セミは、地中で3~17年間、幼虫の姿でひっそりと孤独に過ごした後に、
地上に出て成虫となると1週間から1か月で、その寿命を終えます。
自己のDNA(種)を残すためにパートナーを見つけるために
許されている時間は、ほんの僅かで、
「俺なんかモテないよ。」「拒否されるのが怖い。」、
「ああ振られてしまった。俺は駄目だあ。」等のように、
余計なことを考えて尻込みする時間も、落ち込む時間も与えられてはいません。
オスの成虫は、メスを呼ぶために全精力を傾けて大きな声で鳴き続けます。
この時の音量は、あの小さな体で周囲300mまで届くと言われていて、
人間のサイズに換算すると、ざっと9~10㎞離れた所まで
聞こえる音を発しているのだそうです。
面白いと言うのか、良く出来ているのが、
繁殖行動に許された時間は僅かであるものの、
セミの種類によって栄養を摂取できる樹が違っていることで
同じ樹に同じ種のセミが集まり効率よく恋愛ができるのだそうです。
そんな命がけの恋愛に与えられた貴重な時間を、
毎年、1~2匹のセミが、私の部屋のベランダの金属にしがみついて
懸命に鳴くセミが現れます。
自分が生まれ育った樹木の縄張り争いに負けて追い出されたのか、
それとも、かつて人類が新しい陸地を求め、
小舟に乗って大海に漕ぎ出したのと同じ開拓者精神の持ち主なのか。
意思の疎通が出来るなら聞いてみたい。
「君、それで大丈夫なのか?」