真央ちゃんのパワー

子どものころと違って、大人になると人前で泣くことなんか、めったになくなるものですが。
女子フィギアスケートの、浅田真央選手とキム・ヨナ選手がフリーの演技を終えたときに、見せた涙は、悔しさとうれしさ、対照的でありながら、どちらも心のままに自然にあふれ出た、いい涙だなあと思いました。
力を尽くした人のみが流せる涙ですから。
　
１５歳になったばかりの真央ちゃんを初めて見たときは、そのかわいらしさに、氷の妖精が目の前で具現化したんじゃないかと思いましたよ。
難易度の高いジャンプも、可憐に舞うように流れるように軽々とこなし、しかも本当に楽しそうに滑っていましたものね。
見ていて幸せになるってこういうことなんだと。なにか、女子フィギアの歴史を変えたと思えるような登場の仕方でした。



オリンピックで真央ちゃんが滑り終えたとき、アナウンサーが、本来の彼女らしさを前面に出さず、敢えて難しい曲で挑んだのは、真央ちゃん本人がこのプログラムを気にいっているからだと言っていたのが心に残りました。

誰でも、オリンピックに出るからには、メダルを獲得することを目標にします。
当然と言えばそうなのかもしれませんが、やはり、メダルは結果であって、「挑戦し続ける意志」という部分こそが、スポーツにおけるパワーではないかと、ふと思いました。

メダルだけに固執するならば、もっと別のやり方もあったのかもしれません。
しかし、敢えてこの曲を選んだ彼女から、アスリートとしてさらなる高みを目指すのだ、という強い意志を感じました。
全体として、小さなミスはあったとしても、女子選手として初めて、トリプルアクセルという難易度の高いジャンプを３回もこなし、男子選手も顔負けのアスリートとしての力強さ、くわえて、彼女の内面から出てくる気迫に圧倒されそうになりました。

キム・ヨナ選手の、高い技術力と芸術性は、女子フィギアが長年追求してきた頂点であったと思います。
しかし荒削りだったかもしれませんが、真央ちゃんの今回の滑りは、メダル至上主義の現代オリンピックという枠を超えて、一人の人間、一人のアスリートとしての「パワー」を感じました。

今回のオリンピック、真央ちゃんの存在というものは、やはり女子フィギアの歴史を変えてしまったように思います。
もはや、メダルの色なんか無意味にすら思えるほど。本人がそれに気づいているかどうかは・・・わかりませんが(笑)。



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