韓国を代表する気鋭、ポン・ジュノ監督の昨年晩秋の公開作。
先週末遅ればせながらみてきました。
ある街で一人息子の青年トジュン(ウォンビン)と肩寄せあいながら暮らす母(キム・ヘジャ)。
貧しさにくじけそうになりながらも女手ひとつ漢方薬の商いと無免許の鍼の収入でなんとかトジュンを育て上げました。
しかし、母から受け継いだ美しい瞳をもつ精神が幼いままのトジュンは
ある日近所でおきた女子高生殺害事件の犯人として逮捕されてしまいます。
安易に犯人ときめつけ疑わない警察や少しも争う姿勢をみせない弁護士に業を煮やした母は
自ら息子の無実を証明しようと行動をおこします。
謎解きサスペンスでひきつけ社会の暗部も描き出しながら
しかしカメラがうつしだすのは昆虫が地を這うがごとくずるくしぶとく生き延びようとする人間の営み。
一人息子を溺愛する母を突き動かす狂気ともいえる情動
理性かなぐりすてる野生の母性がとる必死な行動は壮絶ながらなぜか滑稽でもあり
本邦の巨匠、今村昌平がつくりだした“重喜劇”の世界にまぎれもなくかさなります。
映画の冒頭とラスト、衝動的に披露される母の“踊り”はそれを象徴しているかのようで何とも感慨深いです。
トジュンの要領のいいチンピラの友人(チン・グ)はじめ重喜劇の住人にふさわしい人物も数多く登場する。
演技陣もよかった。
“韓国の母”といわれるらしい国民的女優キム・ヘジャの異色な母への起用は
ベテランの持ち味をいかした存在感と表現力がすばらしく大正解。
久々の映画出演で複雑な役どころを見事に演じきったウォンビンも当然褒めなくてはいけません。
人間への冷徹な観察眼としつこく粘りある情熱からうまれるに違いない才気ある演出。
“今平”亡き後、ポン・ジュノこそこの巨匠の後継最有力候補だと
なかば嫉妬にかられながらそう実感せざるをえない傑作です。
☆☆☆☆☆
先週末遅ればせながらみてきました。
ある街で一人息子の青年トジュン(ウォンビン)と肩寄せあいながら暮らす母(キム・ヘジャ)。
貧しさにくじけそうになりながらも女手ひとつ漢方薬の商いと無免許の鍼の収入でなんとかトジュンを育て上げました。
しかし、母から受け継いだ美しい瞳をもつ精神が幼いままのトジュンは
ある日近所でおきた女子高生殺害事件の犯人として逮捕されてしまいます。
安易に犯人ときめつけ疑わない警察や少しも争う姿勢をみせない弁護士に業を煮やした母は
自ら息子の無実を証明しようと行動をおこします。
謎解きサスペンスでひきつけ社会の暗部も描き出しながら
しかしカメラがうつしだすのは昆虫が地を這うがごとくずるくしぶとく生き延びようとする人間の営み。
一人息子を溺愛する母を突き動かす狂気ともいえる情動
理性かなぐりすてる野生の母性がとる必死な行動は壮絶ながらなぜか滑稽でもあり
本邦の巨匠、今村昌平がつくりだした“重喜劇”の世界にまぎれもなくかさなります。
映画の冒頭とラスト、衝動的に披露される母の“踊り”はそれを象徴しているかのようで何とも感慨深いです。
トジュンの要領のいいチンピラの友人(チン・グ)はじめ重喜劇の住人にふさわしい人物も数多く登場する。
演技陣もよかった。
“韓国の母”といわれるらしい国民的女優キム・ヘジャの異色な母への起用は
ベテランの持ち味をいかした存在感と表現力がすばらしく大正解。
久々の映画出演で複雑な役どころを見事に演じきったウォンビンも当然褒めなくてはいけません。
人間への冷徹な観察眼としつこく粘りある情熱からうまれるに違いない才気ある演出。
“今平”亡き後、ポン・ジュノこそこの巨匠の後継最有力候補だと
なかば嫉妬にかられながらそう実感せざるをえない傑作です。
☆☆☆☆☆