酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『スケアクロウ』(1973・米)

2013年04月21日 07時13分12秒 | TV鑑賞作品

この前書いたのが震災後ですから、なんと2年過ぎての更新です。

 BSジャパンで放送していたのを録画してみました。

 中学時代にやはりテレビで淀川先生の「日曜洋画劇場」でみた懐かしい記憶が蘇ってきました。

 洗車屋をやるんだと意気込む刑務所を出所したばかりの感情の起伏激しい大男のマックス(ジーン・ハックマン)と

幼い子供にデトロイトまで会いに行くと言う一見優しく気のいい小男のライオン(アル・パチーノ)

世間から見捨てられたような二人が広い道のこちらとあちらで出会い

旅を共にするなかで人と出会いぶつかりながらうまれる自由と危うさ、希望と絶望

そして不思議な友情を描いた名作です。

 所謂アメリカの“ニューシネマ”といわれた文脈の作品なのでしょうが

もはや演技といえないような生々しい俳優達の迫力には今見てもやはり圧倒されました。

 


山本薩夫生誕100年

2010年08月06日 17時57分08秒 | TV鑑賞作品

 

今週月曜日からBS2で“生誕100年山本薩夫特集”と題した放送があり4夜連続で鑑賞しました。

 

『金環蝕』(1975

すごい歯並びの特異な役づくりで伝説の金融ブローカーを演じたガリガリの体躯の宇野重吉が印象的。よくもわるくもこの時代の映画のもつ独特な雰囲気が感じられる作品でした。

☆☆☆★

 

『不毛地帯』(1976

☆☆★

 

『白い巨塔』(1966

何度となくみている作品ですが、橋本忍の脚色の素晴しさか、台詞や場面展開のテンポのよさにとにかく舌を巻きます。財前五郎の愛人役で迫力の小川真由美はじめアクの強い役者たちの演技合戦もじつに見事です。

☆☆☆☆


『華麗なる一族』(
1974

終盤、とってつけたようにこの監督自身のものである労働者の闘いのシーンが挿入される。財閥一族の愛憎劇と政官業の黒い駆け引きの大盛りの3時間半。

☆☆☆

 

今年同じ生誕100年ではやはり黒澤明監督のほうが目立ちますが

未見が多い山本薩夫作品、時間をおいて何作か放送されるとのこと楽しみです。


『カポーティ』(2005・米)

2010年03月17日 15時54分52秒 | TV鑑賞作品
フィリップ・シーモア・ホフマンがその年のアカデミー主演男優賞を獲得した話題作で
米国の小説家トルーマン・カポーティを描いた伝記映画。
昨日の深夜、BSハイヴィジョンで日付をまたいで放送していたのをみました。

1959年のニューヨーク
映画にもなった「ティファニーで朝食を」などですでに人気作家の地位にのぼりつめていたトルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)はカンサスのある田舎でおきた一家4人の惨殺事件を報じた新聞記事に目をとめます。
彼の代表作でありノンフクション・ノベルというあらたなジャンルを切り開いた名作「冷血」を書き上げるまでの作家の執念と葛藤をえがきます。

(以下、伝記映画ということでネタばれご勘弁ください。)

事件の取材をすすめるうち自分と似た境遇に育った犯人の一人に対し
「同じ家で生まれたにもかかわらず彼は裏口から自分は表玄関から出たにすぎない。」と
同情にも似た複雑な感情をいだくようになるカポーティは
取材のため死刑執行の引き伸ばしにさえ尽力します。

事件にのめりこむカポーティさながら徹底した研究によりエキセントリックな作家そのままの存在になりきろうとしたフィリップ・シーモア・ホフマン。
過剰なまでの意気込みがつたわるその演技はみていて息がつまるほど。

主演男優の演技ばかりに視線が向かいがちですが犯人役のクリフトン・コリンズ・Jrや州捜査官のクリス・クーパーなど助演陣もたしか。
なかでもカポーティの取材に同行し助手をつとめたネル・ハーパー・リーを演じたキャサリン・キーナーの抑えた演技がしみじみとして実に見事。

ちなみにこのリーという女性は映画にもなった有名な「アラバマ物語」の原作者。
子供時代のカポーティはリーの隣人で幼なじみであるばかりかこの「アラバマ物語」に登場する少年ディルのモデルでもあるという小説のようなおはなし。
この映画では『アラバマ物語』(1962)映画化のくだりも描かれますが、試写会のパーティーで酒によったカポーティが原作者であるリーから映画の感想を求められ、彼女が立ち去った後「秀作というほどのものではない。」とつぶやくのが面白いです。
なお、同作品の一般的な評価は高く、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)100年間のベスト100の第25位(2008年更新版)となっております。

閑話休題。

やがて刑務所長に手を回し独房のなかで犯人との一対一のインタヴューも自由に許されるカポーティ。
不可解だった犯行の動機など犯人への十分な取材を終えてしまうと一転
今度は作品のために犯人の刑が早く執行されて欲しいとひそかに願うようになります。
映画はこうした作家のエゴを静かに残酷にあぶりだしていくのです。
本のタイトルである“冷血”とは惨劇を引き起こした当事者のものではなく友情の仮面をかぶりながら心の中で死を願う作家自身のもの。
作家自ら懺悔の気持ちからつけたのではないかと思えてきます。

「冷血」以後はひとつとして作品を完成させることがなかった作家はアルコールや薬物に依存し1984年、60年足らずの生涯をおえます。

紛れもない天才だったのでしょうが
自分自身をそこまで追い詰めてしまったこの作家の性(さが)に息をのみます。

これが劇映画初監督となるベネット・ミラーの控えめで静謐な演出に好感がもてる作品でした。

☆☆☆★

『きみの友だち』(2008・日)

2010年03月10日 16時30分34秒 | TV鑑賞作品
重松清の原作小説を廣木隆一監督が山梨県各地をロケして撮った作品。
昨夜、BSジャパンの放送でみました。

幼い頃の交通事故の後遺症を足にかかえながらフリースクールで子供たちの世話をする20歳の恵美(石橋杏奈)は空に浮かぶ雲の写真を撮り続けています。
ある日スクールの取材にきたジャーナリストの中原(福士誠治)に雲を撮る理由をたずねられた恵美は彼にたった一人のかけがいのない友だち、由香(北浦愛)のことを語りはじめます。

映画は恵美が由香と出会う小学校時代にさかのぼり、やがて中学校時代を描いていきます。

この監督は人物の表情がわからないほどひいたフィクスの画を多用しながら
主人公たちをとりまく何人かの生徒たちにもカメラを向け静かに淡々と描いていきます。
独特な空気感とでもいうのでしょうか、とにかく空間を意識させる演出です。

若い俳優たちは演技することを極力はいするよう指導されているようにもみえます。
ただその中にあって友情に悩むハナという生徒を演じた吉高由里子にひかるものを感じました。

放送枠の関係で15分以上はカットしているでしょうか。
ときどき登場人物の関係や台詞の意味がわからなくなることがあり残念でした。
タダでみているから文句は言えませんが、他局を見習い是非改善して欲しいものです・・・。

☆☆☆

『インサイド・マン』(2006・米)

2010年03月09日 16時13分18秒 | TV鑑賞作品
スパイク・リー監督作品、先週金曜日、BSハイヴィジョンの放送でみました。

白昼のNY、つなぎの作業服にマスクとめがね、塗装工に扮した4人組が“マンハッタン信託銀行”を襲い行員と顧客を人質に立てこもります。
そして人質全員を下着姿にしたうえで自分たちと同じ服を渡し着させます。

冒頭とある場所でカメラに向かって主人公の強盗のリーダー(クライヴ・オーウェン)が独白するモノトーンの画面からはじまる本作。
これと同じ色調で解放された人質たちの取調べの様子を時折差し込ませる話法はいかにもこの監督のもの。

それと俳優の顔合わせが豪華。
先述のクライヴ・オーウェンに加え
横領の疑惑を払拭せんと躍起になって現場に乗り込むパナマ帽をかぶったしゃれ者のNY市警交渉人にデンゼル・ワシントン。
事件の知らせを受け強盗以外の理由で青くなるこの銀行の創業者である会長に昨日のアカデミー賞ノミネート助演男優の一人でもあったベテラン、クリストファー・プラマー。
この銀行家に依頼されて登場するのがNY市長さえ敵に回せない存在の超敏腕弁護士のジョディ・フォスターといった面々。

先につくられたのは本作ですし、作風もスケールも全く違うのですが
去年みた銀行強盗映画の快作『バンク・ジョブ』(2008)を思い出してしまったからか
やや使い古された印象の事件の背景も手伝い快哉を叫ぶほど主人公たちに感情移入できなかったというのが正直なところです。

☆☆☆

『天国の駅 HEAVEN STATION』(1984・日)

2010年01月18日 16時45分42秒 | TV鑑賞作品
二人の夫を殺害し戦後初の執行となった女性死刑囚の事件を題材にした早坂暁の脚本を出目昌伸が監督した東映作品。
昨日の昼下がりBS朝日の放送でみました。

昭和45年、指で紅をさし小菅拘置所内の刑場にむかう47歳の主人公林場かよ(吉永小百合)。
遡る昭和30年、結城つむぎを織る32歳の美しいかよが関係をもたされた橋本という巡査(三浦友和)にそそのかされ半身麻痺の傷痍軍人の夫(中村嘉津男)を毒殺したのがはじまりであった。

最大の目玉は男たちに翻弄される汚れ役ともいえる主役への吉永小百合の起用。
イメージを脱ぎ捨てた俳優の意外性ある演技に快哉を叫ぶということはよくありますが
はじめからこの女優さんありきの企画だったのではないでしょうか。

サユリストでなくても切なくなるような彼女の痛々しいまでの体当たりの熱演にもかかわらず
人の業に逆らえず罪に手を染めてしまう主人公の純真さというアンビヴァレンスを描こうとした脚本に難があるのか
後半の津川雅彦の絡みつくような助演も虚しく主人公かよという人物が浮かび上がってこない。

しかもただ一人主人公の無垢な精神性を象徴する存在である西田敏行演じる発達障害の青年“ターボ”の描きかたもステロタイプで
なぜか当時それまでにさかんに増産された角川映画の残像をみているような印象の作品でした。

それでも人間の業をすべて覆い隠してしまうような豪雪のなかのラストの逃避行は心にのこります。

☆☆★

『わが命つきるとも』(1966・米=英)

2010年01月14日 17時09分14秒 | TV鑑賞作品
このところ米アカデミー受賞作品の放送が目に付くのは同賞の発表が近いからでしょうか。
主要部門を独占したフレッド・ジンネマン監督作品、昨夜BS2の放送でみました。

ロバート・ボルトの戯曲“A Man for All Seasons”をボルト自らが脚色した歴史もの。
16世紀初頭、イングランド国王ヘンリー8世の権力とクロムウェルの権謀に屈せず自らの信念を貫き通したトマス・モアの姿を描きます。

離婚を認めない当時のカトリック教会のもとにあって
愛人アン・ブーリンと結婚するため王妃キャサリン・オブ・アラゴンと離婚したい国王のヘンリー8世。
国王は大法官の地位にまで昇りつめ深い学識と厚い信任をそなえたトマス・モア卿に協力を求めますが彼は信仰を守りこれを固辞します。
しかたなくヘンリー8世はあらたに国王至上法をつくり自らをイングランド国教会の長とするとともにカトリック教会から離脱してアンとの結婚を成就するのです。
しかし、いつまでも沈黙を守り新たな法律と王の離婚を認めようとしないトマス・モアの存在を王はこころよく思いません。

主人公のトマス・モアを演じアカデミー主演男優賞を受賞したポール・スコフィールドはじめ英国出身の俳優陣の演技合戦が見もの。
子供のようにやんちゃでわがままな国王ヘンリー8世をロバート・ショウが好演。
トマス・モアの娘マーガレット役のスザンナ・ヨーク
物語の発端ともなった愛人アン・ブーリンのヴァネッサ・レッドグレイブ
出世のため主人公を売る裏切者のリッチ役で映画初出演のジョン・ハートなど
いまをときめくベテラン俳優たちの若き日の姿がみられるのもうれしい。
それとほんの数シーンながら枢機卿ウルジー役のオーソン・ウェルズがふてぶてしいほどの存在感で圧倒します。
あと、レオ・マッカーンというクロムウェル役の俳優・・・。
いちいちあげたらきりがありません。

理路整然と権謀者を論破するトマス・モアの高潔な姿にはそれほど感情移入できなくても
終盤の老夫婦の別れのやりとりは普遍、思わず目頭が熱くなりました。

当時の素朴な雰囲気をかもし出すロケーション撮影が見事にいかされた作品です。

☆☆☆

『ガンジー』(1982・英=インド)

2010年01月08日 16時56分36秒 | TV鑑賞作品
米アカデミー賞の主要部門を総なめにした188分におよぶ大作伝記映画。
昨夜BSハイヴィジョンの深夜放送で再見しました。

インド独立の父、マハトマ・ガンディー。
“非暴力、不服従”を提唱し、民衆を動かし英国を動かし後のさまざまな国の指導者にも影響をあたえた歴史上の人物。
映画はガンディーがヒンドゥー原理主義者の凶弾に倒れるシーンからはじまり南アフリカでの青年時代にさかのぼって描かれます。

演じるは名優ベン・キングスレー。
内面のみならず肉体からも力強さがみなぎるガンディーです。

監督は俳優としてもお馴染みのリチャード・アッテンボロー。
ひとつの宗教ともいえる主人公の考え方についてはできるだけ客観視し人間ガンディーを描こうという姿勢が感じられる演出です。

判事役のトレヴァー・ハワードやジョン・ギールグッドなど脇をかためる英国俳優陣のいぶし銀の存在感も素晴らしい。
それに大虐殺を指揮する狂信的な将軍役でエドワード・フォックスが顔をのぞかせるのもうれしいですし
終盤ライフ誌の有名カメラマン役でキャンディス・バーゲンが登場するサービスもあります。

しかし、この映画の真の名優は名もなき群集です。
イギリス軍の銃撃に悲鳴をあげ逃げ惑う大勢の女や子供の姿、独立により対立が表面化するヒンドゥー教徒とイスラム教徒間の憎しみの表現。
うねりくる大エキストラで描かれた民衆の怒り、苦しみ、悲しみ、歓喜、愚行など権力や国家、宗教対立に踏みにじられる普通の人々のきれいごとでない姿こそ胸にせまります。

☆☆☆

『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』(2003・中国=米)

2010年01月06日 14時48分07秒 | TV鑑賞作品
BS2の中井貴一出演作特集で昨夜みました。

中国、唐王朝の時代の西域、シルクロードが舞台。
唐軍の捕虜となった突厥の女子供を含む民間人を殺せとの皇帝の命令を拒み逆賊となった隊長の李(姜文=ジャン・ウェン)がこの映画の主人公です。
中井貴一演じるのは若干13歳の若さで日本から遣わされた遣唐使の来栖という男。
唐の地で長年文武を修めいまは仕える皇帝から帰国が許される日を心待ちにしています。
そんな折、将軍の娘、文珠(趙薇=ヴィッキー・チャオ)を長安までの護衛する任にあった来栖は皇帝から帰国の条件として李の処刑を命じられるのです。

一方の李、部下と別れ一人旅するなか砂嵐に襲われ瀕死であったところを若い僧侶とともに仏典を運ぶキャラバンの男に一命を救われたことから同じこの砂嵐で隊員を失ったこの一行の護衛を引き受けることに。

やがて安(王学圻=ワン・シュエチー)という謎の男に率いられた騎馬軍団に追われるなどするうち李を追う来栖もこのキャラバンに加担していくことになるのです。

このキャラバンが運ぶ荷の存在が明らかになるあたりからあらたな局面をむかえる起伏に富んだ長い物語を2時間におさめようとしたのはたぶんハリウッド側の興行的な意向によるものでしょう。
そのうえ目と目があえば斬りあうような単調な戦闘アクションに注力しすぎたせいか
本来力を注ぐべき人物の掘り下げが不十分なのが誠に残念です。

たとえば魅力的であるはずの李の人物表現が力不足で文珠に芽生える思慕や宿敵である来栖の友情に説得力がないというように出演者が熱演するほど空回りする。
全体としても何かダイジェスト版というような印象の作品でした。

「西遊記」をモチーフに民族も異なるさまざまな登場人物が入り組みぶつかり合うなかなか面白いおはなしだけに
監督の何平=フー・ピンとしてはもっとじっくりと描きたかったのではないでしょうか。

☆☆

転々(2007・日)

2010年01月03日 10時38分50秒 | TV鑑賞作品
あけましておめでとうございます。

新年もお気に入りの映画のDVDをとりだしてきてはのんびり過ごしております。

元日の深夜BSジャパンの放送でみました。

オダギリジョーと三浦友和という異色のとりあわせ。
吉祥寺の井の頭公園“いせや”から皇居のお堀端、桜田門にいたる散歩ロードムービーです。
監督、脚本は三木聡。

親に捨てられ天涯孤独という割には大学8年生という恵まれた?自堕落な生活をおくる主人公の文哉(オダギリジョー)には84万円の借金があります。
ある夜、取立て屋の福原という男が文哉のアパートに突然あらわれ3日以内に借金を返せと脅かし立ち去っていきます。
この福原に過去のイメージを払拭するような風貌で挑む三浦友和が扮し好演しています。

しかし後日再び文哉の前にあらわれた福原は文哉にたいして自分の散歩につきあえば100万円やると切り出すのです。

ロケ地はいずれも見慣れた御馴染みの東京の街並み。
許可なしでゲリラ撮影した学生時代を思い出してなぜか懐かしい感覚が蘇ります。

主人公の2人以外にも小泉今日子はじめ所謂ゆるキャラを演じる出演者たちもにぎやかで楽しい。

やがてお互いの心のすき間を埋め合わせるかのようになりたつ“家族”のすがたを
押し付けがましくなくさらりと表現していて好感がもてました。

☆☆☆★


『男はつらいよ 噂の寅次郎』(1978・日)

2009年12月31日 07時27分28秒 | TV鑑賞作品
今年8月にお亡くなりになった大原麗子さんの追悼としてテレビ東京で放送していたのを昨夜みました。

お馴染みの寅さんシリーズの22作。
必ずしもリアルタイムではないのですが勿論全作みている大好きな寅さん
一年に何度か無性に会いたくなります。

不思議にも先日“釣りバカ”をみながら同じ劇場で父親とみた懐かしい記憶などがよみがえりすっかりそんな気分になっていたところでした。

テレビの前で三歳のショー君を抱っこしてみていると
いつの間にか家族全員集まっていました。
そして、笑い、うなづき、笑い。

汽車走るひなびた日本の懐かしい情景の旅先で出会う義弟の父(志村喬)とのやりとりはじめ
ラスト近く恋敵(室田日出男)の真摯な想いに反応する寅次郎に目頭があつくなる
なかなか味わいのある秀作です。

そしてマドンナ役の大原麗子の魅力に目じりがさがりっぱなし。
大原麗子さんといえばサントリーレッドのあのコマーシャルがはじまったのもこの頃。
ブラウン管の向こうで多くの男性諸氏を魅了しました。
ちなみに同じ男はつらいよでは『寅次郎真実一路』(1984)で米倉斉加年演じる悩める企業戦士の妻役として2度目のマドンナ出演しています。

終わりよければすべてよし
今年の映画もみおさめです。

☆☆☆★

『フィラデルフィア物語』(1940・米)

2009年12月17日 17時14分48秒 | TV鑑賞作品
先日BS2の放送を録画してみました。

男女の恋の駆け引き軽妙に描いて当時人気を集めたいわゆる“スクリューボール・コメディ”のなかの1本。
キャサリン・ヘップバーン、ケーリー・グラント、ジェームズ・スチュワートの3大スターが共演します。
監督はジョージ・キューカー。

キャサリン・ヘップバーン演じる不寛容で高慢な令嬢のトレイシーはケーリー・グラント扮する前夫デクスターを家から追い出すように離婚してから2年、あらたに炭鉱会社の重役ハワードとの結婚を目前に控え何かと気ぜわしい。
そんなところにセレブをゴシップする雑誌“スパイ”の記者マイク(ジェームズ・スチュワート)と女性カメラマンのリズをひきつれて前夫デクスターがあらわれたことから巻き起こる騒動。

上流社会といっても当時のアメリカは新興国
どんなに着飾って邸宅に住み気取ったところで所詮は“成金”(失礼!)もとは皆いっしょ。
そんな茶化した感覚がこうした一連の作品が支持された底流にあるのだと感じました・・・。

それと酒にまつわるシークエンス満載で思わずニヤッとする作品でもありました。

☆☆☆

『とかげの可愛い嘘』(2006・韓国)

2009年12月16日 17時19分25秒 | TV鑑賞作品
男女のせつない出会いを描いた韓国映画。
昨夜、BSジャパンの放送でみました。

とある田舎の小学校。
大好きな父の自転車の後ろに乗って登校してきた少年ジョガンは
雨降りでもないのに黄色い雨合羽を着てあらわれた可愛い転校生の少女アリに一目ぼれ。
ポケットにとかげをしのばせ自分にさわったものは呪われると自己紹介する不思議なアリとジョガンはすぐ仲良くなりますが
とかげが逃げた雨降りの日を境にアリはジョガンの前から姿を消します。

成長後もわかれと再会を繰り返す一途なジョガン(チョ・スンウ)と可憐なアリ(カン・ヘジョン)。
やがてアリの真実が明らかにされる日がやってきます。

美しく懐かしい田園風景に彩られた歯切れの良い序盤の“ボーイミーツガール”に対し
転調後は丁寧に描きたいつくり手の情熱がやや空回りしたか・・・。

☆☆

2009年テレビ鑑賞作品ベスト

2009年12月15日 17時10分39秒 | TV鑑賞作品
今年も残すところ2週間あまりとなりました。
先日の劇場公開作品と同様
テレビでみた作品を振り返ってみたいと思います。

今年はじめてみた作品つまり未見の作品
当然オール☆5でも先日放送された山中貞雄作品などはいれていません。
いま数えましたら年間約120本、1月に10作品のペースですか・・・。

満点の☆5はわずかに一作品。
3月17日にみた緒方明監督、田中裕子主演の『いつか読書する日』(2005・日)
文句なしのベストです。

次に☆4以上の作品ですが
じつは年の途中から、何のことわりもなく★=☆×0.5表記をはじめたため
8月以降では☆4はわずかに『ブロークン・フラワーズ』1作品。
つまり前半の評価は甘い?
評価に偏りがあるのを承知でブログ記載日のあたらしいものから順に並べてみます。

10/14『ブロークン・フラワーズ』(2005・米)ジム・ジャームッシュ監督
7/16『世界最速のインディアン』(2005・ニュージーランド=米)
7/13『チャンス』(1979・米)ハル・アッシュビー監督
7/9『ボンベール/帰郷』(2006・スペイン)ペドロ・アルモドバル監督
7/6『小説家をみつけたら』(2000・米)ガス・ヴァン・サント監督
7/1『僕のニューヨークライフ』(2003・米)ウディ・アレン監督
6/29『まぼろしの市街戦』(1966・仏)フリップ・ド・ブロカ監督
6/26『真夏の夜の夢』(1959・チェコ)イジィ・トルンカ監督
6/24『プロデューサーズ』(2005・米)スーザン・ストローマン監督
6/12『リオ・ロボ』(1970・米)ハワード・ホークス監督
6/2『こねこ』(1996・ロシア)イワン・ポポフ監督
6/1『不知火検校』(1960・日)森一生監督
6/1『皇帝の鴬』(1948・チェコ)イジィ・トルンカ監督
5/29『バヤヤ』(1950・チェコ)イジィ・トルンカ監督
5/1『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(2005・米=仏)トミー・リー・ジョーンズ監督
3/19『反撥』(1965・英)ロマン・ポランスキー監督
3/18『深呼吸の必要』(2004・日)篠原哲雄監督
3/3『街のあかり』(2005・フィンランド)アキ・カウリスマキ監督
2/16『鉄コン筋クリート』(2006・日)マイケル・アリアス監督
2/15『出逢い』(1979・米)シドニー・ポラック監督
2/8『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004・米ほか)ウォルター・サレス監督
2/4『虹の女神Rainbow Song』(2006・日)熊澤尚人監督
1/5『キサラギ』(2007・日)佐藤祐市監督

これらから古い名匠の作品をのぞきます。

次点はいずれ甲乙つけがたく
『ブロークン・フラワーズ』(2005・米)ジム・ジャームッシュ監督
『ボンベール/帰郷』(2006・スペイン)ペドロ・アルモドバル監督
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(2005・米=仏)トミー・リー・ジョーンズ監督
の3作品としたいと思います。

『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960・日)

2009年12月11日 16時44分16秒 | TV鑑賞作品
松本清張の短編小説集「黒い画集」の“証言”を映画化した作品。
今年が清張の生誕100年ということで一昨夜、BS2の特集放送でみました。

小林桂樹演じる主人公の石野貞一郎は東京のとある中堅繊維会社の管財課長。
この石野という男、会社では重役の知遇をえて将来の見通しもまずまずですし
家庭では中北千枝子の妻と2人の賑やかな子供に囲まれ世田谷の一軒屋に暮らすじつに恵まれた身分でありながら
一方で部下の若い女子社員(原千佐子)と不倫の関係にあり新大久保にある彼女のアパートに足しげく通う二重生活を楽しんでおります。
そして、もうひとり石野の隣家に住む気が弱くうだつの上がらない杉山(織田政雄)という保険外交員の男。
石野にとってすれ違えば会釈する程度という杉山の存在は杉山が保険の外交で訪問した向島の団地の妻が殺害されその容疑者にされるという事件をきっかけに一変していきます。
向島で殺人が起きたまさにその時間、新大久保の女のアパートから帰ろうとしていた石野は通りを歩く杉山と偶然出会い彼を認めお互い会釈していたのだった。
つまり杉山は無罪。
事実をしゃべれば不倫がばれ自分の築きあげてきた生活は何もかも台無しになる。
そう考えた石野は
石野の証言によって冤罪をはらしたい杉山の懇願にもかかわらず法廷で偽証を繰り返すのであった。

映画製作当時の時代の空気が感じられておもしろい悲喜劇。
まさに自業自得、主人公に同情の余地はありません。
平成のいまでも妻やかわいい子供がいるのにけしからん輩は小生のまわりにも存在しており
なかなかこのように罰してはくれない現実があるが故にちょっと溜飲をさげるおもいでラストを凝視しました。

監督の堀川弘通は『七人の侍』『生きる』などで黒澤明の助監督をつとめた人。
ちなみに氏が著した『評伝 黒澤明』は黒澤をつたえる好著として愛読しています。
脚色の橋本忍、撮影の中井朝一など
同じく黒澤映画でおなじみの一流のスタッフの力量がひかる
ひきしまった秀作です。

☆☆☆★