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はなこのアンテナ@無知の知

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三笠フーズ事件に見るこの国の機能不全

2008年09月18日 | 「食」についての話題
三笠フーズによる事故米の不正流通事件。不正者は三笠フーズに止まらず、被害も拡大する一方だ。事故米と知らずに口にしてしまった人々だけでなく、末端の加工業者も被害者と言える。

工業用として破格の卸値(3円/KG)で農水省から卸した事故米を、食用として高値(70円/KG)で転売した三笠フーズや浅井の企業倫理感のなさは言うに及ばず、監督官庁である農水省の管理能力のなさ、事件発覚後の対応から見える無責任体質には怒りを通り越して恐怖を感じる。こうした企業や官庁に、私たちの「食」を任せて大丈夫なのか?大丈夫なわけないよね。いったい誰を信じたら良いのか?極端な話、自分の口に入るものは自給自足ですべて賄え、ってことですか?そんなの現実的に考えて無理だ!

それでは、どうしたらこのような不正を防ぐことができるのか?ひとつには、流通経路をシンプルにすることだと思う(つまり、生産者を明らかにできない、流通履歴が無駄に複雑な業者からは原料を卸さない)。

農水省の監督下で、農産物を取引きする際に、どのようなルートを辿ったか一目瞭然の履歴表を添付、もしくは提示するよう義務づけたら良いと思う。所謂トレーサビィリティ(traceablity)だね。(←でも中間業者が皆グルだったら意味ないか…)。また農産物取り扱い業者には不正がないか、不定期に”抜き打ち検査”を実施する。検査官が業者と必要以上に親しくならないよう、同じ検査官を同一の場所には派遣しない。業者による接待厳禁は言わずもがな。既に報道されているように、不良品は流通させないこと、買う側も、袋のラベルを盲信するのではなく、中身を自分自身の目で確認することは重要だろう。今回の不正のからくりを徹底的に明らかにして、今後はその真逆のことをすれば良いのかも。

実際、三笠フーズの不正のからくりを見てみると、不正発覚を防ぐ為に、わざと幾つものダミー会社を経由させて流通経路を複雑にしている。一般に日本の流通システムは他国と比べて複雑だと言われており、ほとんどの商品は幾つもの中間業者を経て、私たち消費者のもとに届いている。こうした商習慣が不正取引の温床になっているのは、今回の一件でも明らかとなった。さらにこれは物価の押し上げ要因にもなっている。現に「中間業者カット」「産直」をセールスポイントに、低価格販売を実践している業者がいるではないか。トレーサビィリティを確立する為にも、商品価格の適正化の為にも、流通経路はシンプルにすべし!

食の安全を確立する為にはまず「私たち消費者が口にする食品の身元を明らかにすること」に尽きる。生協で取り扱う農作物は既にそれが常識となっており、そこからさらに一歩進んで、生産者と消費者の直接交流事業の推進や飼料高騰に喘ぐ生産者への生協会員からの緊急カンパなどによって、相互扶助の仕組みが作られつつある。生協の代名詞とも言える「産直」は、今後「食の安全」に敏感な消費者には、重要な選択要素となって行くだろう。

もちろん、生協とて万能ではない。残念ながら、それは一部生協が取り扱った中国天洋食品による毒ギョウザ事件で、私たち消費者は既に学習済みである。ここでのキーワードは「加工食品」である。自分が口にするものは、身元の明らかな食材を使って、できるだけ自分で調理する。これが理想。私たちは自分たちの手間を省いた時点で、誰かに自分の身の安全を委ねることになるからだ。委ねるとすれば、その委ねた相手が信頼に足る人物か、業者か、判断するのは私たちの自己責任となる。その信頼のよすがとなるのは、内容に見合った価格かもしれないし、人物、業者の適正な開示情報かもしれない。もちろんその前提として、監督官庁である農水省の意識改革が重要である(それにしても農水大臣になる人は無能な人が多い印象。頭の中は利権のことだけでいっぱいか)。スーパーバイザーとして、農水省がすべての農産物の信頼性を保証してくれなければ、それこそ私たちは自給自足の生活を迫られることになる。

今回の事件では解決に向けて、初代消費者庁長官と目される野田聖子議員が陣頭指揮を取ることになった。実は、例えば米国のFDA(Food and Drug Administration)に相当するような、全面的に消費者、国民の立場に立った官庁が、日本にはこれまでなかった。既存の官庁はそれぞれの監督産業と分かちがたく結びついており、消費者や国民の利益より、産業の利益が優先されることが多かった。今回野田議員が”大岡裁き”を見せて、国民の納得するような解決策を見いだしてくれれば、まだこの国の国民、消費者は自分の命を政府に託せるのだが…(消費者庁設立のあかつきには、他のすべての省庁に文句を言える権限を与えないと意味がないだろう。消費者庁がうまく機能すれば、消費者庁の道筋をつけたと言うことで、今は評価が散々な福田首相も、後世でその功績を称えられるかもしれないよ。)
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