このところちょっと不気味な話を読みたい気分が続いてまして。つまりちょっとウツなんですね(笑)
怖目なのを読みたいけれど怖がりなんでほんとに怖いのはいやなんで。
選択難しいんですよ。
で、読んでみたのがこれです。
いや~面白かったですよ! 夜更かしして一気読みしてしまいました。
きっかけは羽生結弦選手が2014年グランプリファイナルで滑った“オペラ座の怪人”です。
あのぬるぬる滑りに中毒してリピし続けるうちにどうでも原作が読みたくなって。
羽生選手が何から入ったのか、音楽なのか物語なのかわかりませんが(音楽でしょうね)
ミュージカルのサウンドトラック聞いていても(CDも買った)いまいち話が納得できず(それは舞台を見ないと)
あまり期待してなかったんですが予想外の面白さでした。
隠し扉だの手品だの道具立てが時代がかっているわりに気にせず読めるのは、
舞台になったパリオペラ座が今もほとんどこのとおり現存していて、
バレエ、オペラの殿堂として現役である、というのも大きいんでしょうか。
クリスティーヌもラウルもミュージカルの荒筋で読んでいたより芯があって魅力的です。
ヒロインが悲鳴を上げては失神して王子様に救出されるのではなく、それなりに強さのあるところがうれしい。
そしてこの“エリック(怪人)”・・・!
ここまで悍ましくここまで魅力的なキャラクターがあるでしょうか!?
怪人にエリックなんて似合わない、と思っていましたが彼が自分でつけた名だとすれば、
彼が何を望んでいたか、もうこの名前で表現できていて切ない。
これは小説でなくては描けないでしょう、ミュージカルでは“音楽の天使”の実現に限度があります。
(私は“♪ファントム・オブ・ジ・オペラ”はロンドンオリジナルキャストのマイケルクロフォードより
サラブライトマンのDIVAに入っているスティーブハーリーの方が支配的で情熱的で気に入ってますが、原作の設定からは離れていますよね)
“ガラスの仮面”を実写で演じても漫画ほどうまくいかないのと同じです。
(でも美内さんは漫画ですから、天才の演技を漫画でちゃんと描いたんですから、すごいと思いますよ!!)
クライマックス部分をそれまであまり出番のなかった“ペルシャ人”の手記に頼っているのは弱点になりそうなものですが
案外気になりません。
最初からこの人物の証言を作品成立のきっかけにしてあるという構成の工夫。
またこの人物がその場にしっくり合っていて、
信頼に足る人物だとラウルと読者に感じさせるのに成功しているからでしょうか。
比較していないので訳の良しあしはわかりませんが、気にならない読みやすい日本語でした。