教壇前に立った リーダー格が怒鳴った。
「 弁当、やめーッ 」
機先を制された吾々は、慌てて弁当を片付けた。
「 今から、校歌を教えてやる!先に唄うからよく聞いとけッ!」
そう云って、
上級生全員で大声を出して唄いだした。
ヨドノカワモニハナカゲウツリテユウユウタルナガレメグレルアタリ
ソノナモユカシキワガミヤコジマフルキデントウカガヤクレキシ
ミヨワガボコウノスガタヲ
窓も開いていない密閉された鉄筋コンクリート造の教室。
そんなところで、40名が、有りっ丈の声を出して唄っている。
それはもう、やたら大声で怒鳴っている。 ( ・・・としか、聞えなかった )
そんなもん、何を唄っているのか分るものか。
上級生、歌い終わった。
リーダー格、
「 分かったかァ!! 」
「 分かりません!」 ・・反骨な奴が居た。
「 何ッ!! 」
・
恒例の伝統行事、
一級上・二年生に依る、
『 弁当食うの やめー 』 の、くだりである。
・・・リンク→力 満ちてり
呉津との出逢い
此処で、
「 分かりません!」 と、云って
反骨な奴が居た・・と、私を感嘆せしめた者こそ、誰あらん呉津。
・・と、私はそう信じている。
此は 素直な心持ちが、咄嗟に出たものではない。
普段から、こう謂う 類 たぐい には、レジスタンスする ・・・そう謂う為人なのであろう。
それはきっと、天性のものであろう。私にはセンセーショナルなものに感じた。
此が、私が彼に抱いた最初のイメージである。
1972年5月・修学旅行・・阿蘇山火口
立っている者全て一年生で同じクラス、杉本以外は 『 仲間達 』 のメンバー
前で・かがんでいるのが、古田・・住宅研究部で3 年間共にしたが、同じクラスになったことがない。
・・・リンク→貴ノ花の相撲を見たかったのです
杉本の髪型
彼は、ハイレベルで有名な進学校、天王寺中学出身、
どうして こんな学力の高い奴が同じクラスに居るのか。
やはり、中学の担任が 心配したのはこう謂うことだったのかと、この時思い知らされたのである。
そして、彼は 中々の論客であった。
肩まで伸ばした髪は彼のセンスを物語るもの、其は ひと際目を惹いた。
ところがしかし
高校三年生の修学旅行前のこと
彼は自慢の肩まで伸びた髪の毛を短くカットして現れたのである。 ( 写真 )
1972年5月・修学旅行・・阿蘇の旅館で
「 お前、どうしたんや その髪 ?」
「 土木の輩に、切れ 謂うて脅されてな 」
「 お前、それだけの理由で 切ったんか 」
隣の土木科の硬派に眼をつけられ、軟派だと絡まれたのである。
彼等は、"吾はバンカラ" の つもりなのである。
"切らねば きっと 天誅を下す" は 単なる脅し。なにが バンカラ なものか。
奴等は、自分等に無い スマートさを身につけた彼を 嫉みに想ったに違いない。
しかし彼は誰かの如く、レジスタンス しなかった。
「 そうや、普段偉そうに謂うとっても、俺は根性ないんや 」
と、サラッと答えたのである。
それは、何か知らん私の心に響いた。
「 こいつ、大人やな 」
そう想った。
咎める気持ちなど起るものか。
寧ろ、彼のいさぎよさに感心したのである。
・
反骨 と レジスタンス、大人の対応
理屈は述べまい
感じた儘を記したまでである