この巻では、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスという皇帝が描かれています。
五賢帝の真ん中の三人で世界史の勉強の中で、名前は出てきたものの具体的にどんな事をした人たちなのははさっぱり知りませんでした。
トライアヌスはスペイン属州の出身。ドミティアヌス帝の頃に軍事で頭角を表し
国境に進入を繰り返していたダキア(現ルーマニア)の制覇、各種の公共建築の推進に加え、元老院への敬意、皇帝としての責務を非の打ち所がなくこなして来ましたが、ローマにとっての鬼門、パルティア遠征中に病に倒れます。
ハドリアヌスは、トライアヌスの従兄弟の息子、10歳の時に父を失い、トライアヌスともう一人が後見人となって育てています。
当時はトライアヌスも一介の軍人でしかなく、ハドリアヌスも通常の元老院の子弟と同じキャリアを積んでいきます。
トライアヌスが病で倒れた時に後継者に指名、皇帝となります。
皇帝となってからは、長時間かけて各属州・前線を視察し、課題を改善、不要なものをなくすなど、ローマ帝国のリストラを行います。
後年は気難しい面が表に出たらしいです。
アントニヌス・ピウスは、ハドリアヌスに(次の次の皇帝となる)マルクス・アンニウスを養子にすることを条件に後継者に指名されます。
ピウスという言葉は、慈悲深いという意味らしく、この後継者人事は元老院から好評に迎え入れられました。
トライアヌス、ハドリアヌスが帝国の建て直しを行っていたこともあり、特別変わったことをせず堅実に統治を行います。
この巻を通して、この時代というのはローマにとって本当に満ち足りた時代であったことがよく分かります。
優れたリーダーが治めた組織が以下に機能するか、カエサルやアウグストゥス、ティベリウスの時代の話を読んでいる時と同じ充実感があります。ネロ帝が死んだ後の混乱期の話などと比較して見ていくと、組織のトップに達人はいかに情報を集め、戦略を持ち実行していく必要があるか感じられるのではないでしょうか。