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尺八工房まつもと 松本浩和

★ 尺八を制作・演奏しております松本浩和の活動情報 ★

★ 玉松会という団体で保育園の訪問演奏もしています ★

中継ぎ補修にマニキュア?

2012年04月15日 | 尺八の修理、メンテナンス
今朝、初めての方からお電話がありました。

着信の電話番号から、関西からと分かったのですが、
「お店はやっていますか?」との事。
当ブログをご覧頂いて、堺にもお店があると誤解されたみたいです。
私の書き方が悪かったでしょうか、、、

大阪(堺)には、出張で参りますので、常時居る訳ではありませんので。

申し訳ありません。。。

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そのお電話の内容なのですが、、、

中継ぎゆるみの補修に関してのお電話。
「とりあえず、マニキュアを塗ったらいいですか?」
と言われたのですが、出来れば止めておいてくださいと申し上げました。。

中継ぎの部分は、竹で出来ており、接合の固さ具合を、漆を塗って調整しています。
ですので、漆以外の別のものを塗るのはあまりよろしくないですし、ヘタにすると、抜けなくなったり、という可能性も無きにしもあらず。

ぜひ、専門家にお任せになることをオススメします。

ちなみに、私の所では、漆を塗り重ねるだけで大丈夫なくらいでしたら、5000円程の費用です。

直接お越しいただけなくても、遠方からでも、郵送で受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

尺八は、琴や三味線のように、糸を変える必要もないですし、破けて張り替えないといけない皮の部分もありません。
とてもメンテナンスの楽な楽器ですが、中継ぎはそういう意味では、一番手入れが必要な部分かもしれません。

尺八の調整『あご当たり』

2011年10月12日 | 尺八の修理、メンテナンス
先日、当ブログをご覧になった方から、尺八の調整の依頼の電話を頂きました。

初めての方でしたが、直ぐに工房の方にお越し頂きました。

それぞれ、別の制作者の1尺8寸管を2本お持ちになり、
『一方のあご当たりがちょうど良いので、もう一方も同じような感じにして欲しい。唇に当たる部分を少し広げれば良いのではないか?』
との事でした。

よく合う方は、歌口上部が横広の円形になっていましたが、もう一方は縦長の歌口裏側が真っ直ぐに近い、馬蹄形になっていました。
そこで、その馬蹄形の方も、横広にしたらいいのでは、とのお話でした。

そこで、私が二つの管を吹いたところ、どうも合わない方の【あご当たり】が、もう一方よりも随分高い。
また、あご当たりを落とす削り方が急なため、あごと竹との接地面積が少なく、安定しにくい。
それらが問題であることを指摘し、その部分を少し削ることを提案しました。

了承いただき、お預かりの上、作業しました。

この【あご当たり】の部分は、とても微妙で、削る時は『少し削っては、あごに当て、、、』を繰り返します。
大げさなようですが、0.1ミリ単位での作業です。

削ったところの内側を、丸くし、漆を塗りなおし、最終的に磨きをかけて仕上がりです。

依頼主にお返ししたところ、吹きやすくなったと好評でした。

この【あご当たり】は違和感を持ちやすい部分ですし、表面的な部分ですから、誰でも削ったりしたくなる部分ですが、竹は削り過ぎると当然ながら、元に戻せませんし、本当に微妙なところですので、専門家に任せることをオススメします。

尺八の(あるいはその尺八にあった吹き方の)問題点は、吹く方の判断と、作る(また吹く)専門の側とは、判断が異なることもあります。
これは例えて言えば、どこか身体に痛む部分があって、その原因を推測しますが、医療者が見ると、原因は別のところにあった、という事と同じだと思います。

何か、尺八を吹いていて違和感を感じる場合は、お近くの専門家にご相談されることをオススメします。
実際に面と向かってお話ししたり、吹いて見たりのやり取りすると、思わぬところに原因があることもありますので。

割れ尺八、修理例、写真(1)

2009年11月07日 | 尺八の修理、メンテナンス
少し古めの尺八で、ご覧の通り、パックリ割れております。
地まで割れが入っておりますので、吹いても鳴りません。

ですが、諦める事はありません。





このように割れ止めを施せば、ぴったりと閉まり、元通り問題無く吹けるようになります。



ぴっちり閉まっております。





注意して頂きたいのは、割れの部分に、ご自身で接着剤等を使わない事です。
接着剤を使うと、それが挟まって、このようにきれいに閉まらなくなってしまいます。

修理が必要か?気になる箇所

2009年10月14日 | 尺八の修理、メンテナンス
修理が必要(可能)か?気になる箇所をまとめてみました。
御参考ください。


・中継ぎがゆるい場合は調整することをお勧めします。
 漆を塗り重ねることによって補修・調整することが出来ます。

・大きく(ぱっくり)割れている竹でも修理により問題無く使えるようになります。
 ヒビ程度の割れは問題がないことが多いですが、
 息漏れになる可能性もありますので、ご相談ください。

・漆のはがれ、特に歌口部や中継ぎ部は痛みやすい箇所です。

・歌口部はめもの(黒い部分)の欠損、虫食いは入れ替える事により、多くの場合元のようになります。
 水牛の角などの場合、タンスに入れっぱなしで放ったらかしにしていると、虫に食われる場合が多々あります。

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私が尺八を演奏(制作)していると申し上げると、「そういえば家にも一本あります。親父(あるいは祖父)がしてました」と良く伺います。
簞笥や納屋に仕舞いっぱなしの尺八はありませんか?
ほとんどの場合、修理再生出来ますので、ぜひご相談ください。

尺八の扱い方、箇条書き

2009年10月13日 | 尺八の修理、メンテナンス
尺八の扱い方、注意点を箇条書きにしてみました。
御参考ください。


・尺八の手入れはまずは吹くことです。

・冷房、暖房の良く効いた部屋に置きっぱなしにしないでください。
 エアコンや特にホットカーペットは要注意です。

・稽古後は必ず露切りを通してください。
 内部に湿気がたまり、漆や中継ぎ部が痛む可能性があります。

・露切りを通す時、必ず歌口部を親指で押さえ、糸や布が当たらないようにしてください。
 接触により、はめもの(黒い部分〈水牛の角等を使っております〉)が欠損する恐れがあります。

・仕舞うときは布の袋やビニール袋に入れて乾燥を防いでください。

・2、3ヶ月に一度くらいで結構ですので、良質の植物油を塗ってみてください。
 良質の物であればごま油(白い方)やオリーブオイル等、何でも結構です。
 しばらく置いて馴染ませてから拭き取ってください。 
 2、3枚の布で拭きますときれいに拭え、べた付きません。

・中継ぎ部には必ずグリスを塗ってください。
 無理に入れると漆の傷みや、上管の割れが生じます。

中継ぎの補修

2009年03月04日 | 尺八の修理、メンテナンス
尺八で最も多く修繕が必要な所がこの中継ぎです。

中継ぎにつきましては【尺八の中継ぎ】をご覧下さい。

修理法と致しましては、基本的に漆を塗り重ねるのですが、ほぞ上下が出来るだけ一部分だけでは無く、全体で接する様に、何度も擦り合わせを致します。
それによって補修してもまたすぐに緩くなる、という事を防ぎます。
また使う黒漆(黒呂色)も特に良質のものを使用しております。

完全にスカスカ状態でも漆の塗り重ねによって、問題なくきっちり接合出来る様になります。

古い尺八ですと稀にほぞ竹が下管から外れて上管にくっついてしまう、という事も有ります。
(中継ぎは明治以降本格的になり、また主流に成りましたが、江戸期の中継ぎ管は今とは逆に上管にほぞが付いていたようです。)
このような状態でも、再びほぞを下管に接着する事で問題なく修理出来ます。


尺八の中継ぎ

2008年01月29日 | 尺八の修理、メンテナンス
今回は尺八制作者らしく尺八の扱い方の記事です。

尺八を見たことが無い方はご存じないかもしれませんが、現在普及している尺八のほとんどは中間部で上下に分かれる様になっています。
制作時に一本の竹を切り離し、臍(ほぞ)竹という別の細い竹を下管に嵌め込み接着し、上管部もほぞ竹がちょうど入り固定されるよう細工します。
このような分割式の尺八が主流に成ったのは明治以降です。
(ちなみに三味線の棹は普通三つに分かれますが、職人の趣味で稀に五つに分かれるものもあるようです。
 また尺八と同じく延べ(一本で分かれない)の物もあります。)

さてこの部分はゆるみが出ないよう出来るだけちょうど収まる様に竹を細工し(ここが制作者の腕の見せ所)仕上げに漆を塗ります。

接続部の漆が傷まない様に何か潤滑剤を塗りますが、私は管楽器用のヤマハのコルクグリスを使っております。
大きな洋楽器店ではどこでも扱っていると思いますが、500円程のものです。

中継ぎ部は特に力が加わりやすく、固いのをグリスを使わずに無理に差し込むと上管に割れが生じたり、ほぞ部に塗っている漆が傷む原因にも成ります。
また緩い場合にでもグリスを塗ることにより微妙な息漏れを防ぐ効果もあるのではと思います。

古い尺八にはよくあることですが、経年で下管ほぞ部の内側の漆も剥落します。
そのままですと水分がたまり、ほぞ竹が腐って来る恐れもあります。

尺八は使っていて消耗するところはほとんどなく、乾燥による竹の割れに注意して大事に使っていればメンテナンスに手間はかかりませんが、この中継ぎ部はその例外です。
緩くなったり逆に固すぎたり、また漆が傷んでいる場合には制作専門家にご相談されることをお進め致します。

尺八の修理個所リスト

2000年03月12日 | 尺八の修理、メンテナンス
・歌口破損ーー入れ替え

 ぶつかったリして欠けたり、放置しているうちに虫に食われたりします。
 象嵌部(はめ込まれている部分)を抜き取り、新しいものをはめ込みます。
 素材は色々有りますが、私は水牛の角を使っております。

・割れ直し(止め)

 乾燥によって竹が少し、あるいはパックリ割れる事が有ります。
 大きく割れたとしても湿度を与え、自然に締まった後に【割れ止め】を施す事により問題なく再生します。
 【割れ止め】は竹を削り、しっかりした糸を巻き、地を置いて整えた後、籐を巻きます。

・中継ぎ緩み直し

 抜き差しをしているとだんだんと緩くなってくる事が有ります。
 漆を塗り重ねる事により補正します。

・律調整

 手穴を調整する方法と、内部で調整する方法が有ります。