統計の数字は鵜呑みにはできない。しかし、それを読み解くことで、この国が抱える問題点が浮き上がって来る。
・2020年女性1,000人当たりの出生数は76.4人で、全国平均の74.6人を上回る
2023年に東京都の女性が生涯に産む子どもの数「合計特殊出生率」が、全国の都道府県で唯一1人を割り込んで0.99人となったことが伝えられたのは記憶に新しいところ。
ところが、この衝撃的な数字には、東京ならではの事情が潜んでいる。
合計特殊出生率は以下の通り、「分母」が未婚を含む15〜49歳(←出産可能年齢と想定)の女性の数となっている。
合計特殊出生率:
出生数/15〜49歳の女性(含未婚)
この分母の状況が、東京は他の自治体とは大きく異なるのだ。
東京都には進学や就職を機に地方から上京する女性が多く、彼女達の殆どが独身である。加えて、勉学や仕事に力点を置く人が上京する傾向が高い為、結婚や出産の年齢が高くなりがちだ。
そして、東京都は飲食店や娯楽施設の充実など、ひとりでも(楽しく)生きやすい環境が整っているため同世代にも独身者が多く、結婚圧力も親元にいるよりは少ない。だから勢い、30代40代でも未婚の女性は多くなる(男性も同様の傾向あり)。
つまり、分母が既婚女性➕都道府県の中でも圧倒的に数が多い独身女性で構成されているため、どうしても統計上、合計特殊出生率は低くなってしまう。
しかし、対象を「既婚女性」に絞ると、出生を巡る様相が一変する。
・過去10年間の出生数の減少率は2割程度で都道府県で最も緩やか
・財政力のある東京都の子育て支援は充実しており、共働きでかつ経済的余裕のある夫婦にとって東京は子育てがしやすく、彼らの子どもの数も多い傾向がある
つまり、東京都は「子どもを産み育てることのできる年齢層」の中でも、学生生活や独身生活を謳歌する単身者と、仕事も家庭生活も子育てもエンジンフル回転でこなすバリキャリのパワーカップルが多く住む場所なのだろう。
統計数値のパラドックスは他にもあって、合計特殊出生率は改善したのに、出生数そのものは減少している地方がある。
これも出産可能年齢の女性を分母とする合計特殊出生率の算出方法が引き起こしている。
つまり、分母となる出産可能年齢の女性が進学や就職を機に地元から転出し分母が小さくなるので、見かけ上、合計特殊出生率の数値が改善するのだ。出生数は確実に減少しているのに。
実際は少子化傾向にブレーキがかかったわけではないので、地方の衰退は止まらず、東京などの大都市圏との格差は広がる一方だ。
強固な中央集権体制が招いた東京一極集中と地方自治の弱体化は、やはり他国のように省庁の地方移転を含めた社会機能の分散と地方の自治権強化を図らないと解決しないような気がする。これは災害に強い国造り(国土強靭化?)にも直結する問題だ。
にも関わらず、「地方創生担当大臣」(内閣府)やら「こども家庭庁」(厚生労働省)やら、それらしい名前の役職や官庁を作ったはいいけれど、今のところ、それらがうまく機能しているようには見えない。「少子化対策」への政府の本気度が知りたいものだ。
参考:「日本経済新聞」2024年7月21日(日)1面『チャートは語る 出生率「東京0.99」別の顔』
(了)
ヌマンタさんの2つの着眼点、重要だと思います。まさに「今、そこにある危機」ですね。
未熟な親が、親としてより女や男であることを優先して、我が子を邪魔者扱いし虐待する事件が後を断ちません。
それに対して問題に気付きながらも児童相談所は中途半端な対応に止まり、その結果、幼い命が失われてしまう。
その原因のひとつは、児童相談所の職権の弱さと人手不足ですね。
米国のドラマを見ていると、児童保護が最優先で、児童相談所の職員はズカズカと住宅に踏み込む。親の言い分なんか殆ど聞かない。
あれぐらいの強引さがないと、虐待を受けている子ども達の命は守れないでしょう。児相の職権拡大など早急に法整備すれば良いのに。
私が支持している市会議員(2児の母親)は、市内の恵まれない子ども達への具体的なサポート策の運用を議会で提案しています。まずは身近なところから変えて行くしかない。
外国に出自を持つ子ども達のケアも大事ですね。以前、あるNPO法人がケアをしている外国籍の子ども達を、美術館に連れて来たことがありました。アジア、中南米を中心に様々の出自を持つ子ども達で、彼らと易しい日本語と英語を使って、作品を一緒に見て回ったことがあります。引率スタッフの皆さんから、活動の大変さを少しだけですが、聞いたことがあります。
愛国心はそもそこその国で生まれたら自ずと身につくものでもなく、その国でどれだけ大切に育てられたかだと思うんですよね。親が無力だったら、親に代わる誰かが保護者になって、子どもを大切に見守ったら良い。
そのためにも、日本に住む子ども達が分け隔てなく社会で慈しまれ、命を守られ、教育の機会を与えられるよう、国としてしっかり法整備する必要があると思います。
そう言えば、先の都知事選で小池さんが公約のひとつに無痛分娩費用の補助をあげていましたが、なんかズレてるなあと思いました。
陣痛が嫌だから子どもを産みたくないなんて本気で思っている人、いるんだろうか?それ以前に妊娠できないことに苦悩している人に、何らかの支援をすべきではと思いました。東京都は財政的に豊かだから、既に金銭的サポートは行なっているのかもしれないけれど。