酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『無防備都市』(1945・伊)

2009年09月30日 17時07分57秒 | TV鑑賞作品
イタリア“ネオリアリズモ”映画の原点として有名な作品
日曜日の夜、BSイレブンで放送していたのをみました。

たまたま先日のことですが
映画評論家の佐藤忠男氏の過去の著作から再構成した
「映画でわかる世界と日本」(キネマ旬報社)という本をながめていたら
「映画は“逃避”である」という論評なかでこの作品を取り上げられていました。

多くのイタリア国民がファシズムに傾倒していた事実があったにもかかわらず
この映画をみるかぎり市民みんながパルチザンに参加していたようにみえるのは
自己を正当化し現実を逃避する手段として映画がなりたつ好例だというのです。

この作品の監督であるロッセリーニもかつてファシズムに与する内容の映画を
とっていたではないかというようなことまで言及していますが
決して作家を否定しているわけではありません。

そういうことは当時のフランス映画にもみられたし最近の邦画でもあります。
苦しい過去の忌まわしい現実を忘れさせてくれるのは
誠にありがたい映画という芸術が有する一つの側面であり
そういうことを承知していると映画の理解の助けになりますよというわけです。

さて、前置きが長くなりました。

べつに佐藤氏の考えを錦の御旗にするつもりもありませんし
こうした映画の描き方を否定するものでもありませんが

リアリズムよりも前述の逃避にもつながる少々一方的ともいえる感情でとらえた
“ドラマ”のほうが勝っている作品というのが正直な印象でした。

同じネオ・レアリズモの範疇にあるデ=シーカの『自転車泥棒』(1948)のほうが
断然胸に迫りくるのは
貧乏や失業が身近な昨今ゆえ
否、平和ボケしている証拠でしょうか?

☆☆★

『蕨野行(わらびのこう)』(2003・日)

2009年09月29日 16時51分02秒 | TV鑑賞作品
日曜日の昼過ぎNHKハイヴィジョンで放送していたのをみました。

“姥捨て”をテーマにした村田喜代子の原作を
足掛け8年の歳月をかけ映画化したという力作です。
監督は恩地日出夫。

人里はなれた原野である蕨野(わらびの)は
60歳を境に移り住むことを定められたこの世とあの世の中継地。

庄屋の家に後妻にきた若い娘ヌイ(清水美那)は
彼女の心の支えである姑のおババ(市原悦子)から蕨野行の約定を知らされ
心細くなります。
「おババよい、なにかおもうことありつるか?」
「ヌイよい、おれは関所のまえにたちてありつる。」
こんな独特な言い回しで
おババとヌイの二人の心の会話によってゆっくりとおはなしは語られていきます。

そんなヌイの不安な気持ちを察したおババは
秋の終わりまで生き延びたものは里へ帰ることを許されると告げ
数人の仲間と村を後にするのです。

彼らは里におりて村の仕事を手伝うことで一日の糧を得ることを許されていますが
それも険しい山道を往復できる限りのこと。

もはや“人”ではなく“蕨”となったジジババたち。
支えあい逞しく生きる姿は生き物の本来の姿をうつしているようで
むしろ神々しくさえ感じます。

製作はNPO「日本の原風景を映像で考える会」というだけあって
うつろう四季の自然の映像がじつに美しい。

そして演出のほうも自然に逆らわない。
太陽が雲にかくれ出演者の顔が暗くなってもそのままカメラを回しつづけます。

主演の市原悦子はもちろんのこと
石橋連司、中原ひとみ、李麗仙、左時枝といった熟年俳優陣の実に確かな人間表現。
おババが帰ってくるものと疑わないヌイを演じる新人の清水美那もよかった。

やがて蕨たちは一人また一人と旅立っていきます。
積雪の原野を嬉々として駆け回る彼らをとらえた映像に思わず目頭があつくなります。

自然をたたえる以上のすばらしい人間賛歌にしみじみと心うごかされる作品でした。

☆☆☆★

『男と女の不都合な真実』(2009・米)

2009年09月28日 15時25分14秒 | 劇場鑑賞作品
先週の金曜日みてきました。

昨今なにかと話題の“婚活ブーム”
理想の相手をみつけるのにコンサルをうけたりさまざまな交流会に参加したりと
恋愛先進国?のアメリカでも例外ではない様子をこの日の朝、NHKで報じていたばかり。
まさに悩める婚活世代の男女を描いた恋愛コメディです。

アメリカ地方のテレビ局が舞台。
若くして番組プロデューサーをつとめる才色兼備のアビー(キャサリン・ハイグル)
今夜も紹介相手の男性と食事をしますが理想と現実のギャップに疲れて帰宅した彼女は
テレビで他局の番組“The Ugly Truth” で視聴者の電話の声に答える
人気急上昇中のパーソナリティーのマイク(ジェラルド・バトラー)の姿を目にします。
女性を侮辱するような下品でストレートな恋愛指南に怒ったアビーは
すぐ番組に電話し反論しますが簡単にマイクにやり込められてしまいます。

翌日出社したアビーはこともあろうにマイクが引き抜きで自分の番組に抜擢されたことを知るのです。
マイクのほうもアビーが昨夜の電話の声の主と知るや
自分に対する嫌悪感をどうにか鎮めて番組を成功させようと
アビーが熱をあげる隣人の医師との恋愛を成就させることを約束します。

『P.S.アイラブユー』(2007)の素朴で誠実なイメージが先行するジャラルド・バトラー
彼を主役にもってきたところで大方の展開は読めてしまうなどというのはやはり言いすぎでしょうか?

☆☆

『神童』(2007・日)

2009年09月25日 16時40分08秒 | TV鑑賞作品
この連休の火曜日、BSジャパンで放送していたのをみました。

ピアノの天才少女を描いた同名の原作漫画の映画化です。

周囲も驚く天賦の才に恵まれながらも
ピアノ演奏に意味をみいだせないでいる中学生の成瀬うた(成海璃子)。

一方演奏の才能はいまいちながらピアノが好きで
何が何でもあこがれの音大に合格したい浪人生の菊名和音=ワオ(松山ケンイチ)。

ある日池でボートに寝そべり水辺の音に聴き入っていたワオはうたから唐突に声をかけられます。
その後偶然再会したワオにうたがピアノの演奏を指南したことから
やがて二人の不思議な交流がはじまります。
しかしそんな時うたは自身の耳の変調に気づくのです。

音大を目指す気弱で素朴な八百屋の一人息子を演じる松山ケンイチが良いのはいつものこと。
対する主役の“神童”を演じるのはドコモのCMでおなじみ映画初主演の成海璃子。
みはじめてすぐいいものをもっているなという印象です。

そのきらきらした彼女の印象が最後までかわることがない爽やかな佳作でした。

☆☆☆

『 ストリングス~愛と絆の旅路~』(2004・デンマーク)

2009年09月24日 17時25分05秒 | TV鑑賞作品
BS2で日曜の深夜放送していたのを録画してこの連休中にみました。

カンヌはじめ数々の映画祭で注目されたデンマークのドール・ムービー。
“新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明監督が気に入り
“ジャパン・バージョン”なるものに脚色しなおしたその作品です。

自らの愚行を悔い息子のハル王子に平和を託し命を絶つヘバロン王国の王カーロ。
しかしカーロ王の実弟ニゾは王の遺書を隠匿し王子に父上は暗殺されたと告げるのです。
やがて父のあだ討ちのためたった一人の家族である妹をのこし王国を離れるハル王子
苦難の末、美しい女性ジータと巡り合いますが・・・。

人形を操るいくつもの糸
天上から降ろされた糸は人形の生命の糸であり
人形同士を結びつける運命の糸でもあります。
その証拠に頭部についた太い糸が切られると彼ら人形は絶命するのです。

通常だったら隠すはずの操演の糸の存在を際立たせ
雨をふらせて人形を水浸しにする
しかも陰影に富んだ暗い画面のなかで物語が展開するという
人形劇の禁じ手をこれでもかとくりだします。

奇抜なアイデアに対する肝心なおはなしのほうは
やや古色蒼然とした印象も。

苦心の“日本版”も元の作品はどうだったのかとても気になりました。

☆☆★


『カムイ外伝』(2009・日)

2009年09月20日 08時45分23秒 | 劇場鑑賞作品
崔 洋一監督、宮藤 官九郎との共同脚色というのもそれなりに魅力ですが
なんといっても松山ケンイチ。

主人公“カムイ”を演じる姿が待ちきれなくて
公開日の昨日さっそくみてきました。

白土三平の名作、長編劇画「カムイ伝」(1964年~連載)
そこからうまれサンデー他に不定期連載されたのが「カムイ外伝」です。

被差別階級の問題も描かれる重層的な原作はまさに衝撃的。
しかしながら当時幼少の小生にとって最初の“カムイ”体験として記憶に残っているのは
1969年放送のTVアニメのほうです。

そして今回の映画になった“スガル”のおはなしはこのアニメで先行発表され
時代が下って“ビックコミック”に連載されたもの。

江戸時代、被差別階級の出自から逃れ“強さ”と“自由”を求め忍者組織に身を置いたカムイ
生涯組織で生きる掟を破りいまや“抜忍(ぬけにん)”として執拗な追忍(ついにん)たちから逃れる身のうえです。

ある日カムイは横暴でエキセントリックな藩主(佐藤浩市)の愛馬の足を鉈で切り取った
半兵衛(小林薫)という漁師に出会います。

やがて半兵衛の住む島の村で一時の休息をえることになるカムイ。
そこで出会った半兵衛の妻はかつて幼少のカムイが戦った抜忍のスガル(小雪)だった。

ワイヤーアクションの多用がかえってスピード感を削いでいる印象もあり
力を砕いたであろうカムイと追認たちとの戦いのシーンより

青い海に半兵衛と沖に漕ぎ出て漁をするカムイなど
何気ない島の生活を描く場面が好きです。

小林薫の無駄なく力が抜けた演技もいい。

“外伝”らしく?不条理や虚無感をおさえ
奇抜で破天荒なものがたりを優先させたテイスト。

エンターテイメント作として十分満足のできあがりだと思います。

☆☆☆★

『ココ・アヴァン・シャネル』(2009・仏)

2009年09月18日 16時50分24秒 | 劇場鑑賞作品
封切り日の今日、早い時間にみてきました。

孤児院で育った貧しい境遇ながら
独自の感性で道を切り開き世界で最も高名なデザイナーとなった“ココ・シャネル”
若き日の彼女を描きます。

お針子をしながら場末の酒場で歌手として働くガブリエル・シャネル。
ある夜、店にきた貴族のエティエンヌ・バルサン将校のおふざけから“ココ”と呼ばれ関係をもちます。
転がり込んだ彼の邸宅で独特な服や帽子をデザインするも心は満たされない。

やがて屋敷に現れたイギリス人実業家のアーサー・カベルと出会い愛し合うシャネル
さらにその創造の翼を広げることになるのですが・・・。

原作小説の映画化ですが
伝記映画というよりもこれはれっきとした恋愛映画。

これもお国柄なのでしょうが
彼女の具体的な起業の足跡について触れられていないのはやや物足りないか。

『アメリ』(2001)のオドレイ・トトゥが勝気な主人公を好演していました。

☆☆★


『若親分千両肌』(1967・日)

2009年09月17日 15時29分06秒 | TV鑑賞作品
8作目にしてシリーズ最終作。
昨夜のBSイレブンの放送でみました。

それにしてもわずか3年間でシリーズ8本の公開ですか。
しかも雷蔵についていえばこの年までの13年間、毎年平均10本を上回るペースで
映画主演していたのですから当時の興行のすさまじさが伺い知れようというものです。

第一作から三作までを監督した池広一夫の演出です。

若親分 南条武、あろうことか人違いから拳銃でうたれるシーンで幕をあけます。
通りがかった旅の奇術一座に助けられた武は
一座にたかろうとする青柳組を制したことからこの組の老親分(東野英治郎)の知己をえて
組のお家事情に少なからず手を貸すことになります。

やがて新型魚雷の機密情報にからんで古巣の海軍から嫌疑をかけられ
武自身、自らの潔白を証明しなければならなくなるのです。

海軍同僚に藤巻潤
青柳組の跡取り息子の山口崇と彼を慕う養女の藤村志保。
陰謀団の黒幕に三島雅夫。
大活躍の長門勇の座長率いるのは坂本スミ子、財津一郎といった賑やかな面々。

若親分も軍服姿と任侠道の両方で見せ場をつくり
シリーズ最後を飾るにふさわしい?じつに盛りだくさんの印象でした。

☆☆☆

キャンバス上場

2009年09月17日 10時06分42秒 | 資産運用
今週、月曜日に上場した三菱総合研究所につづくIPOです。

これも公募でわけてもらいました。

市場からの吸収金額が15億円程度と小さいせいもあるのでしょうが
前場引け間近の現在も50万株超の買い越しと当分寄りそうもない気配です。

2月の小杉産業の倒産で持株の処分を余儀なくされた以降
気分的なものもあったのでしょう
長らく株式市場から遠ざかっていただけに
ちょっとうれしい気分です。

まずまずの滑り出しの三菱総研もやがて一部に昇格するでしょうし
キャンバスは武田との提携から将来が有力視されるバイオベンチャーだけに
今後が楽しみ。

よほどのことがない限りめったに売らないので銘柄数だけ増えますが
やはり気長に保有し続けようと思っています。


『若親分凶状旅』(1967・日)

2009年09月16日 16時51分07秒 | TV鑑賞作品
プログラムピクチャーの名手、森一生監督の手になるシリーズ第7作。
昨夜のBSイレブンの放送でみました。

森監督は同じ年にやはり雷蔵主演で『ある殺し屋』を撮っていてこれが実によかった。
傑作です。
今回の若親分でも冒頭から独特なカメラアングルと早いカット割りでみせてくれます。

南条武が自殺した同期の海軍士官の死の真相を解き明かそうとする
ちょっとサスペンスタッチの異色作。

対するやくざの頭もこれまでのただの粗野で乱暴な輩と違い
武にコンプレックスをもつ元海軍の鬼兵曹という設定もおもしろい。
海軍少尉だった武には死ぬまで敬語でとおします。

女だてらに人足頭の江波杏子に対し義理ばかりが人生じゃないと諭すほど
“若親分”よりも元“海軍士官”としての武にかなり軸足をうつした作品となっています。

☆☆☆

JDC信託 免許取り消しに思う

2009年09月16日 11時12分30秒 | 世相
ジャパンデジタルコンテンツ
昨日、JDC信託が信託免許を取り消されました。

信託を使い投資家に映画やゲームの受益権を販売して制作費を集める事業を展開した同社
ソフト産業の新たな資金調達スキームとして脚光をあびました。
数々の賞に輝いたヒット作『フラガール』(2006)がその成功事例です。

小生も当時同社の社員による本を読み共感し映画産業のあらたな可能性を応援したくて
同社の株を少しずつですが購入し現在も保有していますので個人的にもとても残念です。

法令上必要な一億円の純資産を下回ったというのが取り消しの直接の理由ですが
元社員の資金流用のみならずその後の元社長の使い込みまでもが発覚するという
耳目にあたらしい昨年来の杜撰な数々の不祥事はまさに論外。
加えて今朝の日経新聞によれば株価操作の疑惑もあり目下当局で調査中とのこと。

当局は監督強化に向け大きく舵をきったようです。

せっかく切り開けた信託業務の門戸開放
規制緩和に乗じて悪行を積み重ね
天につばするようなけしからん輩がいるかとおもえば

奇しくもそれと呼応するかのごとく
借金の3年間返済猶予など金融界のみならず唖然とするような提言を
しゃあしゃあといってのける亀井静香の金融相起用。
危惧する民主党政権ですが早くも現実の姿があらわになりはじめています。

少しも大袈裟ではなくこの国の今後の金融行政をおもうと朝から暗澹たる気分になりました。

『若親分を消せ』(1967・日)

2009年09月15日 15時06分47秒 | TV鑑賞作品
市川雷蔵主演による大映京都作品“若親分”シリーズの第6作。
日曜日の午後、BSイレブンの放送でみました。

南条武(雷蔵)の出所の日
ただ一人出迎えに来てくれた亡き父の旧友、弥五郎親分が
列車のなかで何者かに殺されます。
死際に発した弥五郎の言葉と残された特徴ある短刀の鞘をたよりに
仇をとるため板前に扮して探りをいれる“若親分”の活躍を描きます。

監督はこれがデビュー作の中西忠三という人。
なかなかはりきっています。

やがて海軍将校としてやくざの事務所に単身乗り込むことになる武。
惚れ惚れするほどのかっこよさに痺れます・・・。

藤村志保のヒロインでなくても思わず呼び止めたくなる
雷蔵の口跡のすばらしさが堪能できる小品です。

☆☆☆

三菱総研上場

2009年09月14日 11時29分20秒 | 資産運用
100年以上破られなかったメジャー大記録。
イチローの9年連続200安打を先ほどBS1の放送で目撃しました。
素晴らしい快挙に一安心といったところです。

さて、今日は三菱総研が2部市場に上場しました。

なんと今年はじめて買った株がIPOで取得したこの銘柄というのですから
いかに株式相場から遠ざかっていたことか・・・。
自分でも驚いています。

初値は公募価格2200円に対して3200円。
さすがに今日の地合の悪さに引きずられてその後はさえませんでしたが
もともと大化けするような銘柄ではありませんので
まずは歓迎できる滑り出しといえるでしょう。

PERも類似企業と比べ割安な水準。
長期保有派の小生としては気長にお付き合いしたいと思っております。

『ウルヴァリン/X-MEN ZERO』(2009・米)

2009年09月11日 17時18分50秒 | 劇場鑑賞作品
ディズーニーによるマーベル社の買収について先日書いたばかりですが
FOXによるマーベルキャラクター“X-MEN”シリーズ最新作にして番外編
封切り日の先ほどみてきました。

拳の先から鋭利な刃物が飛び出す人気ミュータント“ウルヴァリン”誕生のものがたり。
同じように特殊能力をもった兄との確執や恋人の存在
爪がいかに現在のような金属になったかなどが語られていきます。

“X-MEN”前夜のお馴染みキャラクターたちも姿をみせ楽しませてくれますが
おはなしの核心が定まらないまま漫然とアクションが展開する印象も・・・。

映画館から帰ってきて
監督がアカデミー外国語映画賞の映画『ツォツィ』(2005)「2009/7/15記」の
キャヴィン・フッドと知って驚きました。

南アフリカのこの新鋭をヒットシリーズで試してみようという魂胆なのか
ワーナーの『ダークナイト』(2008)「2008/8/9記」のごとく作家性に期待したのか

この起用は少しもったいない気がしました。

☆☆★

『 パンドラの箱』(2008・トルコ=仏=独=ベルギー)

2009年09月11日 11時44分36秒 | TV鑑賞作品
ひきつづき昨年のAFF(アジア・フィルム・ファスティバル)上映作品から。
いよいよ5日間にわたるハイヴィジョン放送も最終日
昨夜はかなり眠かったですががんばってみました。

国民の99%がイスラム教徒でありながらNATOの一員であり現在EU加盟を待つトルコ。
フランスなどとの合作というこの作品をアジア映画とするかはやや疑問ですが

国際的に高い評価の女性監督イェシム・ウスタオウルの作品ということで
期待してみました。

認知症を発症した故郷の年老いた母をめぐり
都会で暮らす姉、妹、弟それぞれの人間の弱さが描かれます。
その一方で姉の一人息子である孫を登場させることで
老母の人としての尊厳が静かにあぶりだされていくのです。

姉妹がかかえる葛藤にはなかなか感情移入できず
気持ちの高ぶりの演出もちょっと過剰かな?なんて思ったりしましたが
小生自身かなりの“おばあちゃん子”だったせいでしょうか
孫と祖母との寡黙な心の交流にはいたく共感しました。

おばあちゃん(母)を演じた当時90歳のフランス女優ツィラ・シェルトンの存在感が際立つ作品です。

ちなみに2008年のサン・セバスチャン映画祭で最優秀作品賞、最優秀女優賞(ツィラ・シェルトン)を受賞したそうです。

☆☆★