酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『風が吹くとき』(1986・英)

2009年07月30日 10時47分14秒 | TV鑑賞作品
「スノーマン」でお馴染みのレイモンド・ブリッグズ
1982年出版の彼のグラフィックノベルのアニメ化作品です。

海から帰ったその日、土曜日から日曜日にかけての深夜
眠い目をこすりながらNHKハイヴィジョンの放送でみました。

イギリスの片田舎
つましく牧歌的な年金暮らしを送る老夫婦のジムとヒルダ
癒し系の独特な風貌で描かれた2人が直面する核戦争の恐怖。

国を信じて疑わず
乗り越えた先の大戦をむしろ懐かしむかのような仲睦まじき夫婦。

非常時にもかかわらず鷹揚にかまえるヒルダと
政府発行の核対応マニュアルを一字一句忠実に実践するジムの姿に
防空壕に身を寄せながら大本営発表を疑わなかったかつてのわが国庶民の姿が重なります。

カットバックで挿入される若き日の2人のささやかだが平和な人生の軌跡
描かれるコンテ画のアニメーションが素敵です。

静かな告発だからこそじわりと胸にせまります。

☆☆☆

『ザ・ダイバー』(2000・米)

2009年07月29日 16時03分10秒 | TV鑑賞作品
大好きな映画『恋愛小説家』(1997)に画商のフランク役で登場していた
キューバ・グッディング・ジュニア。
彼の主演映画だと知り
やはりハリー・ポッターをみた先週の木曜日
家族旅行の前夜ではありましたがBS2の放送で思わずみてしまいました。

人種差別が公然のものであった半世紀前の米国海軍
アフリカ系アメリカ人にしてはじめて“マスターダイバー”まで登り詰めた男の静かな闘志を描きます。

映画に登場する空気を送り込む式の時代がかった潜水服にまず驚きです。
ダイビングは小生が20代前半からはじめた数少ないアウトドア系の趣味ではありますが
そういえば潜水具が一般に今のような形状になったのは1970年代にはいってから。
大昔勉強したのを思いおこしました。

人種差別の壁を乗り越えて志を完遂するという作品のテーマは
彼らがアフリカ系の大統領を実現させたいまとなっては
見所というよりもむしろ少々見飽きた(失礼!)印象です。

アル中のエキセントリックな教官役にロバート・デ・ニーロという配役も
あまりに型にはまり過ぎていていかがなものでしょうか?

しかしながら、あまたの困難にもめげずいつも涼しい顔をみせる主人公の姿に
グッディングJr.の持ち味がいかされていて好感がもてます。

☆☆☆

『ハリーポッターと謎のプリンス』(2009・米)

2009年07月27日 13時32分05秒 | 劇場鑑賞作品
夏休みだというのに8月にバレエコンクールを控えた娘の唯一の連休ということで
この金、土曜日、家族5人揃って静岡の海に一泊旅行してきました。
心配していた雨もあがり雲の合間から時折お日様が顔を出すちょうどいい天候に恵まれ
楽しんでまいりました。

さて、海に出かける前日にみたのが今回で第6作となる“ハリーポッター”。

第一作の公開から早くも8年
そのうち何作かは子供らといっしょに劇場に足を運びました。
娘にせがまれハーマイオニーの杖のレプリカを買わされたこともありましたっけ・・・。
そんな彼らはもうこのシリーズにはほとんど興味がないようです。

ハリー役のダニエル・ラドクリフ君も来年は二十歳!
冒頭ランブルドア校長にじゃまされることになるハリーの淡いランデブーや
魔法学校の授業であつかう“ほれ薬”がもとでおきる騒動など
主役たちの恋愛感情を中心に描いた作劇は彼らの“成長”への苦心がみられます。

来るべきヴォルデモートとの最終決戦?に備えたつなぎといった意味合いが濃い本作
ファンにとってはこのあたりは十分承知のことなのでしょう。

☆☆☆

『U-571』(2000・米)

2009年07月23日 17時03分45秒 | TV鑑賞作品
昨夜のBS2の放送でみました。

第二次大戦中の1942年
ドイツ軍の潜水艇Uボートからエグニマ暗号機を奪取せんとする男たちの苦闘を描きます。

北大西洋で英軍駆逐艦の攻撃にあった独軍の名潜水艦Uボート“U-571”
この満身創痍のUボートにいかにして乗り込み敵軍に挑むことになるか。
このあたりのプロットがじつに秀逸です。

エンディングのクレジット
製作者としてディノ・デ・ラウレンティスの名前が・・・。

『にがい米』(1949)からスタートして
フェリーニの『道』(1954)『カリビアの夜』(1957)といった名作数多。

リメイク版の『キングコング』(1976)では
同年公開の『カサンドラ・クロス』のカルロ・ポンティと名声を2分するかたちで
当時の映画雑誌などがしきりにとりあげたせいもあるのでしょう。
少年時代の小生が俳優、監督ではなく製作者の名前を最初に記憶した人物です。

細君がそれぞれシルバーノ・マンガーノとソフィア・ローレンという
イタリアを代表する大女優というのも話題でした。
ちなみに『道』はカルロ・ポンティとの共同プロデュース。

話題作、娯楽作の大物プロデューサーとして君臨し
150本以上の作品を世に送り出して
御歳90才。

現役だとしたら凄すぎます・・・。

☆☆☆

『Little DJ 小さな恋の物語』(2007・日)

2009年07月22日 16時10分41秒 | TV鑑賞作品
じつに46年ぶりとなる“皆既日食”
あつい雲に覆われた空をみあげながら
午前のNHKのテレビ放送で見ました。

天候がよい硫黄島と太平洋海上からの中継
特に硫黄島からの生放送の映像がすばらしかったです。
突然日常から切り離されたような不思議な感情が沸き起こり
心を激しく揺さぶられました。

現場にいた解説委員の表現は「何かおとぎ話にでてきそうな光景」
そのあと言葉を失っていましたが
小生不覚にも涙してしまったほど感激しました。
テレビの映像にもかかわらずこうですから
これをじかに体験した人たちの感動はいかばかりか・・・。

さて、いつものように表題の映画のお話といたしましょう。
昨夜、BSジャパンの放送でみました。

1977年の函館
ひょんなことから入院した病院のお昼のディスクジョッキー(DJ)をすることになる
中学1年生の少年、高野太郎(神木 隆之介)
同じころ事故で入院してきた中学2年生の海乃たまき(福田 麻由子)とやがて同室になります。
不治の病に冒された太郎のけなげではかない“小さな恋の物語”。

太郎がDJの勉強のため毎夜聴くのがラジオ。

決して大げさな言い方ではなくあのころのラジオは特別な存在でした。
毎夜2時、3時まで勉強しながら
というよりラジオを聴くためについでにという表現があたっていますが
DJとリスナーたちのやり取りをききながら頷いたり驚いたり笑ったり
また自分のしらない世界を仮想体験し想像をめぐらしたりもしました。

この映画に当時のDJ役で出演している小林克也氏の洋楽番組から
オールナイトニッポンなどの深夜放送
大好きだった淀川長治先生の“ラジオ名画劇場”まで
実に多種多様なジャンルに耳を傾けた記憶がよみがえってきます。

太郎がたまきと病院を抜け出して見に行く映画が
『ラストコンサート』(1976・伊)
同時代でこの映画をみていなければできない懐かしい選択です。

以前(昨年10月5日)当ブログでもとりあげた
Queenクイーンの“華麗なるレース”のレコードが
重要な小道具として登場するのもうれしくなります。

原作小説の映画化で涙をさそうよくあるおはなしながら
主人公と同じ時代に思春期を送った小生としては
自らを振り返ることができるうれしい映画でもありました。

☆☆☆

『プライド 栄光への絆』(2004・米)

2009年07月21日 09時42分26秒 | TV鑑賞作品
先週のBS2の放送を録画したままになっていたのを思い出し
この週末みました。

1988年のアメリカ、テキサス州のオデッサという町が舞台。
地元高校のアメリカンフットボールチーム“パンサーズ”
勝つことを定められ、あつすぎる地元の期待を背に
テキサス州トップをめざすチーム部員とコーチの苦悩のシーズンを追った
実話に基づく映画です。

毎たびの試合当日は町中で商売を休んでしまうほど
高校チームといっても周囲の過熱ぶりたるやプロボール以上。

そのうえコーチ(ビリー・ボブ・ソーントン)に対する地元お偉方やOBたちの進言は
応援しているのか脅しているのかわからないほどですし
試合中ボールをファンブルしたある選手への優勝経験をもつ実の父からの叱責など
あまりに執拗でみているほうも胃がきりきりして一寸気分が悪くなるほどです。

もうこうなると“プライド”とよべるようなではなく
地域の単なる“面子”や“エゴ”以外のなにものでもありません。
怪我で選手生命を絶たれ戦線離脱するスター選手の姿も憐れです。

大好きなアメフトゆえに重くてつらい描写ですが
米国民の生活の一部であるこのスポーツのもつ現実の一面であるのは確かなこと。
地方予選真っ盛りのわが国の高校野球はどうなのだろう?
ふと頭をよぎりました。

本体楽しむためのスポーツでありながら
優勝にかける地域の人々の期待とプレッシャーに
選手やコーチにかかる重圧と不安に焦点をあて描いた異色作。

独特なドキュメンタリーを思わせる演出方法には
少々あざとい印象ものこりますが
いい意味で期待はずれのラストに救われ
最後はちょっと爽やかな気分にひたることができました。

☆☆☆

『雪に願うこと』(2005・日)

2009年07月17日 14時01分05秒 | TV鑑賞作品
この映画の監督、根岸吉太郎といえば
ATG作品『遠雷』(1981)のイメージがとても大きく
決してほかにみるべき作品がないわけではないのに
なぜか期待するような活躍の場に恵まれていないという印象が残る監督の一人です。

その根岸監督がメガホンをとり
東京国際映画祭で高い評価を得た作品というのですから
否が応でも期待が膨らみます。
深夜にもめげず昨夜のNHKハイヴィジョンの放送でみました。

鳴海章の小説『輓馬』(ばんば)が原作。
テレビの競馬中継などで見慣れたサラブレッドとは違い
1トンを超えるかというがっしりとした肉付きの馬たちが騎士の乗った重いそりを曳き
息を切らし力をはたしながら坂をのぼる姿がちょっとかわいそうにも感じる
“ばんえい競馬”の世界が舞台です。

母と兄(佐藤浩市)を見捨てるように故郷北海道を出てから
13年もの長きにわたり音信さえなかった弟、矢崎学(伊勢谷友介)。
学は東京で起こした事業に失敗し
何もかも失って帯広の兄、威夫が営む厩舎にやってくるのです。

威夫から厩務員見習いとして働くことを許される学ですがなかなか煮え切らない。
やがてなかなか勝てない一頭の駄馬に自分の境遇をかさねることで
徐々に心の落ち着きをとりもどしていくのです。

寝泊りしながらばんえいを競う馬たちに寄り添うように世話をし、調教する厩舎の生活
淡々とありのままを描こうとする監督の姿勢に共感します。

雪に覆われた極寒の大地
湯気を立ち上らせながら踏ん張る馬たちの情景が実に見事。
馬たちに最優秀賞を贈りたいくらいです。

馬に負けてはいられない演技人
友情出演ということでもないのでしょうが
実に豪華な面々が敬愛する根岸監督のもとに集まったという感じです。
威夫におもいをよせる女性に小泉今日子。
女性騎士の吹石一恵も花をそえます。
脇では街にのさばる金満家の老人に山崎努、獣医師の椎名桔平
学の東京の友人に小澤征悦。
それと一瞬顔をだす程度の香川照之、津川雅彦など
もう一本撮れそうな顔合わせです。

肝心の主人公の学の姿に訴えかけるものがさほどなく
いまひとつ心がはいっていけなかったのは少々残念ではありました。

☆☆☆

『世界最速のインディアン』(2005・ニュージーランド=米)

2009年07月16日 14時05分45秒 | TV鑑賞作品
めずらしくショー君が早く寝たので
久しぶりに妻といっしょにBS2の放送でみました。

1960年代ニュージーランドの田舎町
世界的なスピード記録に挑むという長年の夢のため
日夜愛車の旧式バイク“インディアン”の改良に余念がない
年金暮らしの老人バート・マンロー。

実話をもとに
ライダーの聖地アメリカ、ユタ州ポンヌヴィル塩平原にむかう
老ライダーの夢の軌跡を描いたロードムービーです。

ちょっとシニカルでユーモアある物言いと明け透けで正直な性格が愛され
行く先々で芽生える友情に助けられながら憧れのレース会場を目指すバート。

経済危機のせいでこのところ影の部分ばかり強調され不本意でしょうが
アメリカ人が根っからもつチャレンジ精神と楽観主義みたいなものと
この老人の情熱が共鳴するあたりから
みているわれわれも
「本当に来てよかったね。」
わがことのように心の底からうれしさがこみあげてきます。

体のトラブルにもめげず嬉々として夢にいどむ永遠の少年バート
演じるは名優アンソニー・ホプキンス。

彼の主演作品では
男の悲しい性(さが)を実に渋く見事に演じた『日の名残り』(1993)が好きですが
その対極にあるような本作の主人公を演じても負けず劣らずのうまさ。

みているその人がいつのまにか主人公に同化するというのでしょうか?
まさにこういう人を“名優”というのでしょう。

実に幸福なあっという間の2時間でした。

☆☆☆☆

『ツォツィ』(2005・英=南ア)

2009年07月15日 16時24分05秒 | TV鑑賞作品
第78回米アカデミー外国語映画賞を受賞したという本作。
昨夜、期待しながらBSジャパンの放送でみました。

南アフリカの首都、ヨハネスブルグのスラム街が舞台
ただ道を歩くことさえ命の危険が伴うほど暴力が日常化しているこのまちで
小遣い欲しさにいとも簡単に殺人を犯す少年たち。
“ツォツィ”と呼ばれる“チンピラ”のリーダー格の少年がこの映画の主人公です。

経済的急成長を遂げる世界の新興国
その影には凄まじいまでの格差や貧困が存在することは頭では理解しているつもりでも
やはりドラマとはいえ映像がもつ力には圧倒されます。

ある夜、ツォツィは仲間との諍いから一人郊外の高級住宅街に赴き住人の女性から車を略奪します。
彼がその未熟な運転で暴走事故を起こし乗り捨てようとしたその車の後部座席からは赤ちゃんの泣き声が・・・。

米国向け興業をはじめから意識していたのでしょうか?
素人っぽい俳優たちの風貌やさまざまな言語がいりまじった会話のやりとりにもかかわらず
少々背伸びした感じのスタイリッシュな演出に
最初こそ違和感を覚えましたが
これもこのギャヴィン・フッドという監督のれっきとした作風なのだと気づきます。

ツォツィから赤ちゃんに乳を与えるよう強要される女性を演じる女優もよかった。

うまくまとめてしまった印象は否めまない娯楽作ですが
今後が楽しみな新鋭監督の登場には違いありません。

☆☆☆

『博士の愛した数式』(2005・日)

2009年07月15日 14時08分23秒 | TV鑑賞作品
月曜夜のNHKのハイヴィジョン放送でみました。

じつは前回どこかの民放で放送していたのを
なぜか波長が合わず最後までみることができなかったので再挑戦しました。

監督は黒澤明の薫陶をうけた小泉堯史。

事故で記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦母子の心の交流を描いた
小山洋子の原作小説の映画化です。

長野などの自然をとらえた映像のまさに心を洗われるようなその広がりにくらべ
肝心の作劇のほうは小さくまとまりすぎて
テレビドラマをみているような印象というのが正直な感想です。

期待がおおきい監督さんということもあると思いますが・・・。

☆☆

『若親分喧嘩状』(1966・日)

2009年07月15日 13時48分03秒 | TV鑑賞作品
BSイレブン“市川雷蔵没後40年若親分特集”のシリーズ第3作
こ日曜の午後放送していました。

今回は大正初期、年の瀬の横浜が舞台です。
前作で日本を離れ上海に潜伏していたという設定の若親分、南条武(市川雷蔵)。
冒頭、彼の地で蒙古正統の王女(江波杏子)を助け帰国した武は
木島という国士に王女を預けるとともに客分として横浜の高遠組に迎えられます。
この横浜には利権を狙う外国人に手を貸す見返りにアヘン密売で儲ける
猪原という新興やくざがのさばっていた。

最後はお決まりの決闘とあいなるわけですが
陸軍一派に利用されようとする姫君を助けるくだりもあって
今回は憂国の士という面が強調されているような気がします。

武にほのかなおもいをよせる女優も今回は
芸妓に扮する小山明子と救世軍に奉仕する純な娘役の高田美和
硬軟とりまぜています。

単身陸軍に乗り込んでいくというお馴染みのパターンにもかかわらず
海軍士官の軍服に身をつつんだ雷蔵にはやはりほれぼれいたします・・・。

☆☆☆

『チャンス』(1979・米)

2009年07月13日 15時18分11秒 | TV鑑賞作品
原題“Being There”
BS2の深夜放送を録画していたのを昨夜みました。

イェジー・コジンスキーの原作「庭師 ただそこにいるだけの人」
以前の邦題「預言者」を彼自身が脚色し
大好きな『さらば冬のかもめ』(1973)のハル・アシュビーが監督した作品。

ピーター・セラーズ扮する一介の庭師“チャンス”
善意の解釈の連鎖から字も読めないただテレビだけが好きな男が
偉大なる指導者“チャンシー・ガーディナー”として祀り上げられるおはなし。
そこには教訓めいたものはなく
あるのはただひたすら“今”に対する痛烈な皮肉と笑いの世界。

“フリーメイソン”をおもわせる数人がひそひそ話で簡単に大統領候補を決めてしまうなど
しまいにはアメリカという国家まで皮肉ります。

しかし、やがてみているわれわれのほうもこの“ただそこにいるだけの男”の存在に
不思議な安堵感を覚えていくから不思議です。

映画の冒頭、チャンスが朝起きてテレビから流れるのがシューベルトの“未完成”交響曲
主人の死により生まれてはじめて彼が住み慣れた屋敷を出て歩き出すテーマ曲が
あのR・シュトラウスの“ツァラトゥストラはかく語りき”とは
音楽だけで彼の“存在”を暗示してしまう真にうまい演出です。

シャーリー・マックレーン、メルヴィン・ダグラスの助演陣も実に味がある。

ブラックな笑いに満ちた大人のための御伽噺
ピーター・セラーズという不世出の役者を得て
チャーミングな花をさかせました。

☆☆☆☆

『ノウイング』(2009・米)

2009年07月13日 13時13分49秒 | 劇場鑑賞作品
封切り日の先週金曜日みてきました。

アレックス・プロヤス監督の描く終末論。

数年前のホテル火災で愛する妻を失ったMITの宇宙物理学教授ジョン(ニコラス・ケイジ)は
運命論的なものにすっかり懐疑的になり一人息子のケイレブと静かな生活を送っていた。
そんな彼に次々と符合するように降りかかる不思議な出来事の数々。
それは意外にも50年前の予言に基づくものだった。

リアルを極めた衝撃的な映像とは対照的に
静かに響くベートーベンの交響曲が心に残ります。

映画館から帰って読んだ日経新聞夕刊の映画欄に
家族愛で作品テーマが矮小化されたというような趣旨のコメントがありましたが
小生の感想はまったくの正反対。

“家族の絆”をとおして描くことによって
よくあるオカルティックなSFに堕することから救われています。

ラスト近く、つきつけられた事実に動転しやがて安堵するジョンの複雑な心境
誰にもいつかは訪れるであろうその瞬間をおもい
父親として素直に共感し目頭が熱くなりました…。

☆☆☆

『ウィッチマウンテン/地図から消された山』(2009・米)

2009年07月09日 14時49分12秒 | 劇場鑑賞作品
原題は“Race to Witch Mountain”

1975年のディズニーのSFファンタジー
『星の国から来た仲間』“Escape to Witch Mountain”をもとに
同じディズニーが現代的なモチーフとスピード感あふれる迫力の映像を加えたリメイク作
昨日みてきました。

やくざ稼業から足を洗いタクシー運転手として生計をたてるジャック(ドウェイン・ジョンソン)の夢は
映画『ブリット』に出てくる1968 年型フォード・マスタング・ファストバック 390 GT
通称“ブリット・マスタング”を乗り回すこと。
ある日、自らセスとサラと名乗るまだ幼さが残る面立ちの兄妹が
彼のタクシーに乗り込んできてすぐ車を出すよう懇願します。

かつてのボスからみこまれたドライブテクニックで追っ手から彼らを守るジャック
やがてセスとサラの特別な能力を目にすることになるのです。

以前目をとおした本
『時計じかけのハリウッド映画』(11月28日記事)
のとおり解釈すれば
まさに起承転結のタイムテーブルが一分のすきもなく計算され
ハリウッドの映画作法に忠実な教科書的な作品でもあります。

30数年前の作品のリメイクというより
むしろこの作品から影響をうけたであろう後の『未知との遭遇』や『E.T.』をメインに
『ターミネーター』『宇宙戦争』など数多のSF映画のストーリーを入力し
このハリウッド流タイムテーブルにしたがって自動出力したような印象の脚本です。

この映画に登場するラスベガスのホテルの“オタク”イベントに象徴される
これは紛れもなく“パロディー”映画?

いえいえ、過去の名作へのオマージュだと好意的に解釈しましょう。

だってジャックの夢は“ブリット・マスタング”…。

☆☆☆

『腰抜け二挺拳銃』(1948・米)

2009年07月09日 09時45分04秒 | 名作・映画作家探訪
アメリカの国民的喜劇人ボブ・ホープ主演の
当時の日本でも大ヒットした懐かしい西部劇コメディーの登場です。
BS2の月曜お昼の放送を録画してみました。

世代が違う小生が懐かしいというのは
子供のころ、高島忠夫氏がナビゲーターをつとめていた
フジTV「ゴールデン洋画劇場」で楽しんだ思い出があるからです。

そればかりか放送をそのままカセットテープに全編“録音”し
繰り返し聞いていたくらい熱心でした。

理由は名声優、広川太一郎氏の吹き替えが絶妙でおおいに堪能させてくれたからです。

惜しくも昨年お亡くなりになった広川氏ですが
この字幕版をみると氏のアドリブ的な演出がいかに大きかったかが理解できます。
いまでも吹き替えの台詞はよく覚えていますので
時おり反芻し思い出しては懐かしく笑い転げてみました。

“ペインレス”ピーター・ポッター(ボブ・ホープ)という
これまた人を食ったような名前のヘボ歯科医が主人公。
実刑を免れる引き換えにインディアンに武器を密売する陰謀団を突き止める命をうけた
カラミティー・ジェーン(ジェーン・ラッセル)は
このとぼけた男ピーターを隠れ蓑にして陰謀団を突き止めようとします。

まあ、そんなおはなしはともかく
ボブ・ホープが“バッテンボー~♪”と歌う名曲?「ボタンとリボン」に懐かしく耳を傾け
不世出の声優に思いをはせた1時間30分でした。

☆☆☆