いごっそうの棲家

以前のblog『オトツマ日記』を改名。オットだけのボチボチ更新雑記。

深川駕籠 山本一力

2007-09-03 09:10:51 | 小説
引越しの際に書棚を整理したら懐かしい本がたっくさん出てきて、
ちょっくらセレクトして読み返しちゃおうかなと思い、一力センセの
深川駕籠を読みました。

タイトルを読んで字の如し、深川を走る駕籠かきの物語。

深川黒江町に住む、元臥煙(がえん)・・火消し の新太郎と元相撲取りの尚平
コンビが江戸を所狭しと駆け巡る。

肩に刺青がある気難し屋の差配の木兵衛、男気たっぷりの今戸の親分芳三郎、
とその子分の面々、二人を認める鳶の辰蔵、元壺ふりで一膳飯屋を営むおゆき、
そして長屋の面々の力を借りて新太郎は景気の冷え込んだ江戸の町に
活気を興す走り比べに出ることになる。
深川黒江町から高輪大木戸までの往復三里。しかも帰りの大川は泳いで渡る。
飛脚の勘助、鳶の源次、そしてライバル千住の駕籠かき寅の四人。
相肩尚平の授けてくれた必勝法を胸に、男の矜持を賭けて師走の江戸を
駆ける新太郎。
しかし悪徳同心大野清三郎に因縁をつけられて、大野は四人をお縄にしようと
様々な罠を仕掛ける。

とっても小気味いいテンポで話が進む。
二人の経歴、鳶の親方辰蔵と出会った成り行き。
おゆきとの係わり合い。今戸の大親分芳三郎との対等な付き合い。
すべてが最終章への序章となっている。

そして出てくる人物すべてが気持ちの良い人物ばかりなのだ。
(同心大野はのぞくが)
特に一力センセは、渡世人をかっこよく書く。
懐がでっかくて深くて子分を大事にし、義理と人情を人一倍重んじる
カッコイイ親分がよく出てくる。
個人的には主役の二人よりも、芳三郎親分が好きだ。
それと、ちょい役だが蓬莱橋の損料屋喜八郎(デビュー作主人公)も出てくる。
一力センセの書く時代が、ほとんどが寛政の改革で景気が冷え込んだ江戸を
頑張って生きる市井の人々の姿を書いているから、当然時期は重なってくる。

だから、江戸屋の秀弥や喜八郎、猪之吉親分、など一力お気に入りのキャラが
たびたび色んな作品で登場するのだろう。

最後の最後、大野が取り押さえた新太郎たちを解き放つ件はちょっと無理が
あったような・・・
しかし豊吉の今後の身の振り方を考えたら一番良い流れではあったが。

しかし最近の作品と比べたら出来は格別だった!!
さて次はなにを読み返そうかなっ。