今年の米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した、
『不都合な真実』。アル・ゴア元副大統領の講演の模様を
中心に映し出しながら、「地球温暖化防止」を訴える
ドキュメンタリー映画。
タイトルが意味するところの『不都合な真実』が、
誰にとって”不都合な真実”なのかは、
本作を見れば自ずと分かるようになっている。
今年のアカデミー賞は、まさに名匠マーティン・スコセッシ監督
の年だったが、同時にこの『不都合な真実』の年でもあった。
それはレッドカーペットにゴア氏が登場した時から始まっていた。
彼が夫人を伴って登場するや、人々の視線を一身に集めた。
授賞式が開幕してからも、環境問題に関心が高いことで知られる
レオナルド・ディカプリオと共に早々とステージに登場するなど、
他の長編ドキュメンタリー賞候補者とは端から別格の扱いだった。
これは、リベラル派が多いと言われるハリウッド映画界で、
ゴア氏が抜群の人気を誇っていることを示しているようだ。
そのゴア氏賞賛の模様をブラウン管を通して見る限り、
地球温暖化防止会議京都議定書を批准しなかった米国でも
いよいよ地球温暖化問題への意識が高まったかと
日本の多くの視聴者は感じたはずである。
しかし、それは錯覚に過ぎないのかもしれない。
『不都合な真実』のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞
の興奮も未だ冷めやらぬ先週、冷水を浴びせるような記事が
マスコミの登場した。
■「ゴア元副大統領の”不都合な真実”―電気使用量は一般家庭の20倍
テネシー州ナッシュビルにある部屋数20のゴアの邸宅の光熱費は
年に2万9,250ドル。テネシーのセンター・フォー・ポリシー・
リサーチの資料によると、ゴア家が昨年使用した22万1,000KWの
電気の年間使用量は、米国の平均家庭の約20倍にも上るという。
同センターのドリュー・ジョンソンさんは、
「生活の仕方を説いている氏ですが、ご自身はそのルールに
従っていませんね」とコメント。当のゴア氏の広報は、
「より効率良くエネルギーを使う方法を思索中」だと弁解。
ここで注意しなければならないのは、ゴア家と米国の一般家庭
とを単純比較することが果たして公正なのかどうかだろう。
一般家庭の定義も曖昧で、住宅規模も明記されていない。
調査をしたセンター・フォー・ポリシー・リサーチの
政治的立場も、この記事を読む限り不明である。
私はこの記事のことをテレビで知ったが、
国際弁護士であり、米国通と目されるコメンテーターも、
「これは、彼の活動を快く思わない保守派やエネルギー業界が、
ゴア潰しにかかったということでしょう」とコメントしていた。
「ゴア氏は昔から脇が甘く、攻撃の隙を与えてしまう」とも。
1月27日付サンケイ・エクスプレス紙でも、
映画『不都合な真実』に対する一部保守層の拒否反応が
記事の中で伝えられている。以下はその記事の抜粋。
米国西部の公立中学校が理科の教材として『不都合な真実』を
上映しようとしたところ、それを知った親から
「(温暖化防止に消極的な)米国を非難するような偏見に満ちた
映画を子供に見せるな」という抗議が地元の教育委員会に
寄せられた。これを受けた教委が「地球温暖化のように科学的
にも議論の分かれる問題を教材で扱う場合は事前の承認と、
異なる見解の紹介が必要」として、上映を中止させた。
また、制作者側がDVD5万枚を学校に寄付すると申し出たが、
米科学教師協会が「政治的に一方の側に肩入れしたくない」
と断ったとの報道がある。
対照的に、1月20日から本作が全国公開された日本では、
「学校などで広く使われるにふさわしい」と「文部科学省特選」
に選ばれている。
彼我の違いは一体何なのだろう?日本はよく言えば素直、
悪く言えば単純で、いささか深慮に欠ける国なのか?
米国がより慎重で、科学的論拠の正確さを追求する国なのか?
事実、「地球温暖化のメカニズムは解明されたわけではなく、
二酸化炭素の排出規制が必要とするゴア氏の論理には懐疑的
な人も多い」と先の記事にはあり、ゴア氏の主張そのものが
絶対的に正しいとは言えないとしている。
しかし議論の余地はあろうとも、地球温暖化は待ってくれない。
世界の科学者らも結束して、地球温暖化防止へ取り組もうと
している。今月1日には「国際極年」が正式に始まった。
これは温暖化の影響が最初に顕在化すると言われる極地の研究に
世界中で1万人を超す科学者が挑む企画で、世界60カ国以上の
研究者らが今後2年間かけ、謎の多い北極や南極に関する観測や
研究、啓発活動を国際協力で集中的に進めるらしい。
米国は科学的論拠や政治的立場を重んじるあまり、
世界から取り残されることにはならないのだろうか?
これに限らず、最近は様々な局面での米国の空回りが気になる。
『不都合な真実』。アル・ゴア元副大統領の講演の模様を
中心に映し出しながら、「地球温暖化防止」を訴える
ドキュメンタリー映画。
タイトルが意味するところの『不都合な真実』が、
誰にとって”不都合な真実”なのかは、
本作を見れば自ずと分かるようになっている。
今年のアカデミー賞は、まさに名匠マーティン・スコセッシ監督
の年だったが、同時にこの『不都合な真実』の年でもあった。
それはレッドカーペットにゴア氏が登場した時から始まっていた。
彼が夫人を伴って登場するや、人々の視線を一身に集めた。
授賞式が開幕してからも、環境問題に関心が高いことで知られる
レオナルド・ディカプリオと共に早々とステージに登場するなど、
他の長編ドキュメンタリー賞候補者とは端から別格の扱いだった。
これは、リベラル派が多いと言われるハリウッド映画界で、
ゴア氏が抜群の人気を誇っていることを示しているようだ。
そのゴア氏賞賛の模様をブラウン管を通して見る限り、
地球温暖化防止会議京都議定書を批准しなかった米国でも
いよいよ地球温暖化問題への意識が高まったかと
日本の多くの視聴者は感じたはずである。
しかし、それは錯覚に過ぎないのかもしれない。
『不都合な真実』のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞
の興奮も未だ冷めやらぬ先週、冷水を浴びせるような記事が
マスコミの登場した。
■「ゴア元副大統領の”不都合な真実”―電気使用量は一般家庭の20倍
テネシー州ナッシュビルにある部屋数20のゴアの邸宅の光熱費は
年に2万9,250ドル。テネシーのセンター・フォー・ポリシー・
リサーチの資料によると、ゴア家が昨年使用した22万1,000KWの
電気の年間使用量は、米国の平均家庭の約20倍にも上るという。
同センターのドリュー・ジョンソンさんは、
「生活の仕方を説いている氏ですが、ご自身はそのルールに
従っていませんね」とコメント。当のゴア氏の広報は、
「より効率良くエネルギーを使う方法を思索中」だと弁解。
ここで注意しなければならないのは、ゴア家と米国の一般家庭
とを単純比較することが果たして公正なのかどうかだろう。
一般家庭の定義も曖昧で、住宅規模も明記されていない。
調査をしたセンター・フォー・ポリシー・リサーチの
政治的立場も、この記事を読む限り不明である。
私はこの記事のことをテレビで知ったが、
国際弁護士であり、米国通と目されるコメンテーターも、
「これは、彼の活動を快く思わない保守派やエネルギー業界が、
ゴア潰しにかかったということでしょう」とコメントしていた。
「ゴア氏は昔から脇が甘く、攻撃の隙を与えてしまう」とも。
1月27日付サンケイ・エクスプレス紙でも、
映画『不都合な真実』に対する一部保守層の拒否反応が
記事の中で伝えられている。以下はその記事の抜粋。
米国西部の公立中学校が理科の教材として『不都合な真実』を
上映しようとしたところ、それを知った親から
「(温暖化防止に消極的な)米国を非難するような偏見に満ちた
映画を子供に見せるな」という抗議が地元の教育委員会に
寄せられた。これを受けた教委が「地球温暖化のように科学的
にも議論の分かれる問題を教材で扱う場合は事前の承認と、
異なる見解の紹介が必要」として、上映を中止させた。
また、制作者側がDVD5万枚を学校に寄付すると申し出たが、
米科学教師協会が「政治的に一方の側に肩入れしたくない」
と断ったとの報道がある。
対照的に、1月20日から本作が全国公開された日本では、
「学校などで広く使われるにふさわしい」と「文部科学省特選」
に選ばれている。
彼我の違いは一体何なのだろう?日本はよく言えば素直、
悪く言えば単純で、いささか深慮に欠ける国なのか?
米国がより慎重で、科学的論拠の正確さを追求する国なのか?
事実、「地球温暖化のメカニズムは解明されたわけではなく、
二酸化炭素の排出規制が必要とするゴア氏の論理には懐疑的
な人も多い」と先の記事にはあり、ゴア氏の主張そのものが
絶対的に正しいとは言えないとしている。
しかし議論の余地はあろうとも、地球温暖化は待ってくれない。
世界の科学者らも結束して、地球温暖化防止へ取り組もうと
している。今月1日には「国際極年」が正式に始まった。
これは温暖化の影響が最初に顕在化すると言われる極地の研究に
世界中で1万人を超す科学者が挑む企画で、世界60カ国以上の
研究者らが今後2年間かけ、謎の多い北極や南極に関する観測や
研究、啓発活動を国際協力で集中的に進めるらしい。
米国は科学的論拠や政治的立場を重んじるあまり、
世界から取り残されることにはならないのだろうか?
これに限らず、最近は様々な局面での米国の空回りが気になる。