いごっそうの棲家

以前のblog『オトツマ日記』を改名。オットだけのボチボチ更新雑記。

研ぎ師太吉  山本一力

2008-02-15 11:36:26 | 小説
久しぶりに山本氏の作品です。

なんか感想書くほどの・・・・って感じです。
最近の山本氏は起承転結の起承転まではなかなかいい感じなのですが
どうにもこうにも結がよろしくない。
この癖をどうにかして欲しいかな。

中盤まではあんなに丁寧に書いているのに何故終盤になってきたら
ちゃっちゃっと書いてしまうのだろう。
あと、登場人物が皆かっこよすぎ。
あんなに全員が粋な江戸っ子なわけがない・・・と思いつつ
ページをめくっています。
あっさりと読み終わってしまいました。

それでも読み続ける私。
今日も新刊を借りに行きます。
いつかまたあの感動をと期待しつつ・・・・

隠蔽捜査  今野 敏

2008-01-22 11:26:46 | 小説
東大出キャリアの警察庁幹部、竜崎伸也。
国家公務員は常に国家と国民に仕える身として誰よりも清廉潔白に
正直に生きてきた。
常に自分が正しいと思ったことのみ実行し、間違ったことや道を外れた
ことは全否定する。
今時こんな人いないだろうと思われるぐらいの滅私奉公タイプ。
自分は周囲の人間からは好かれていないだろうと思いながらもそれもまた
国家公務員としての任務には付き合いなど必要ないと割り切ってきた男。
その竜崎の幼馴染で、警視庁刑事部長の伊丹は竜崎とは真逆なタイプの男。
竜崎は長い間伊丹との過去の確執に囚われていた。

そんな折、連続殺人の犯人が現職の警察官である事実が判明。
警察はそれを組織ぐるみで隠蔽しようとしている。
伊丹はその指揮をとる立場にあった。
竜崎は何とかそれを阻止し、きちんと表明し正しい決断をさせようと
伊丹をはじめ上層部の説得を試みる。
しかしその最中、竜崎は息子が麻薬を使用しているところを見つけてしまう。
知っているのは自分だけ。
自首させれば息子の進路だけでなく自分のキャリアの道も娘の結婚話も
全て水の泡となってしまう。
犯罪の隠蔽はどうなっていくのか・・・・・



一言!!日本の官僚と政治家がみな竜崎みたいな人物であったならば
この国は素晴らしい国家となってるだろうなぁと思った。
私利私欲や利権で動かない人物こそが国家のリーダーとなるべく人物。
ある意味作者の願望みたいなものなのだろうか。
だってこんな人今の世の中いないでしょ。





ブラックペアン1988  海堂 尊

2008-01-21 08:14:37 | 小説
チームバチスタシリーズの最新作。
バチスタはなんと映画化も決定!!
主演の二人は白鳥を阿部寛、田口を(原作では中年男性)竹内結子が演じる
らしいのですがさてどんなものでしょうか・・・

今回はその白鳥は出てこない。
田口はちらっと出るには出るがまだポリクリ時代の若き医学生として。
ジェネラルルージュの回で活躍した速水医師や島津医師も一緒に登場。
そう、今回は20年前の東城大学付属病院での出来事。
主人公は若き日の病院長高階と研修医一年生の世良、そして手術室の悪魔渡海。
この三人が織り成す物語だ。

天下の帝都大学から鳴り物入りで東城大学付属病院にやってきた高階は
アメリカ仕込みの最新器具で食道ガン外科手術の新しい境地を開こうとする。
しかし古い考え方の教授たちは真っ向から反対する。
腕だけは神業と言われる変わり者の渡海もそれを否定。
最高の外科技術は選ばれたもののみが体得できる特殊な世界だと。
手術を簡単にできるようにする器具など言語道断なのだと。
その大学病院内の対立に巻き込まれる研修医世良。
そして物語には若き日の猫田、花房、藤原の看護士たちも登場する。
バチスタシリーズでは全員超ベテラン看護士なだけに、初々しい姿や
若き日の姿はとても面白い。

そして物語は患者の体内に取り残されたペアンが発見され表ざたになった
ところから急展開していく。
しかし当時の執刀医である現外科教授の佐伯は知っていてペアンの置き忘れを
そのままにしていた。
手術室の悪魔渡海はそれにどう関係があるのか。
そしてブラックペアンとは何なのか。

面白い、とっても面白いのだが私はやはり変人白鳥の存在が無かったので
少々物足りなく感じてしまいました。。。


半夏生~東京湾臨海署安積班  今野 敏

2008-01-17 11:07:00 | 小説
すいません、オットのマニアックな記事の合間にちょっと書いちゃいます

私が読む今野氏二作目の作品。
どうもこれはシリーズものらしく、たまたま図書館で手に取った
この作品はシリーズの中の何作品目かにあたるみたいです。

お台場でアラブ系の男性が行き倒れとなったと通報が入った。
何故かその通報が強行班係りの安積の元に寄せられる。
直ちに現場へと向かわせて男性を病院へ収容するが、身元の分かるもの
を一切持っていない。
そして高熱で意識不明のまま男は亡くなった。

政府はバイオテロと判断し、お台場は封鎖されようとしていた。
そして接触した警官二名も発病。
ペストか天然痘かの保菌者と疑われたそのアラブ人を最初に解放したと
思われるホームレスの行方がわからない。
このままでは感染がどんどん広がっていく恐れがある。

混迷する政府の指揮系統と、分裂する省庁の意見。
その指揮下にありながらも、いち刑事としての目線で部下とともに
事件を追う安積班。
本庁からやってきたキャリア警視との対立。
お台場は日本はどうなるのか。

最初はなかなかテーマが壮大すぎてどうだろうと思っていたのですが
いやはや面白い裏切られ方をして満足です。
このシリーズ、早速別のも探して読んでみたいと思わせました。

警察の血  佐々木譲

2007-12-28 08:37:19 | 小説
2007年このミスの第一位作品。
上下巻からなる超大作です。
多少ネタばれですので未読の方は気をつけて下さい。

戦後の激動の時代に駐在警官となった安城清二は、二つの未解決の殺人事件
を水面下で追っていた。
そんな折、駐在所隣の五重の塔が火災となり現場整理をしていた筈の清二が
少し離れた線路上で遺体となって発見される。
警察はその死を自殺と断定し、殉職扱いとはしなかった。

その息子民雄は父の死の真相と二つの未解決事件が関連していると思い
それを調べるために、そして父の後を継いで駐在警官となるために
警察官を志望する。しかし民雄のあまりの優秀さに警察幹部は彼を公安の潜入
スパイとして北海道大学に学生として送り込む。
時は学生運動がもっとも盛んだった時代。
民雄は日本赤軍との関係もあると疑われる学生グループに近づいていく。
無事任務も終えたが、彼は長期間の潜入捜査のせいでPTSDとなっていた。
治療を続けながらも念願の父と同じ天王寺駐在の駐在警察官となった。
そして民雄は父の死の真相に一歩一歩近づいていく。
が、民雄もまた志半ばで死んでしまう。ただし今回は殉職。


そしてその息子和也もまた警官となる。
祖父の死の真相を調べている途中で殉職した父。
祖父の死に隠された真実を暴くことが父の遺志を継ぐことだと決意する。
しかし優秀な上に三代続いた警察の血を理由に、同僚警官の服務規程違反と
汚職の内偵を言い渡される。
和也は祖父の死の真相を知ることができるのか。
そしてまた本当の警察官のあるべき姿とはどんなものなのか、どこまでが
違法なのかそうでないのか和也は逡巡しつつ警察官であり続ける事を選ぶ。

黒と白の境目に立っているのが警察官だ。
市民から支持されている限り境目に立っていられるんだ、と。

800ページ近い長編なのですが、全く飽きさせずに一気に読ませる
魅力満載の作品でした。
一つの事件を三代にわたって調べていく過程の主軸の他に、三人それぞれの
警官としての物語がまた一つの短編小説ぐらいにしっかりと書かれている。
それだけでも十分楽しめます。
選んだ道は三人三様なのだけれど、信念の目指すところは皆駐在警官を
目指していた。そのこだわりもちんゃと納得できるぐらいに細かく心理
描写されている。
とにかく、さすがこのミス第一位の作品だ!!と惚れ惚れしました。





制服捜査 佐々木 譲

2007-12-12 17:21:35 | 小説
この作者の作品は『うたう警官』(もしくは笑う警官と変題されている)を
含めて二冊目。

今回も北海道警察が舞台。
とある小さい町の駐在所勤務のお巡りさんが主人公。

道警は数年前の癒着不祥事がきっかけでどんな部署でも五年以上の任期を
勤めることなく転勤、もしくは配置換えとなってしまっている。
小さい町の地域情報を、やっと覚えたところで転勤だ。
北海道釧路市、広尾警察署志茂別駐在所の位置する町もそんな町のひとつ。
この町は非常に犯罪発生率の少ない町だった。
町の有力者たちは駐在など全くアテにせずに自分たちで自警団のごとく
犯罪を撲滅している。
犯罪者を挙げるのではなく、犯罪にしないという方法で・・・

元刑事部にいた川久保は赴任したての単身赴任。
捜査権などない彼が自分なりの地道な捜査とカンで、制服警察官の
誇りと意地で小さな町に根付く腐敗と闘う。

一言で言うと、警察小説にしてはとっても地味です。
しかしそれが地味なだけにとてもリアル。
最後はかなりスカッとした気分になりました。



吉原手引草  松井今朝子

2007-12-02 17:29:59 | 小説
第137回芥川賞受賞作品。
大好きな吉原を舞台にした作品でもあり、受賞直後から読みたくて読みたくて
仕方なかった。
やっと図書館で手に入れました!!

物語は、吉原の花魁の中でもひときわ際立って吉原一と謳われた
舞鶴屋の葛城失踪の謎解きを主軸としている。
戯作者の卵だと名乗る謎の男が、葛城に関わった様々な人々に花魁の失踪の
理由を調べて回る。
全編様々な人が語る葛城の話のみで、当の葛城自身は回想以外出てこない
という面白い語り口になっている。

吉原からの失踪などと、有り得ない芸当をやってのけた葛城は吉原に来た
当初から謎と魅力を持った女だった。
茶屋の内儀、楼主、遣り手、番頭、床回しや船頭。
馴染みの客や身請けをするはずだった男等々いろいろと聞くが誰しも
失踪については知らぬ存ぜぬで語りたがらない。
重い口を開いても肝心の謎の深層には一向にたどり着かないように思えたが・・

色んな人物が、花魁葛城のことを語っていく中で吉原のしきたりや行事。
遊女の生活や花魁との違い。
遊女たちの手練手管までもが語られて、これ一冊読めば吉原のことなら
なんでもござれという具合に詳しく書かれている。
これぞ吉原手引書!!だ。

満足のいく一冊でした。


ジェネラル・ルージュの凱旋  海堂 尊

2007-11-29 14:22:47 | 小説
お待ちかねのバチスタシリーズ第三弾。

今回は二冊目のナイチンゲールを必ず読んでから見て欲しい一冊。
前回の作品と同時進行的に書かれているのだ。
伝説の歌姫が入院し、殺人事件で院内がばたついているとき、
実は万年講師田口公平のもとに怪文書が届いていた。
救命救急センター通称オレンジ一階の部長速水が、業者と癒着している
という匿名の告発文書。
病院長からまたもや依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出す。
倫理委員会エシックス・コミティの横やりや、謎の新人看護師姫宮、
そしてお待ちかねの厚生労働省変人・白鳥の介入で事件は謎をさらに
深くしていく。
大学病院の崩壊しきった現状と虚構、院内政治。そして看護師間の女の争い。
速水の夢だったドクターヘリの実現は・・癒着は事実なのか。


これはこれは、やりました。
ナイチンゲールとの同時進行作品と分かったときはさてどうなるかなと
思っていましたが、蓋を開けたらもう最高。
今回は殺人はなく、医療現場の理想と現状の矛盾を追求している。
例の読み終わりたくない病が発生してしまいました。
しかしページはめくりたい。
あっという間にラストまで読みきりました。

速水医師・・・役者は江口洋介かな、やっぱり!!

ナイチンゲールの沈黙  海堂  尊

2007-11-29 13:59:10 | 小説
バチスタシリーズ第二段、ナイチンゲールの沈黙。

前作と同じ、東城大学医学部付属病院が舞台。主人公というか軸となる
人物はやはり同じく東城大の万年講師田口公平医師。
東城大小児科病棟~通称オレンジ病棟二階に勤務する浜田小夜は、担当している
眼球に発生する癌患児の苦悩に心を痛めている。
子供たちのメンタルサポートを田口に依頼するが・・・
そのころ同じくして伝説の歌姫が大量吐血で救急入院する。
そして、眼球癌の患児のネグレクトの父親が殺され、警察庁から派遣されている
加納警視正が院内捜査を開始する。
浜田小夜の歌に秘められたパワーとそれを解明する伝説の歌姫。
患児の父親を殺したのは?アリバイは崩れるのか?
そして子供たちの眼に未来はあるのか。
またもや、厚生労働省の奇人変人、白鳥圭輔が加わり加納と田口とともに
真相究明に向かって迷走していく・・・

大賞受賞後の一昨目という緊張もあったのか、かなりの大作となっている。
作者の意気込みが伝わってはくるのだけれど、力みすぎの感も否めない。
ちょっぴり大掛かりすぎるプロットと、単純すぎるトリックに多少の
拍子抜けもあるけれど、やはり人物を描くのが上手い!!
飽きさせないのがこの作者の魅力。

そろそろ田口と白鳥に役者をあてて読みたくなる時期かな。
さて、田口は・・・佐々木蔵之介かな?
変人白鳥かぁ。。。。役者さんに悪くて浮かばない


チーム・バチスタの栄光

2007-11-27 11:54:47 | 小説
知っている人も多いだろうと思われるこの作品。
宝島社の『このミステリーがすごい』の第四回大賞受賞作品。
本屋の棚を色鮮やかにしていたひときわ目立つ黄色の装丁。
前々から読みたくて、でも単行本なので買おうかどうしようか
迷っていたら、なんと最近通いだした図書館で発見!!

東城大学医学部付属病院に、米国から心臓移植の権威 桐生恭一を
助教授として招聘し、心臓移植の代替手術バチスタ手術専門のチーム
『チームバチスタ』を結成。
100%の成功率を誇り国内唯一無二の勇名を轟かせていた。
しかし、三例立て続けに術中死が発生。
だが、子供の手術だけは成功を収めていた。
原因不明の術中死に危機感と不信感を抱いた病院長は、神経内科教室万年講師
の田口公平に内々に内部調査を依頼する。
『なんで俺が!!』と思いつつも卒論の時の借りを返すときが来て
しまったと、嫌々調査を引き受けるが当然調査は暗礁に乗り上げる。
そこに、厚生労働省大臣官房秘書課付技官と名乗るなんとも怪しい
男が調査に加わる。その名も白鳥圭輔。
彼の超変人ぶりと際立ったキャラが最高に面白い。
奥田英朗の『インザプール』の伊良部医師を連想させる、いや変人ぶりは
それ以上か
とにかくコンビを組んだ二人の真実の追究劇は論理的な出鱈目をかましつつ
出たとこ勝負で一歩一歩近づいていくのだ。

現役医師の医療小説は少なくない。
医療事情に精通しているだけあって、現場の生々しさや専門分野の詳細さは
どの作者も似たり寄ったり。
ただ、この作者みたいにプロットもしっかりしていて、脇役にいたるまで
きちんと人物像が描かれていて且つキャラ立ちしている作品はそう多くない。
そして説得力に満ち溢れている。
読み進むうちにぐんぐんと引き込まれていく様はベテランプロ作家並み。
次作の『ナイチンゲールの沈黙』も是非読みたくなりました。

でも私の中の医療小説の最高峰はまだまだ『白い巨塔』かな。