描かれる。実に面白い。

しかし、私が身につまされたのは愛子さんの姉の早苗の変化だった。生活費をギリギリしか渡さない夫にひたすらつくし、ミシンを踏んで暮らしを立てた姉、早苗。夫と子供に好きなおかずを譲って、それを喜んでいた早苗。突然に変異して利己主義者になってしまった。35年目の夫への反乱である。ソコを読んだ時に、ハラリと解けた気持がした。そうなのか、人は夫の横暴を我慢して耐えて生きていくと、あるときから反乱するのか。田舎の身内(母)もそうであった。良き夫と他人からは羨ましがられても、納得いかないやり口で人生を曲げられた悔しさは耐えがたいものであったのだろう。

身内(母)は流産して、会社に出社してみると、夫から退職願いが出ていたのであった・・・。もう覆すことは出来ないと人事に言われたときの無念さ。無断でしたことも、お前の健康を考えた結果だと言われておしまい。我慢したことは、人生の最終章で取り戻そうとされるものらしい。