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ネットに躍り出る“個人店主” CtoC元年到来

2014年01月12日 08時14分44秒 | 経済
 スマートフォンの普及が、モノやサービスの売買を個人にも門戸を開いている。カメラで商品写真を撮影し手軽に電子商取引(EC)を開始できる新サービスなどが相次ぎ登場。消費者自身が売り主になり、プロの商売人と対等に売買できる環境が整ってきた。個人店主がほかの個人の買い主と商売するECは「CtoC」と呼ばれる。モノやサービスの流通構造が激変する可能性が出てきた。


■スマホで簡単、2分でオリジナルショップ開店


主婦の趣味サークルの昼食会に出向き、個人向け通販サイト開設サービス「STORES.jp」の説明をするブラケットの佐藤友祐マネージャー(右下)
 とある平日の昼下がり。東京・銀座の高級レストランで主婦などが集まる趣味サークルの昼食会が開かれていた。訪ねてきた男性が講師役となり、ECサイトの開設方法についてしきりに説明している。「すごいきれいな写真。私には撮れないわ」「弊社で商品の写真撮影も無料でやりますよ」「えーすごい」「何か売るものあるかしら」――。参加者は目を輝かせて質問を次々と浴びせかける。

 講師の正体は、ECサイト開設支援のブラケット(東京・渋谷)の佐藤友祐マネージャーだ。個人がECを手軽に始められる「STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー、以下ストアーズ)」の出店者を増やすために、無料で講師役を引き受けた。地域のコミュニティーに出向き、会食やイベントなどの場で店舗を持つ魅力を伝えようと奔走する。

 佐藤氏の説明を聞いた28歳の女性は「使っていない食器が大量にあるから売ってみようかしら」と思いついた。昼食会の間に実際に自分のスマホでストアーズに接続。オリジナルの通販サイトを瞬時に立ち上げてしまった。

 ストアーズのうたい文句は「最短2分で仮想店舗を無料で開設できる」というもの。決済やオーダーの受付などECに必要な一通りの機能を用意しており、プログラミングなど専門知識は一切不要だ。テンプレートを豊富に用意してあり、既存の「楽天市場」や「ヤフーショッピング」とはひと味違う、個性的でおしゃれな画面デザインのECを開設できる工夫がある。

 出店料は5品までの販売なら無料。6品以上販売する場合でも月額980円と安い。ブラケットが注力する手厚い支援サービスも受けられる。プロカメラマンによる商品撮影や店舗ロゴの作成、商品の発送に必要な梱包キットの提供などさまざまある。こうした支援がいずれもタダなことが人気を呼び、店舗を開く個人店主は右肩上がりで増えている。2012年8月にサービスを開始して以来、すでに6万店を突破した。「国内の通販サイトでは(楽天やヤフーを抜いて)断トツ店舗数を誇る」(ブラケット)

 ブラケットが力を入れる出張説明は、東京23区内で10人以上が集まる場ならどこにでも駆けつけて無料で行うという。「今までECサイトを持つなんて遠い夢と思っていた人に、気軽に作れることを知ってもらいたい」(佐藤マネージャー)と意気込む。最近は、幼稚園の「ママ友」の集まりなどからの問い合わせが多いという。

 同様の支援サービスはほかにも続々登場し、活況を呈する。BASE(東京・港)も急速に出店者を獲得し、6万店が目前。さらにFablic(東京・渋谷)は古着販売アプリ「Fril(フリル)」で100万点以上のアイテムを個人店主から集め、若い女性客を取り込むことに成功している。

 モノではなく個人が持つスキルをネットで切り売りする動きも出てきた。「サイトの訪問者を増やすにはどうしたらいいですか」「タイトルに引きのあるキーワードを入れておくといいですね」。識者や経験者に有償で意見を聞けるサービス「visasQ(ビザスク)」では、業務中に生じた困り事を中心に質疑応答が活発に行われている。


■知識・経験を切り売りし、誰かの役に立つ


「visasQ(ビザスク)」では特定分野にたけたアドバイザーが相談に応じる
 質問に答える利用者はアドバイザーと呼ばれ、いずれもビジネス経験が豊富な人たちばかり。職務経験やアドバイスできる内容などを交流サイト(SNS)「フェイスブック」を通じて登録するとアドバイザーになれる。「中途人材を採用したり教育プログラムを作ったりした経験がある」「食品ビジネスで経営企画の経験がある」など、IT(情報技術)関連企業や商社に勤務する1000人以上が自慢のスキルを提供しようと名を連ねている。

 相談を希望する側は、聞きたい内容などを申告。マッチするアドバイザーをリストから選んだら非公開のチャット機能で呼び出す。提供してもらう知識を擦り合わせたうえで、面会日程を決める。こうして実際に会ってアドバイスを受けられる仕組みだ。相談料は1回当たり3000円もしくは1万円。7割をアドバイザーが受け取り、残りが手数料として運営会社のwalkntalk(東京・港)の収益となる。

 両者の距離が離れている場合は、電話やネット電話「スカイプ」でやりとりも可能。アドバイスを受けられる分野に制約はないが、インサイダー取引など違法な情報を交換してはいけないなど一定のルールが設けられている。「副業規定に抵触するかもしれない」と心配する声に配慮して、アドバイザーが受け取った報酬を慈善団体に寄付する手段も用意した。

 教育アプリの開発のためベンチャー企業ロノト(東京・中野)を立ち上げた橘芳樹さんは、最近ビザスクを初めて利用した。「一般的なQ&Aサイトはどんな人が回答してくれているのかわからず信ぴょう性がない。相手の顔を見ながら経験にのっとったアドバイスがもらえたので安心できた」と満足げだ。今回アドバイザーを務めたのはネットベンチャーを経営する松本和仁さん。「お金はいらないくらい」と語り、埋もれた知識が他人の役に立つことに意義を感じているとする。

 walkntalkの端羽英子社長がサービスを始めたのは「自分では当たり前だと思っていたことが他の人にとって価値あるアドバイスになる」と考えたため。もくろみは当たり、「『国会議員政策担当秘書資格試験』の勉強の仕方について教えてほしい」「急に経理部に異動になった。会計について教えてほしい」など、困り事を抱えた相談者が次々と門戸をたたく。

 CtoCが切り開くのは、売買にとどまらない。個人間で「貸し借り」する新しいモノやサービスの流通も始まっている。リブライズ(東京・世田谷)が始めた本の貸し借りをネットを介してできるサービスがその一つ。蔵書家に加え大学の研究室や医療機関の待合室、企業内図書館などが貸し手となり、全国380カ所の「本棚」と個人の借り手を結びつける。「最近は個人の参加が目立ってきた」とリブライズ運営チームの河村奨氏。CtoCで個人が貸し手として台頭しつつあることを肌で感じている。
 本を貸したい人に自前でバーコードリーダーを用意してもらい、これをパソコンに接続。書籍に必ず印刷されている本を識別する「ISBNコード」を自宅で読み取る。この情報がほかの利用者に公開されて「我が家の図書館」がオープンする。借りたい人が申請し、貸し手の元へ出向く。貸し手がバーコードをスキャンして貸し出すなど、手間は通常の図書館の貸し借りに近い。


■自宅の本棚を「ミニ図書館」に


「電動ドリルなどめったに使わないものは貸し出しニーズが強い」。こう話すのはリブライズの河村奨氏。専用シールを貼り付けることで、何でも貸し出すことができる
 実家に1000冊を超える蔵書がある東京都世田谷区在住の花田一郎さん(34)は、リブライズで50冊を貸し出している。「本の所有は自己主張の場。自分が良いと思っている本を他人が読んでくれるのはうれしい」と満足そうに笑う。

 好調を受けてリブライズは、本以外の貸し借りサービスを始めた。どの家庭にも、電動ドリルなどの工具やライブで使う譜面台など、買ってはみたものの普段は使わずうもれたままになっているものは多いはず。河村氏は「たまにしか使わないものにこそ、貸し借りの需要がある」と考え、サービス開始に踏み切った。専用のシール状のバーコードをリブライズから購入し、貸したい人はこれを貼り付けたモノなら何でも好きな料金で貸し出せる。

 活気帯びるCtoC。大手ネット起業もここに来て熱い視線を送り始めている。個人間のモノの売買はこれまでオークションサイト「ヤフオク!」が中心だったが、値段がつり上がりやすいなどの課題があった。CtoCなら双方納得の値付けで売買や貸し借りが成立しやすい。無料通話・チャットアプリのLINE(東京・渋谷)は、個人間取引の「LINEモール」を昨年末に開始。オークションを敬遠したがっていた利用者の需要をうまく取り込み、取引が急拡大している。

 経済産業省によると、2012年の個人向けネット通販の市場規模は前年比13%増の9兆5000億円。14年以降は新たに個人の売り手が存在感を高め、さらに急成長が見込まれる。4月に消費税が8%に引き上げられることも追い風になりそうである。個人間取引では一般に消費税がかからないためだ。CtoCに頼る消費者の急増に合わせて、個人の売り手・貸し手が無視できないほど流通の世界で力を付けるのは時間の問題だろう。

(電子整理部 鈴木洋介)

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