脳に器質的な問題が無い限り、
誰しもが施療に役立つレベルの催眠状態に
至る能力を有しています。
なのですが、以前にも書かせて頂いた
催眠状態に至ることを妨げる三大要因によって
初回の催眠誘導において、
被験者が十分な催眠状態に
到達しないことがあります。
そのような場合に、次回以降の施療を
被験者を催眠に誘導することを優先するのも
一つの選択としてあります。
三大要因を
誘導者の戦略的な取り組みが功を奏したり、
幾度か誘導を受けることで
被験者の被暗示性が亢進したり、
被験者の内側で自然と変化が起きたりすると、
十分な催眠状態に到達します。
被験者からの依頼が、
催眠を一度体験してみたいであったなら
催眠に誘導することに主眼を置いた
取り組みを行うのは当然なのですが、
私の所に訪れて頂く多くの方は、
心の問題を改善、解決することが目的であり、
そのための手段として
催眠を希望される方が殆どです。
催眠は、施療において有効な手段なのですが、
催眠に入りさえすれば全てが解決する訳では無く、
カウンセリングや心理療法の効果を
より高めてくれる優れた道具でしかありません。
数回の施療機会で被験者が十分な催眠体験を
得られることが約束されていたとしたなら
毎回の施療の機会に催眠誘導に主眼をおいて
まずは催眠に入りましょうで良いとは思うのですが、
それは約束されていません。
誘導者に後2,3回の誘導でとの感触があっても
それは100%のものではないので、
二回目の誘導で到達するかもしれませんし、
10回以上の誘導を要するかもしれません。
誘導回数が5回以上ともなると、
手段だったはずの催眠が、
まるで目的になっているかのように見えてきます。
なので、私の場合、
被験者の反応の程度にもよるのですが、
催眠誘導は一旦、横に置いて、
本来の目的、心の問題、悩みの改善に
取り組むようにしています。
何故ならば、被験者が催眠状態に達するのに
3回、4回程度であるなら
まだ取り組むだけの価値はあるのですが、
それ以上になるとなると、
その分の施療の機会を
心の問題や悩みの改善にあてた方が
効率的だと考えています。