貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

デューイ石 Deweylite デュウェイ石 デュエイ石 ジュウエイ石

2022-04-03 11:37:33 | ややレア

(タイトルなげーよ)
記事も長くなります。(いつもだろw) 日曜だし皆さん暇でしょ?(君と一緒にするな)

いつものごとく、石屋さんのサイトを巡っていて、エヌズミネラルさんのサイトに来たら、美しいライトブルーの石に目を引かれた。名前は「デューイ石」とある。
「これは蛍光の色だろうなあ。しかし聞いたこともない石だな」と商品ページへ行った。
更新したてでも珍しい石はすぐに売れてしまうのだけれど、幸いまだある。
やはり水色は蛍光の色。けれど通常の色も薄い緑でなかなかいい。結晶の形もそこそこ整っている。
そして値段がとても安い。奇妙で安いものを見つけると買ってしまうという悪癖が出て、ぽちっとしてしまいました。

で、「ところで、デューイ石って何だ?」となった。(調べないで買ったのかよw)
エヌズさんの商品説明にはこうある。

《デューイ石 1(蛍光) ペンシルベニア州
微量のNiのため淡いアップルグリーンを呈します。紫外線長波で蛍光します。
Cedar Hill Quarry, Fulton Township, State Line Chromite Mining District, Lancaster Co., Pennsylvania, USA.》16x12x11mm

エヌズさんは面白い店で、鉱物名は基本的に和名のみ。英語名も英字表記もなし。組成の説明や化学式もなし。プロっぽくてかっこいいけど、あちきのような新米は時々不便を感じる。「翠銅鉱って何だっけ?」とか。(そのくらい知っとけw) まあググればよろしい。
でググった。けどあまり情報がない。

《別名ジムナイト。メリーランド州からペンシルバニア州にかけての蛇紋岩地域で見つかっています。実質的にクリノクリソタイルとリザーダイトの混合物で、滑石に似た石です。鉱物種としては独立扱いされていません。長波、短波ともに白色蛍光。ペンシルバニア州セダーヒルは、ろうのように柔くもろいデューイ石が採れ、純白に輝きます。》「鉱物たちの庭

《デュウェイ石(Deweylite)【フィロ珪酸塩・非晶質~低結晶質】
『日本産鉱物型録』(松原聰・宮脇律郎、東海大学出版会、2006)によると、「非晶質~低結晶度の蛇紋石鉱物+滑石様鉱物」とあります。
また、『福岡県鉱物誌』(岡本要八郎、日本鉱物趣味の界出版部、1944)によると、
「ヂュウェライトは~光沢鈍く、帯黄褐、帯赤褐色、非晶質、アラビヤゴム状又は樹脂状、~用途なし」
「主産地 嘉穂郡大分村兎山  同郡鎮西村八木屋山 等」
「ヂュウェライトは蛇紋石の変成物で非晶質アラビヤゴムの如き外観で、黄色乃至褐色を呈し、八木山等の蛇紋石の裂罅に産出する。昭和16年(1941)益富壽之助氏の分析に依れば此の結果よりMgOの量が稍少い。更に討究を要すべきも仮りに本鉱として記述しおくこととした。」とあります。》「石さまざま
……「用途なし」はちょっとひどくね? それを言ったら、天然石コレクターなんて皆「用途なし」じゃね? (こらw) 人類に用途があったとしても、人類は果たして用途があるのかどうか。(こらこらw)

さらには
《デュエイライトとは不良結晶度蛇紋石と不良結晶度タルクの混合物であり》
といった記述もある。ふーん、不良なんだ。(違う)

mindat には、組成として「Mg4Si3O10・6H2O?」とある。この「?」って何だよ。
そして説明は「主にリザーダイト lizardite とスティーヴンサイト stevensite の混合物」と素っ気ない。別名に「Gimnite、Deveilite」があると言う。

てんでばらばら。何のことやら。

     *     *     *

組成は Mg4Si3O10・6H2O? 。?はそのままにしておく。
マグネシウムのケイ酸塩だから、滑石 Mg3Si4O10(OH)2 や蛇紋石 Mg3Si2O5(OH)4 ときわめて近い。マグネシウム珪酸塩・含水鉱物ということでは同じ。これらからの二次鉱物か。
この標本は微量のニッケルを含んでいるらしいけれど、だとするとピメライトに近いとも言える。あちらはニッケル含有の石英主体混合石で、ポーランド産。
けれど、見た目はどれとも全然違う。結晶だし半透明だし。もっともごく稀に滑石が結晶体となることはあるらしい。

名前の表記もまちまち。「ジュウエイ石」「ジュエイ石」なんてのもある。デュは日本語にない音だとしてもジュにしてしまうのはちょっとねえ。ジュウエイは俺のことかとデューイ言い。(元ネタが古すぎて誰もわからんだろうよw)
Deweylite の名は、英語人名の Dewey から来ている。Dewey でまず出てくるのは、アメリカのプラグマティズム哲学者・教育学者の John Dewey でしょう。この人も、デューイと書かれたりデュウィーと書かれたりして、厄介。原音に近いのはデューウィーなんだろうけど、デューイで通っているみたい。
ちなみに、この人は日本の教育界にも影響があった人らしい。あちきもごく若い頃、家にあった『経験と自然』など何冊かの本を読んだ記憶がある。読んだ記憶はあるけど、読んだはずの内容はまったく記憶がない。まあそんなものだ。(おいw) しかしプラグマティズムの煩瑣な哲学書というのは果たしてプラグマティックであるかどうかという疑問は生じる。(あほなことを)
あちきとしてはデューウィライトと表記したいと思いますけど、まあデューイ石でいいですかね。

     *     *     *

平凡な組成要素ではあるけれど、結晶質であるというのは、ひょっとしたらレアなのかもしれない。セダーヒル産だから、確かなものではあるだろう。
ネットを見ても、出てくる写真は母岩にちらちらとくっついていてあまりぱっとしないものばかり。商品としても見当たらない。
うむむ。相当レアもの?
しかしそれにしては安い。もしかして扱いが難しいもの? いや、滑石に近いとしたらそんなことはないだろう。エヌズさんが1桁間違えた? まさかね。
なんて思っていたら、vec stone club さんで「クロムジュウエイ石 Chrome Deweylite」というのを売っていた。ジュウエイじゃあ検索に引っかかんないわな。こちらも安い。レアではないということなのか、レアだけど誰も欲しがらないということなのか、よくわからない。
「クロムジュウエイ石」は写真で見る限り、今回の「デューイ石」より少し青い。ニッケルが強いと緑になり、クロムが強いと青になるのだろうか。どちらもセダーヒル産。まあ個体差の範囲か。
……などと頭を傾げながらご本体の到着を待ったのでした。

     *     *     *

来た。(蕎麦屋の出前かよw)
ほのかな緑色。ちょっとオージェライトに似ているか。わずかにピンクや青が見える。複雑。



結晶の形もけっこうしっかりしている。

そして蛍光。これが素晴らしい。



明るい水色。写真では写らないけど肉眼で見ると緑も混じる。蛍光で青になるか緑になるかというのと、通常の光で緑かそうでないか、は無関係。ピンクの部分が緑になるわけではない。不思議ですなあ。
前にトゥグトゥップアイトの蛍光のことを書きました。あれもどぎつくなくて素晴らしく美しいものでしたけど、デューイ石も素晴らしい。

鉱物の蛍光の色というのは、どういう仕組みになっているのでしょうかね。
紫外線のエネルギーによって電子が外側の軌道に出て、戻る時にエネルギーを光として発する、というのが基本らしいけれど、石によって蛍光の色はまちまち。どぎつい色もあれば、素晴らしく澄んで美しい色もある。その色はどうやって決まるのでしょう。ま、説明されてもわからないかもしれんけど。

     *     *     *

けどね、(まだ続くのかよ) 上記にあるように「クリノクリソタイルとリザーダイトの混合物」「蛇紋石鉱物+滑石様鉱物」「不良結晶度蛇紋石と不良結晶度タルクの混合物」「リザーダイトとスティーヴンサイトの混合物」だったら、こういう結晶体にはならないのではないか。ん?固溶体だったらなるのかな。
しかしいろんな名前が出てますな。何だよこれ。

 クリノクリソタイル Clinochrysotile 単斜繊維蛇紋石 Mg3Si2O5(OH)4
 リザーダイト Lizardite リザード石 Mg3Si2O5(OH)4 クリノクリソタイルと同質異像
 サーペンティン Serpentine 蛇紋石(グループ名) (Mg,Fe)3Si2O5(OH)4
 タルク 滑石 Mg3Si4O10(OH)2
 スティーヴンサイト Stevensite 粘土鉱物 (Ca,Na)xMg3-x(Si4O10)(OH)2

もし Mg4Si3O10・6H2O という組成が正しいなら、サーペンティンないしタルクから生じた二次鉱物、というあたりが正しいのではないでしょうかね。しかし、タルク自体がサーペンティンからの二次鉱物で、サーペンティンはオリヴィン=ペリドットからの二次鉱物で、となると、デューウィライトは四次鉱物っつうことになる。(そんなもんねえよw) うーむ、はるばる来にし旅をしぞ思う。(業平かよw)
で、ニッケルを含むと緑になり、クロムを含むと青くなる。蛍光も見られる。ただしクロムデューウィライトが蛍光するかどうかは不明。
鑑定に出してみようかななんて思うけど、めんどいしお金掛かるし。

まあ謎は多いですけど、蛍光の美しい石として、とてもいいと思いますよ。

けれど、もろい。ちょっとやさしくなく置いただけで、角のところがポロっともげたorz。硬度が低いかどうかは、壊してしまいそうだから試していない。


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