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[FT]ギリシャはいつデフォルトすべきか

2012年05月15日 07時22分57秒 | 海外情報
(2012年5月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 経済と政治の状況からして、ギリシャにとって経済的に理にかなう選択肢は何か?選択肢は4つあり、いずれも不確実性に満ちている。


■従来計画の断行はほぼ確実に失敗




SYRIZAのツィプラス党首はギリシャが即刻、今のプログラムを撤回することを望んでいる(5月13日、パプリアス大統領との会談後、大統領官邸を出る同党首)=AP

 第1の選択肢は現状維持で、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)が定めた通りに、さらなる緊縮財政と経済改革を断行する道だ。ここに潜むリスクの1つは、ギリシャが永遠の恐慌に苦しめられ、債務の罠(わな)から抜け出せないことだ。もう1つのリスクは、理論上は経済的にうまくいくかもしれないが、政治的にはほぼ確実に失敗することだ。

 実際、これが既に起きている可能性もある。直近の世論調査では、緊縮に反対する極左政党の急進左翼連合(SYRIZA)が支持率でトップだ。この結果が今後の選挙で再現されたら、SYRIZAは第1党に上積みされる50議席(全議席の6分の1に相当)という誰もが欲しがる“賞”も手に入れる。過激な政党が勝利を収めるわけだ。

 この選択肢は経済的にも政治的にもうまくいかないため、理にかなう選択肢にはなり得ない。

 第2の選択肢は、ギリシャがプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)を均衡させるまで今の計画を断行し、均衡した段階でデフォルト(債務不履行)するか、少なくともIMFおよびEUと緊縮・改革プログラムについて再交渉することだ。これは1番目の選択肢よりは現実的だ。先週にはこの選択肢の一種が議論されていた。だが、この段階に至るまでに必要な緊縮が厳しすぎたり、時間がかかりすぎたりするせいで、やはり政治的なリスクが影響を及ぼす恐れがある。


■計画の撤回やデフォルトで離脱は不可避か


 第3の選択肢は、SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首が示した道筋だ。同氏は、ギリシャが即刻、今のプログラムを撤回して一部の改革を覆し、残っている対外債務のデフォルトの可能性を検討することを望んでいる。そうしてもユーロ圏からの離脱にはつながらないとツィプラス氏は主張する。EUははったりをかけているだけだと同氏は言う。後者について筆者はツィプラス氏が正しいと確信できないが、間違っているという確信もない。
 ギリシャが一方的にプログラムを撤回したら、どうなるか?まず、EUがギリシャ向けの融資を打ち切る。次にギリシャはすべての対外債務についてデフォルトする。だが、プライマリーバランスが赤字なため、ギリシャは今以上に大規模な緊縮プログラムを実行しなければならない。ギリシャがまだユーロ圏内にとどまることを望んでいると仮定して、他国が離脱を強いることはできるのか?





ショイブレ独財務相はユーロ圏はギリシャ離脱に耐えられるとみなしている(5月9日、ブリュッセルで講演する同財務相)=AP


■欧州に不利益でも追い出される可能性


 欧州の条約には、ユーロ加盟国が単一通貨から離脱する条項がないし、どこかの国を追放する条項も当然ない。条約は、EUの通貨がユーロであることも定めている。理論上は、欧州中央銀行(ECB)はギリシャ国債を担保として受け入れることを拒める。緊急流動性支援の要請を拒むこともできる。そうなれば、ギリシャは「自発的に」ユーロ圏から離脱せざるを得なくなる。だが、これは信じ難いほど敵対的な行為だ。

 ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は、ユーロ圏はギリシャ離脱に耐えられると確信している。この見方は、ギリシャの債務交換への債券保有者の自発的な参加に対してユーロ圏は容易に対処できると述べた同氏の判断を思い出させる。今回の判断も、長引く誤算の連鎖の1つになる恐れがある。筆者自身は、ギリシャが離脱を強いられたら投資家はユーロ解体に賭けて激しい攻撃に出ると思っている。

 金融不安が感染する、不確かなリスクもある。格付け機関のフィッチ・レーティングスが11日の連立協議に際して述べたように、ギリシャの離脱はユーロ圏の格付けに悪影響を及ぼす。ギリシャを離脱させてもEUの利益にならないとのツィプラス氏の指摘は一理ある。問題は、それでもユーロ圏は指導者が状況を読み誤って、結局ギリシャを追い出しかねないことだ。

 4番目の選択肢は、今すぐ自発的に離脱することだ。ギリシャの輸出産業は極めて小さいし、シティグループのウィレム・ブイター氏が指摘したように、離脱で高まる競争力は、すぐに国内政策によって損なわれてしまうだろう。


■最善は財政収支均衡後のデフォルト


 4つの中で最悪の選択肢は、実は1番目だ。EUとIMFのプログラムに従うと、ギリシャは10年にわたる恐慌に苦しみ、必然的にユーロから離脱する羽目になり、民主主義が崩壊する可能性さえある。
 筆者の考える最善の選択肢は、2013年までにプライマリーバランスを均衡させ、その後に民間、公的を問わず残った対外債務をすべてデフォルトする戦略だ。ギリシャ国外では不評だろうが、ギリシャをユーロ圏から追放しにくくなるはずだ。

 ツィプラス氏のやり方はリスクが高すぎると筆者は思う。だが、ギリシャ国民が同氏に投票する理由は分かる。ツィプラス氏の立場は、経済再生の観点を何一つ示せない緊縮・中道路線の既成勢力より明らかに理にかなっているからだ。今のギリシャは1930年代前半のドイツと同じだ。


■デフォルトは後からすべき


 ここで残るのは、デフォルトを後でするか、今するかの選択だ。筆者は後でデフォルトする方がいいと思う。より穏やかに財政を調整でき、賢明な改革をいくつか進められ、ギリシャがユーロ圏内にとどまる確率を高めるからだ。

 悲しいかな、今の政治の勢いは反対方向に振れている。

By Wolfgang Munchau

(翻訳協力 JBpress)


(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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