春の花の揃って咲く日に父さんは
横たわってもう起きて来なかった
閉じた目もとは生きているようでやさしかった
お腹の上で組んだ指はとても太くて
山の男の骨は老いても強く強靭で
容易には焼けおちなかった
焼いたはずの老人の骨が太くて多すぎて
壺に入れるのに
おんぼうは汗びっしょりになった
誰が97年のいのちの抵抗を知るだろう
骨になってもまだ父さんは
明治から大正 昭和 平成にまで継続を
し続けようとするかのようだった
春の梅 水仙 ヒヤシンス 椿 しだれ桜
夏の百合 ダリア 百日草に赤いカンナ
秋は自慢の菊鉢の群れ 糸菊 豆菊 懸崖の菊
一年中花が絶えない花の庭を
遠くから観に来ては縁側で茶を飲み遊んで行った村人たち
彼らももう今はいなくなって久しい
富士の浅間神社の神様の名にちなんだ花の名を持つ父さんは
桜の満開だったふるさとの空の下
この世との別れを悲しむこともなく
長い人生を終えて去った
桜の花がはらはら散り
誰も涙も流さずにのどかに
食事をした春の日の焼き場の待合の部屋
爛漫の色溢れる花の季節
父さんはもの言わぬ静かな存在になって
空の上にある新しい国で住むことを決めた
最後に生まれて来た私は
毎年白いご飯を盛り
大好きだったマグロの刺身と熱い茶を供え
白いストックの花と菜の花を供え
青い空に消えたとうさんとの
別れの日を思い出す
故郷の山山は今は父さんになり
懐かしい家と今は花の咲かなくなった庭を
静かに眺めていることだろう
横たわってもう起きて来なかった
閉じた目もとは生きているようでやさしかった
お腹の上で組んだ指はとても太くて
山の男の骨は老いても強く強靭で
容易には焼けおちなかった
焼いたはずの老人の骨が太くて多すぎて
壺に入れるのに
おんぼうは汗びっしょりになった
誰が97年のいのちの抵抗を知るだろう
骨になってもまだ父さんは
明治から大正 昭和 平成にまで継続を
し続けようとするかのようだった
春の梅 水仙 ヒヤシンス 椿 しだれ桜
夏の百合 ダリア 百日草に赤いカンナ
秋は自慢の菊鉢の群れ 糸菊 豆菊 懸崖の菊
一年中花が絶えない花の庭を
遠くから観に来ては縁側で茶を飲み遊んで行った村人たち
彼らももう今はいなくなって久しい
富士の浅間神社の神様の名にちなんだ花の名を持つ父さんは
桜の満開だったふるさとの空の下
この世との別れを悲しむこともなく
長い人生を終えて去った
桜の花がはらはら散り
誰も涙も流さずにのどかに
食事をした春の日の焼き場の待合の部屋
爛漫の色溢れる花の季節
父さんはもの言わぬ静かな存在になって
空の上にある新しい国で住むことを決めた
最後に生まれて来た私は
毎年白いご飯を盛り
大好きだったマグロの刺身と熱い茶を供え
白いストックの花と菜の花を供え
青い空に消えたとうさんとの
別れの日を思い出す
故郷の山山は今は父さんになり
懐かしい家と今は花の咲かなくなった庭を
静かに眺めていることだろう