平尾家から約200m旧道を鎌坂峠の方に向かって進むと、右手に武蔵神社の
鳥居を発見しました。鳥居の直ぐ近くの空き地に車をとめ、石段を上って行くと
目指す武蔵神社に着きました。
武蔵神社はその名が示す通り剣聖宮本武蔵を祀った神社で、昭和46年に
武蔵の墓の近くに建立された比較的新しい神社です。神社には今にも烈迫の
気合いが聞こえてきそうな迫力満点の武蔵の肖像画が飾られており、一瞬間
怯んでしまいそうでした。
無敗神話で有名な武蔵に肖(あやか)り、必勝祈願や合格祈願の為に多くの
受験生やスポーツ選手が訪れるそうです。
この神社から歩いて直ぐのところに、父の無二斎と並んで武蔵の墓が建って
いました。なんでも武蔵臨終の地の熊本から分骨されたそうです。当然我々も
彼の冥福を祈り、厳粛な気持ちで手を合わせました。
ここに居たほんの10分くらいの間に数組の来訪者と遭いました。これ一つを
採ってみても武蔵の人気の高さを窺い知ることが出来ます。
武蔵神社の後は鎌坂峠に向かって更に車を進めると、程なく一貫清水に着きました。
ここから先は道路も急に細くなり、舗装も途切れていて正真正銘のやまみちになって
いました。
この清水は山陰山陽連絡の因幡街道にある鎌坂峠の8合目辺りで、年中変わらずに
冷たい水が滾々と湧いています。その昔旅人が立ち寄りからからに渇いたのどを潤し
「ほんに一貫分(一両は4貫です)の値打ちが有る」と言って峠を越して行ったところから
一貫清水と名付けられたそうです。
武蔵が故郷を後にする時、竹馬の友の森岩彦兵衛と別れを惜しみながら飲んだのも
この一貫清水といわれています。
私もその清冽な涌水を掌に汲取り、一気に飲み干しました。これが実に美味いんです。
容器を持っていたら汲んで帰りたいくらいでしたが、残念なことに持っていませんでした。
取りあえず渇いた喉を潤し、少し元気を取り戻したので、次の目的地の讃甘神社目指し
出発しました。