はなこのアンテナ@無知の知

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手紙

2012年03月23日 | はなこ的考察―良いこと探し
最近はメールでのやりとりが主になってしまい、直筆での手紙のやりとりは少なくなってしまった。この傾向は、多くの人に見られるのではないだろうか?

年賀状でさえ、裏の定型の挨拶から表書きまで印刷で済ませてしまったりする(時々、表書きは毛筆で丁寧に書かれている方もいて、恐縮すると同時に、やはり数多ある年賀状の中でも印象が強く残る)。しかし、だからこそ、送る相手の顔を思い浮かべながら、ひとことでも手描きのメッセージを添えることが大事に思える。

その意味で、今年いただいた年賀状の中で特に印象に残ったのは、夫のかつての部下で、今は都立高校の教師として働く女性からの年賀状だ。既に彼女が転職してから何年も経っているけれど、年に1度の年賀状のやりとりだけは続いている。彼女は几帳面な筆跡で、

「お元気ですか?ますますご活躍のことと思います。私は何とか教師を続けています。○○(←会社名)時代、A(←夫の名)さんから教わったことが、どれほど役に立っているかわかりません。」

3行の中に私の夫への気遣いと自身の近況報告が過不足なく盛り込まれていて、上手いと思った。印刷の定型の挨拶文と家族写真と共に、2児の子育てをしつつ教職に励む彼女の日々の奮闘ぶりが伝わるようなメッセージだ。

そして、最後の一行には、妻として心を打たれた。転職してから何年も経って後の、この一行のさりげない感謝の言葉で、夫の仕事に対する真摯な姿勢が見てとれたと同時に、後進を育てる先輩としての役割をきちんと果たした夫の姿が目に浮かぶようだった。日頃、夫の仕事ぶりを目にする由のない妻の立場からすれば、こちらの方が感謝したいくらいだ。彼女にとって初めての社会人生活で、夫が先輩として伝えたことが、今もなお彼女の職業人生の中で役立っていることが何よりも嬉しく、誇らしい。

そして、こんなひと言を添え書きできる彼女も、その細やかな気遣いで自身が築いた素晴らしい人間関係の中で、きっと充実した人生を歩んでいる女性なんだろうなと思った。


最近、受け取った手紙で、これは印刷であったけれど、その内容に感銘を受けたものがもうひとつあった。それは40年来の友人からの「ご会葬御礼状」だ。

通常受け取る会葬の御礼状は、葬儀社が用意したであろう当たり障りのない定型文が多い。しかし、彼女から届いた御礼状は、父を早くに亡くし、母ひとり娘ひとりで育った彼女が、突然に逝った母への感謝と惜別の思いが詰まった手紙だった。彼女にしか書けない内容の御礼状だった。

それを目にした人々はおそらく、生前のお母さんの姿が鮮やかに思い出されたはずだ。それを読んで、哀しみと同時に温かな気持ちになれたはずだ。そして、そのような御礼状を書ける彼女の愛情深さと聡明さ、そんな彼女をひとりで育て上げた亡きお母さんの素晴らしさを改めて知ったはずだ。


私も今後どれだけの手紙を書くことになるかわからないが、拙いながらも、受け取る相手を思いつつ(その人にどんな言葉、思いを届けたいか真摯に考えて)、心を込めて、手紙を書き綴って行きたいと思う。
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