はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

NO MAN’S  LAND~創造と破壊@仏大使館

2010年02月04日 | 文化・芸術(展覧会&講演会)
 大学で建築を学んでいると言う、息子の友人を通じて知った展覧会に、春休みに入った息子と行って来ました。南麻布にある旧フランス大使館(1957年にジョゼフ・ベルモンが設計)が取り壊される前に、その館内外を日仏アーティストの作品で埋め尽くした、最初で最後の展覧会。当初は11月26日(木)から1月31日(日)までの公開だったのが、好評につき2月18日(木)まで、会期が延長されたようです。

 下の写真、左が旧館(一部)の外観、右がすぐ隣に建てられた新館(昨年11月より使用)です。旧館は間もなく取り壊され、跡地には野村不動産のPROUDブランドのマンションが建てられるようです。土地の売却益で新館を建築したのでしょうか?もちろん、初めて入った旧フランス大使館。まさかこんなに古かったとは…意外でした。本国には築100年を超えた建築物がゴロゴロあるのでしょうけれど。



 ヴィジュアル・アート、ファッション、デザイン、建築、パフォーマンス(←今日はなかった)等、様々なジャンルの創作が館内外で展開されているのですが、その殆どが現地で制作され、今日も作品によってはアーティスト自身が現場にいて、まさに創作の最中でした。

 写真は、中島崇《the Beautiful,the Ugly -美しさと醜さ-》。「約2カ月の会期中に種が芽を出し生長、増殖、やがて枯れ衰退し、再び種を残す迄の過程を、紙を媒体にして表現するプロジェクト」とのこと。

 私達が見た時も部屋の隅で、ハサミと紙を手にしたアーティストが創作の手を休めて、自ら作品解説をしてくれました。今日の時点で、作品は部屋を飛び出し、屋外の壁にまで増殖していました。まさに現在進行形のアート。現在は生長、増殖の段階で、鮮やかで美しい色彩ですが、これが時間を経るにつれ変化して行くのでしょうか。私はもう足を運ぶことはないだろうけれど、誰かのブログを覗けば、その変化を目撃できるかもしれません。

 フランスと言うと、色遣いが印象的。例えばペールカラーを主体とした子ども服の色遣いを見ると、この国がいかに色彩を重んじ、幼い頃から繊細な色彩感覚を育てることに心を砕いているのかがわかるような気がします。

 国旗の配色も、歴史的背景があるとは言え、フランスならではのセンスを感じる。写真の作品の部屋に入って、ふと頭に浮かんだ言葉。「トリコロール!トリコロール!トリコロール!」~トリコロール!の三連打です(笑)。右の壁見て、左の壁見て、床を見て。

 上写真の細かな模様に見えるのは、おびただしい数のトリコロールの自転車。ツール・ド・フランスを連想させる。そして右写真の真ん中のトリコロールは、なんとバゲット。遊び心で、パンも国旗色に染めてしまう(笑)。「フランス万歳!」

 アートにかかれば、何気ない階段もポップに変身。元々あった階段端の黒の縁取りに、今回加えたのコントラストが効いています。その色の取り合わせに、思い浮かんだのはスタンダールの「赤と黒」。

 写真には写っていませんが、窓には、なぜか「鼻血」とのネオンサイン(笑)。トリコロールもそうでしたが、館内外至るところに遊び心満載で、見ていて飽きませんでした。間もなくこの世から消え去ろうとする歴史ある建築物に、こんな形の餞(はなむけ)。文化大国フランスのエスプリと言えるでしょうか。

  私は新婚旅行で訪ねたのを最初に、これまで通算3回、フランス(正確にはパリとベルサイユのみ)を訪ねたことがありますが、毎回不快な経験をしたせいか、以来もう長い間行っていません。とは言え、知人の中には何十回とフランスを訪ねた程、フランスが好きな人もいるので、魅力的な国には違いないと思うのです。

 私自身、世界の超大国・米国に対して公の場で堂々と毒づく、フランスの矜恃とも言うべき強さや、自国の文化に誇りを持ち、積極的に保護する文化大国としての在り方に一目を置いています。また、手厚い少子化対策や、充実した医療保障制度、そして過去に多くのリーダーを輩出しているエリート教育等、日本が見倣うべき点を多く持った国であることも確か。でも、過去のトラウマで再訪には二の足を踏むんだなあ…だからと言ってはなんですが、フランス国外で、その文化の素晴らしさを、アートや文学や映画等を通して、満喫させて貰っています。


 どこか懐かしく、楽しさで思わず口元がほころぶ。館内外を練り歩いていると、そんな気持ちになりました。そう、高校や大学の学園祭を見学しているような疑似体験なのです。

 写真の部屋には、美大時代が思い出されました。汚れた壁、油絵の具の匂い、描きかけの作品。描き疲れたら、外の景色をぼんやり眺めて一休み…そんな情景がフラッシュバックしました。



 レトロな佇まいが懐かしい…久しぶりに母校を訪ねたような錯覚に陥りました。



 開場は木、金、土、日のみ。午前10時より。入場無料です。

 「創造と破壊@フランス大使館―最初で最後の一般公開」に、足を運んでみてはいかがでしょうか?旧庁舎をアーティストの作品発表の場として提供し、一般の観覧者へ開放した、文化大国フランスの心意気が感じられると思いますよ♪

『NO MAN'S LAND』@フランス大使館公式サイト


 この門をくぐると、その先にはNO MAN'S LAND…



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