今回から数回に分けて大念住経(だいねんじゅうきょう)について書きます。大念処経ともいわれます。
日本の大乗仏教は沢山の宗派、流派が有り、どの教えが歴史的人物であるブッダの教えを直接伝えているのか、なかなか解りません。
ブッダの直接の言葉はどのようなものであったのか。
ブッダの瞑想はどのようなものであったのか。
このことに非常に興味が有ります。
そこで、原始仏教経典であるパーリ仏典の大念住経を読んでみました。
パーリ語から日本語に訳された大念住経は漢訳の仏教用語に影響されてなかなか難しいものが有ります。かえって、パーリ語から英語に訳された大念住経は純粋に英語として内容が理解されるので解り安い面があります。
それで、今回は以下の文献を参考に大念住経の新日本語訳を作成してみました。
・南方仏教基本聖典 ウ・ウェーブッラ著
・Mahasatipatthana Sutta Translated by U Jotika & U Dhamminda
・Maha-satipatthana Sutta: The Great Frames of Reference translated from the Pali by Thanissaro Bhikku
作成に当たっては、
1.出来るだけやさしい日本語にすること。
2.繰り返しを一切省略しないこと。
を念頭におきました。
こちらも参考にしてください
大念住経、又は大念処経(マハーサティーパッターナ・スッタ)
目次
文番
略説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1~3
一、身に関する瞑想
1 出息、入息の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4~6
2 行住坐臥の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
3 正しい意識の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
4 不浄観察の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
5 要素の観察の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
6 九段階の死体の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・11~19
二、受(感覚)に関する瞑想・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 20~21
三、心に関する瞑想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22~23
四、法に関する瞑想
1 五蓋(五つの障害)の部 (貪欲、瞋恚、こん眠、掉悔、疑)・・・24~29
2 五蘊(五つのの固執される集まり)の部 (色、受、想、行、識) 30
3 六つの内・外処の部 (眼耳鼻舌身意、色声香味触法)・・・・・ 31~34
4 悟りの七条件の部(念、択法、精進、喜、軽安、定、捨) ・・・・ 35~41
5 真理の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
a. 苦の真理の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43~59
b. 苦の因の真理の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60~72
c. 苦の滅の真理の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73~85
d. 道の真理の部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86~95
効果の言葉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・96~100
結びの言葉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101
目次は私が作ったもので原文には有りません。赤色で今日の範囲を示します。
(以下大念住経の本文を始めます)
1.私は、このように聞いた。
ある時期、ブッダはクルー国のカンマーサッダンマと呼ばれるクルー人の町に滞在しておられた。
ある日、ブッダは「比丘(びく、修行者、パーリ語bhikkhu)たちよ」と声をかけられた。「はい、尊者よ」と比丘たちが返事をすると、ブッダは次のように「法」を説きはじめられた。
略説
2.比丘たちよ、ここに一つの道がある。その道とは、人々を清め、悲しみと悲泣を乗り越え、肉体と精神の痛みを滅し、聖なる道を得、涅槃を観るための唯一の道である。それは「四つの念住」である。
3.この四つとは何か ? 比丘たちよ、比丘は、
努力して、正しく知り、気づきをもって、そして世間の貪欲と憂いから離れて、「身」をただ(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)身であると絶え間なく知覚して住むことである。
努力して、正しく知り、気づきをもって、そして世間の貪欲と憂いから離れて、「受(感覚)」をただ(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)受であると絶え間なく知覚して住むことである。
努力して、正しく知り、気づきをもって、そして世間の貪欲と憂いから離れて、「心」をただ(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)心であると絶え間なく知覚して住むことである。
努力して、正しく知り、気づきをもって、そして世間の貪欲と憂いから離れて、「法(ダンマ)」をただ(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)法であると絶え間なく知覚して住むことである。
略説終わり。
一.身に関する瞑想
1. 出息・入息の部
4.比丘たちよ、では比丘はどのようにして、「身」をただ(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)身であると絶え間なく知覚して住むのか?
比丘は、森に行き、あるいは樹の下に行き、又は誰もいない寂しい所に行って、足を組み、背筋を正しく保って座り 、気づきの念を身体などの対象に向ける。
そして、正しい気づきの念のみをもって出息し、正しい気づきの念のみをもって入息する。
長く出息すれば「私は長く出息する」と知り、長く入息すれば「私は長く入息する」と知る。
短く出息すれば「私は短く出息する」と知り、短く入息すれば「私は短く入息する」と知る。
「呼吸をしている全身に気づいて私は出息しよう」と努め、「呼吸をしている全身に気づいて私は入息しよう」と努める。
「呼吸全体を静めて私は出息しよう」と努め、「呼吸全体を静めて私は入息しよう」と努める。
比丘たちよ、例えば、熟練した轆轤工あるいはその弟子が、轆轤の紐を長く引っぱれば、「私は紐を長く引っぱる」と知り、紐を短く引っぱれば、「私は紐を短く引っぱる」と知る 。
5.比丘たちよ、このように比丘は、
長く出息すれば「私は長く出息する」と知り、長く入息すれば「私は長く入息する」と知る。
短く出息すれば「私は短く出息する」と知り、短く入息すれば「私は短く入息する」と知る。
「呼吸をしている全身に気づいて私は出息しよう」と努め、「呼吸をしている全身に気づいて私は入息しよう」と努める。
「呼吸全体を静めて私は出息しよう」と努め、「呼吸全体を静めて私は入息しよう」と努める。
6. このように、「身」を自己における、(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)身であると絶え間なく知覚して住み、
あるいは、「身」を他己における身であると絶え間なく知覚して住み、
あるいは、「身」を自他における身であると絶え間なく知覚して住む。
あるいは、「身」の発生とその原因を絶え間なく知覚して住み、
あるいは、「身」の消滅とその原因を絶え間なく知覚して住み、
あるいは、「身」の発生と消滅の両方とそれらの原因を絶え間なく知覚して住む。
要するに、比丘は、自分でもない、自我でもない、魂でもない「身」のみが存在するということに確実に気づいている。この気づいている事こそが正にヴィパッサナーを得るためであり、その進歩を得るためである。
愛着と誤った考えから離れ、世間の何ものにも執着しない。
このように、比丘たちよ、比丘は「身」を(自分でもない、自分のものでもない、自我でもない、ただ現象に過ぎない)身であると絶え間なく知覚して住むのである。
出息・入息の部終わり。
(次回に続きます)
大念住経(大念処経)1http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/5dfd915e6ed70b389d597c53a110d757
大念住経(大念処経)2http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/8cc63f1f741c2b1844ae282645ec9bbc
大念住経(大念処経)3http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/135d45345210d9384075a6349cf75349
大念住経(大念処経)4http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/02304c1863d0c9276b6d8e6cd4f6f06b
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大念住経(大念処経)8http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/b5a816b864502f42a6e227a294e81cd8
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ヴィパッサナー瞑想を基礎にした、マインドフルネス瞑想の普及を図りたいと考えております。
貴ブログのマハサティパターナスッタとアーナパーナスッタの経文のページを私のブログからリンクさせてくださるようお願いします。
多摩丘陵林住記のhhです。
リンクのコメントを頂いて恐縮しています。ご自由にお使いください。有難うございました。
コメントに気が付くのが遅れて返信が遅そくなり申し訳ありませんでした。
山本様のご活躍をご祈念申し上げます。