2018上期・東京制作のNHK朝ドラ「半分、青い。」が好評だ。岐阜の架空の街・東美濃市に生まれ育ったヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が漫画家を目指して上京し、秋風羽織(豊川悦司)のもとで目下漫画修行中なのだが、先週末あたりから恋愛にすっかりうつつを抜かしている。
星野源の主題歌「アイデア」も一度聴くと頭の中をグルグル回るほどに印象深く、秋風が「真実の味だ!」と絶賛した五平餅が週末になると岐阜県内の道の駅やSA・PAでは売り切れ続出となる、とも報じられている。
鈴愛や秋風が時として言う
「…やってまった…」
は、「そだねー」に次ぐ流行語の候補になる可能性がある。
(『ふぎょぎょ』は、おそらく流行らないだろう…)
トレンディドラマの脚本家としては第一人者の北川悦吏子の脚本とあって、話はまどろっこしくなくスムーズに流れていくのだが、唯一引っかかるのがその時代設定に異議を唱えたくなる場面がヒジョーに多いのだ。
これは番組開始当初から云われていた事だが、まず鈴愛が幼なじみの律を呼び出す時に笛を吹くのが「マグマ大使」の影響なのだとか。
私は1968(昭和43)年生まれで、マグマ大使は再放送で少し観た程度であり、ほぼ馴染みはない。まして私より3歳若い設定の鈴愛が「マグマ大使」のマネをするとは、極めて考えにくい。
当時東海地区では「マグマ大使」が盛んに再放送されていたというのであれば話は別だが、ネットのクチコミなどを見る限りそのような事実を伝えるコメントは見当たらない。
そして少年期を過ぎ、話は1989年に進む。鈴愛と律は高3になり、進路を決めなければならない。
6月頃の設定だが、鈴愛の母・晴(松雪泰子)が居間でラジオを聴いていると牛若丸三郎太の「勇気のしるし」が流れるのだが、この曲は当時栄養ドリンク「リゲイン」のCMソングとして大反響となり、秋にフルサイズの曲となりヒットした。
従って1989年6月には、「勇気のしるし」フルサイズは存在しなかった。
舞台となる東美濃市の架空の街・梟(ふくろう)町に「岐阜サンバランド」が出来る話が持ち上がり、街は色めき立つのだが結局計画は頓挫。
この時にサンバ隊の衣装を発注した見積書の書体をご覧いただきたい。
コレはどう見ても、マイクロソフトのフォントだ。
1989年当時このようなフォントは存在せず、パソコンそのものも全く普及していなかった。
存在したのは「書院」「ルポ」など24ドット、ヘタすりゃ16ドットのワープロ専用機で、それでも20万円近くしたため持っている人は少なかった。
この程度の見積書は、みな手書きであったはずだ。
明けて1990年、鈴愛は秋風に誘われて漫画家修行(最初は『炭水化物要員』だったが)、律は西北大学に進学のため上京する。
ところが律の服の着こなしがシャツアウトで、イマドキすぎるのだ。
当時はトレンディ俳優の吉田栄作がヘインズのTシャツをジーンズにインしていたように、アウトで着る事は考えられなかった。私などは寒くなるとカーディガンまでもジーンズにインしていたが、当時はそれが普通だったのだ。
鈴愛は律と同じマンションに住む北海道出身の朝井正人に恋をするのだが、その印象的なシーンでは「東京ラブストーリー」のテーマ曲として大ヒットした小田和正の「ラブストーリーは突然に」のパロディBGMが決まって流れる。
我々はリアルタイムだったためすぐに反応してしまうのだが、あのドラマと曲がヒットしたのは1991年前半だ。
よって1990年の恋愛シーンに流すのは、適切ではない。
今朝も鈴愛が正人に電話をしようか逡巡するシーンでは、鈴愛がオフコースの「Yes-No」を口ずさんでいた。
しかし「ラブストーリー」のヒット以前で言えばオフコースやチューリップのファンは我々の世代が下限であり、我々以下の世代が「ラブストーリー」のヒットで小田和正(オフコース)を知る前にそれを唄うというのも、ヒジョーに考えにくい。
…ま、そうやってディテールにツッコミを入れるというのはそれだけ真剣に観てハマッている、という事なのだが(笑)…