皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

矢場 荒神様

2019-01-18 22:20:20 | 神社と歴史 忍領行田

忍城鎮守である本丸諏訪神社には多くの合祀社がある。明治に入って政府の合祀政策が進み、久伊豆社、二の丸稲荷天神社など小祠も含めて数多くの神社が合祀されたという。明治六年頃のことのようだ。その中に荒神社がある。合祀されたのちも地元矢場地区にて、祠として大事に祀られている。実際に皿尾口御門跡から満留以酒店手前を北に入った奥にその姿を見ることができる。矢場の裏町と呼ばれるところだ。

 御祭神は三宝荒神。元来インドの神であって火の神、竈の神と信じられてきた。不浄を忌み人々の家の竈を住みかとすると信じられてきたか神様だ。三宝とは仏教における仏・法・僧のことで荒神の尊像は不動明王に通じる慈悲極まった憤怒の形相をしているという。羽生城主広田直繁、木戸忠朋兄弟は羽生領を納めるにあたり、羽生総鎮守小松神社に三宝荒神御正体を奉納したという。

 荒神の信仰は特に江戸期となって盛んになり、民家の台所には必ずと言ってよいほど祀られていたという。

不浄を忌む竈の神は、今日も静かに矢場の裏町に地域を見守るかのように静かに佇んでいる。

 

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お年賀に和三盆

2019-01-15 19:54:09 | 食べることは生きること

菓子文化を見つめる埼玉銘菓十万石。お正月の御年賀を買った際、新春和三盆糖の干支祝菓をつけてくれる。

 和三盆といえば希少価値のある高級砂糖の代名詞だ。主に香川県や徳島県など四国東部で伝統的に生産される砂糖の一種。黒砂糖をまろやかにした風味を持ち細やかな粒子と口どけの良さが特徴という。十万石の品書きによれば、今から二百年前に讃岐国大川郡港村の向山周慶という人が、苦心の末酒絞りの方法を応用して製造に成功した純日本産の砂糖だという。「盆の上で砂糖を三度研ぐ」という独特の製法からこの名がついたという。

 砂糖の原料となるサトウキビとテンサイトウ。日本の多くで使われているのはサトウキビを精製した上白糖。海外では精製度の高いグラニュー糖の方が多く使われている。上白に比べ結晶が大きくさらさらしていて、焦げにくいため焼き菓子に向いている。

 和三盆の原料となる四国の「竹糖」と呼ばれるサトウキビは、細黍(ほそきび)ともいい、収穫量も限られていて、精製の作業が複雑で寒冷期にしかしか作ることができないという。しかも白下糖から和三盆にする際4割ほど目減りしてしまうほどの歩留まりの悪さの上、原料の追加がきかないという。

 価値あるものほど贈答用に向いている。贈る人への思いが籠った高級和菓子が喜ばれるのだろう。

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行田兵衛尉館跡

2019-01-15 15:11:35 | 行田史跡物語

「行田」の地名は沼地を田としたことから≪田が業(な)ったので業田が転じて行田となる≫という説が有力で、中央小学校の南側を「なり田郭(くるわ)」と呼んでそこに門を立てたことから「成田門」となったという。

 「行田」という地名は千葉県船橋市にもあり、江戸時代行徳と田尻の間に新田を造り、それぞれの頭文字をとって「行田新田」と称したことから今でも船橋市行田の地名がの残っている。

藤原氏を祖先とする(諸説あり)成田氏の初代武蔵守忠基から数えて五代目助高は現在の熊谷市上之の地を本拠として従五位下を賜る。その長男六代助広は成田太郎を名乗り、四兄弟は別府次郎、奈良三郎、玉井四郎と現在の熊谷市東部にそれぞれ拠点をなしている。

 助広の三男成田助忠は五郎を名乗り、源義経に従って、一の谷合戦にて功をなし、現在の行田の地を賜ったという。(吾妻鏡)皿尾久伊豆神社縁起によれば文治四年(1188)成田五郎長景が平家追討の折、伊豆三嶋大社に戦勝祈願し、功を成したことから皿尾地に三嶋大社の御祭神「大山祇神」を勧請したと記されており、文献等に長景の記述はないが年代的にはこの助忠こそが成田五郎長景ではないかと考えられる。

 助忠の次男助任は行田兵衛尉と名乗り、行田の地に館を構えたとされている。

兵衛尉とは「兵衛府に属し、朝儀の儀仗をする役目」の意味で督(かみ)、佐(すけ)、尉(じょう)、志(さかん)といった役職のうちの小隊長格を表している。『吾妻鏡』には承久三年(1221)宇治川の合戦で行田兵衛尉が負傷したと記されている。尚助忠の長男道忠(行田兵衛尉の兄)は一の谷合戦で戦死している。

内行田近辺を行田氏館の内として地名が残っている。商工会館南の路地を行田氏の氏神久伊豆神社参道であるとして、久伊豆神社を長野の地に移したのは文明年中の十四代成田顕泰であったという。

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加須不動尊総願時と黒門

2019-01-12 15:47:25 | 寺院と歴史

 加須市不動岡の総願時にはかつての忍城の城門が現存している。加須市の文化財に指定された黒門は忍城の北谷門であったという。

 忍城は関東の名城として築城以来二百八十年の歴史を誇ったが、明治六年にすべて取り壊された。明治二十一年忍橋から東照宮境内南を通過して持田へ抜ける行田熊谷道が開通した。この道路工事の土木請負人であった不動岡の田村重兵衛の払い下げられた北谷門を、重兵衛は日頃から信仰する不動岡不動尊に寄進したという。黒門は総欅造りで門扉は一枚の玉木理であるという。

門扉上部の欄間の構造が松平候の菩提寺である桃林寺本堂の欄間と同時代のものと考えられている。持田の桃林寺は天保十三年(1833)の建立という。この黒門は忍城の城門として現存する唯一のもので、不動岡不動尊に移築されたのは明治二十二年元旦のことであるという。

現在門前には「くろもん」とう理容店が店を構えている。

 

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第18回講座は忍の行田の「昔ばなし」

2019-01-10 20:44:49 | 生涯学習

行田市民大学9期生2学年第18回講座は忍の行田の「昔ばなし」語り部の会の皆様による出前講演でした。

 公演前に来季の市民大学受講生の募集要項ポスターが配られました。早いもので私たち9期生の講義も残すところあとわずかとなり、新年度からは11期生の募集となります。9期生募集のポスターを行田グリーンアリーナで目にして、思い切って入学してから2年近く立ち、いよいよ残された時間も少なくなりました。卒業後は市民大学同窓会にて引き続き郷土について学んでいきたいと思っています。

来期の募集ポスター中央の写真は私の所属する9期生歴史文化Aグループのメンバーのもので、一番目立つところに私も載せていただいています。市民大学基本理念の第三項にある、「学んだことを日々の暮らしや地域社会に生かすことは素晴らしいことです」という言葉を忘れず、これからも活動に携わっていけたらと思います。尚市民大学はNPO法人行田市民大学活動センターとして行政からも一定の距離を保つ形で、市民中心の団体として活動しています。私はまだ現役の会社員ですので、時間的制約も多いですが40代でこうした機会に出会えたことを大切にし、地域社会の一員として活動していきたいと思います。

 今日の公演である忍の行田の昔ばなし語り部の会は、この市民大学1期生の皆さんが中心となって立ち上げたものだそうです。市民大学の卒業生が行田市の昔話を掘り起こし、語り部として広げていくと活動を7年前から続けているそうです。行田郷土研究会様のHPに61話の昔話が公開されており、各地で公演されています。昨年9月に7周年記念発表会が産業文化会館にて盛大に開かれました。

今日の公演では6話の演目が披露されました。

忍の行田の昔ばなしには、私の住む皿尾村にまつわる話が3話収録されています。今日の演目にあった「沖の天神」、「皿尾門の狐」、「蚊喰塚」の三話です。自分の住む地域に昔話があり、語り部のかたがいるというのは地域にとって貴重なことだと思います。昔話の内容の多くは郷土史家大沢俊吉先生の「行田の伝説と史話」によるもので、創作も含めて72話もあるそうです。

今日最後の演目は予定と差し代わり、「常慶院 都留姫」でした。語り部は、平井ユリ枝様。持田駅のすぐ脇にある常慶院は成田顕泰の一の姫、都留姫の法名からとったもので、都留姫の美しさと、姫に心を寄せた若侍の悲しい恋の物語を創作も含めて見事に語り次いでいらっしゃいました。

公演終了後質疑応答の際、感想も含めて私もお話させていただきました。昨年秋に語り部の会に携わる市議会議員の方が自宅を訪ねてきてくださり、その際こうした昔話にイラストや挿絵をつけられないかというお話をされていました。また私自身も語り部の会に協力させていただきたい旨を申し上げ、さらには昔話の1話に「皿尾城合戦」もくわえていただきたいとお願いしました。皿尾城合戦は成田記等に記述があり、成田忍城と羽生城広田、木戸兄弟の戦いを記した戦国物語と言えますので、その語り部を私にさせていただきたいとお願いしました。

市民大学終盤となりますが、郷土史研究と次への希望が膨らむこととなりました。

 

 

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