はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

もしも昨日が選べたら(原題・Click)

2006年10月17日 | 映画(2005-06年公開)

「おっ、これって便利じゃん」実際はあり得ない万能リモコンを手にして…

やっぱりFamily firstな時代?

「マイホームパパ」という呼称には、
かつての、モーレツ社員がもてはやされた時代には
侮蔑の意味が込められていたような。
今はその呼称が持つ意味合いにも変化が感じられる。
肯定的に捉えられるようになったと言うか、
本人自らそう称して憚らない時代の空気を感じる。
で、時代を象徴する記号として、この映画を見た場合、
米国の家庭重視という伝統的価値回帰の潮流を感じるよね。
これはブッシュ政権の登場が作り出したものなのかもしれないし、
9.11テロの悲劇が米国市民に家庭や家族の大切さを
改めて考えさせた結果も関係なくはないのだろう
(勿論、より複雑な要素が絡みあっての現在なんでしょう)

米国はトップエグゼクティブに近付けば近付くほど、
激務になると聞いたことがある。
家庭を顧みる時間もないほど仕事に追い立てられ、
少しでも気を逸らせば激烈な出世レースからすぐさま脱落する。

例えば世界が活躍の舞台である金融・証券業では、
成果を出せば高収入が約束される代わりに、
まさに夜も昼もない激務が待っている、というように
(中にはひと財産築いたら早々と引退して自由の身に、
という話も聞いたことはある。MSのビル・ゲイツも
近々引退して妻と共に慈善事業に専念するのだとか)


でもそうした社会的・経済的成功の陰で、
個人としてのプライベートな生活は、
家族持ちなら家庭の在りようは、
どのようなものになっているのか?
果たして温かく濃密な夫婦関係や親子関係を
構築できているのか?

この作品の主人公マイケル・ニューマンは、
まさに上昇志向バリバリのワーカ・ホリックだ。
夏の間に子供達と遊ぶはずだったツリーハウスも未完成のまま。
かねてから家族が楽しみにしていたキャンプの約束さえ、
仕事を理由にホゴしかねない仕事中毒ぶり。
より豊かな生活をゲットするためと妻には言うけれど、
現実は幼い子供や妻とのかけがえのない時間を犠牲にし、
彼の拠り所であるはずの家庭は、
妻ドナの愛情と忍耐とで辛うじて支えられている状態だ。


美しい妻ドナとかわいい子供達ベンとサマンサ…

そんな彼が、ひょんなことから万能リモコンをゲットした。
自宅のあらゆる機器のスイッチをコントロールできるどころか、
人生の早送りも巻き戻しも思いのまま。
「これは便利」と、そのリモコンを使って
人生の面倒なことは早送りしてしまうマイケル。
ところが、コントロールされていたのは自分の方で…
というお話。

物語は主演のアダム・サンドラーの明るいキャラも手伝って
全編コミカルな調子で進むも、
その実、描かれている内容は結構シニカル。
失って初めて知る大切さ、価値。
それを現実世界で実体験するのは辛過ぎる!
だから、映画で追体験!!

自分に引き寄せて考えると、
映画のドナの献身ぶりを少しは見倣はねばと思った。



家庭円満の秘訣は、やはり夫婦の固い絆にあり。
こんなに献身的で美しい奥さんを大事にしないなんて、
バチ当りだよ。マイケル!

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