今年度最後の読書会は11月12月と2回に渡って、芥川龍之介の『舞踏会』だった。
これはフランスの作家ピエル・ロティが日本滞在の体験を元に著した
『お菊さん』と『江戸の舞踏会』を下敷きにして、芥川独自の作品に仕上げたものである。
芥川龍之介にはそういった傾向の作品が多いような気がする。
初め読んだときは、華やかな鹿鳴館のパーティーでの、日本娘とフランス将校の淡い恋物語かと思ったのだが、
講義を聴くと、なかなかどうして奥が深い。
明治開化期、政府は欧米との不平等条約を解消しようと躍起になるあまり、
日本の伝統を捨て、やみくもに西欧文化を導入していた。
鹿鳴館がその象徴である。
西欧式の社交場を作り、各国の文化人を招いて夜会など催し、欧米と対等に渡り合おうともくろむのだが、
しょせん付け焼刃、猿真似に過ぎなかったという、当時の世相を皮肉った作品だったのである。
日本の、欧米文化に対する漠然としたコンプレックスは、この辺りから続いているものだろうか?と思った。