世界の陸上界も先日15,16日のダイヤモンドリーグ・ファイナル(米ユージン)をもって今年のトラック&フィールド(T&F)シーズンが実質終了。一方弊社の同シーズンサポート業務は先の9月2日DL中国厦門大会(幅跳び・秦澄美鈴選手が出場)が最後。1月からの約8ヶ月間でT&F約25大会、のべ60名以上の日本人選手をサポートさせて頂きました。
そして先日の記事でも触れたとおり幾つかのハプニングにも見舞われたDL厦門大会。中でも厄介だったのがスパイク・ピンの問題。試合前日夕方のテクニカルミーティングで主催者スタッフのひとり(中国人)から「秦選手持参のスパイクピン形状が大会規定に違反。よってそのピンのは使用NG」と、現地で対応の弊社帯同スタッフから別業務でアメリカにいる私に連絡が入りました。
そこで日本にいる秦選手のコーチ陣らと連携し対応したことは、
・主催者への状況確認・・ピンの形状の何が違反なのか・大会規定の細部確認
・WA規定の内容確認。更には厦門大会の独自ルールがあるのか否か。ある場合はその内容(・・結局独自ルールはなしと判明)
・先のブダペスト世界陸上時の状況確認・・秦選手の場合、世陸時に同ピンの審査、使用は特に問題なかった
の3点
ですが、実は先の世界陸上時、この形状のピンを使用していた別の日本人選手複数名が世陸主催者側の誤った判断で規定違反とみなされ、試合直前に別の型のピンへの交換を余儀なくされた事件がありました。私がそのニュースを知ったのはちょうどこの厦門でのスパイクピン問題の対応をしていた時。日頃使用しているピンが大事な試合時に使用出来ないとなるとパフォーマンスやメンタル面にも影響を及ぼすので選手にとっては深刻な問題です。
色々調べていく中で、規定ではピンの幅部分が4ミリ以内ならその形状に関係なくOK(写真参照)だが、今回大会主催者スタッフのひとりが「規定違反」と判断したのはこの形状(二段平行ピン)が日本の大会ではポピュラー、そして多くの日本人選手が利用しているものの海外ではあまり見られない、また海外選手があまり使わない形状のピンであることから、主催者スタッフが(きちんと大会規定の細部と照らし合わせて確認することなく)安易に違反と判断した可能性が大。
一方、今大会主催者中心スタッフの1人に私の知人でもあるオランダ人女性AR(代理人)がいたことから彼女にも直接連絡。上記状況を伝え、その上で実際のピン形状やサイズが規定内であることを証明する写真も用意して抗議。一方何らかの理由でこちらの主張が受け入れてもらえなかった場合、このAR(彼女もこの大会に複数の選手を派遣)に他選手から予備のピンを秦選手用に集め貸してもらえるよう打診。万一に備えました。
結局その後、当初秦選手持参のピン形状(二段平行型)は使用OKということになり事なきを得ましたが、最初「規定違反」の報をもらった時点では、全く予期せぬ事態だっただけに、試合迄24時間を切っている中で事態の解決を図らなければいけない状況はまあそれなりのプレッシャーがありました。
今回改めて感じたこととして海外大会では、
・日本での「当たり前」が通用しないことは良くある。たとえ自分たちに非がなかったとしても。。。
・そういった場合の備えを常に心がけておくこと(今回の場合なら試合時使用する用具の規定の確認やそれを証明する資料の準備など)。もちろんこれら備えをしても不測の事態が完全になくなることはありませんが、何もしないよりは断然マシ
・これら状況が起こった際に対処できる体制構築(選手、コーチ陣、AR、大会主催者との連携体制)
・更には何となく心配や不安事がある場合は早めに確かなルートで調べ明確化しておく
の4点
(何かあっても、自分たちが正しいと思うことを論理的に説明主張できる準備をしておくことが重要)
あとは普段慣れしている日本の試合でも上記を意識して行動することが大切(秦選手陣営がそうしていなかったという訳ではない)。これにより海外での不測の事態に対する心の準備、リスク軽減、落ち着いて対処できる可能性がより高まるはず。そしてやはり勝手の違う海外での試合や合宿で経験を積むことは選手、コーチ、そしてAR(私も含め)にとって大切だと再認識した今大会でした
話しは変わりますが、今大会前に福島原発処理水の対応を巡り日中関係悪化の報道が多く見受けられていたこともあり、(それとは全く関係ないにせよ)主催者や厦門の人たちの秦選手や弊社スタッフに対する接し方に少し不安と神経をとがらせていた部分は正直ありました。ところが現地からの報告では、試合時にスタンドからアジアチャンピオンである秦選手に声援(それも名前を呼んで)を送る中国の観客がいたり、この大会に参加していた中国人選手が秦選手との写真撮影を求めてくる場面もあったりと、、、これには私も驚いたと同時に、国や政治、それに付随する複雑な状況・問題を越えて人と人を繋げる力がスポーツ、そしてトップアスリートにはあるんだなと改めて強く感じました。遠征終了まで色々ありましたが秦選手、そして関わったスタッフと共に多くのことを学び、一人ひとりが大きな経験を得ることができたDL厦門大会でした。
📷インプレスランニング
柳原 元のTwitter
柳原 元のInstagram
そして先日の記事でも触れたとおり幾つかのハプニングにも見舞われたDL厦門大会。中でも厄介だったのがスパイク・ピンの問題。試合前日夕方のテクニカルミーティングで主催者スタッフのひとり(中国人)から「秦選手持参のスパイクピン形状が大会規定に違反。よってそのピンのは使用NG」と、現地で対応の弊社帯同スタッフから別業務でアメリカにいる私に連絡が入りました。
そこで日本にいる秦選手のコーチ陣らと連携し対応したことは、
・主催者への状況確認・・ピンの形状の何が違反なのか・大会規定の細部確認
・WA規定の内容確認。更には厦門大会の独自ルールがあるのか否か。ある場合はその内容(・・結局独自ルールはなしと判明)
・先のブダペスト世界陸上時の状況確認・・秦選手の場合、世陸時に同ピンの審査、使用は特に問題なかった
の3点
ですが、実は先の世界陸上時、この形状のピンを使用していた別の日本人選手複数名が世陸主催者側の誤った判断で規定違反とみなされ、試合直前に別の型のピンへの交換を余儀なくされた事件がありました。私がそのニュースを知ったのはちょうどこの厦門でのスパイクピン問題の対応をしていた時。日頃使用しているピンが大事な試合時に使用出来ないとなるとパフォーマンスやメンタル面にも影響を及ぼすので選手にとっては深刻な問題です。
色々調べていく中で、規定ではピンの幅部分が4ミリ以内ならその形状に関係なくOK(写真参照)だが、今回大会主催者スタッフのひとりが「規定違反」と判断したのはこの形状(二段平行ピン)が日本の大会ではポピュラー、そして多くの日本人選手が利用しているものの海外ではあまり見られない、また海外選手があまり使わない形状のピンであることから、主催者スタッフが(きちんと大会規定の細部と照らし合わせて確認することなく)安易に違反と判断した可能性が大。
一方、今大会主催者中心スタッフの1人に私の知人でもあるオランダ人女性AR(代理人)がいたことから彼女にも直接連絡。上記状況を伝え、その上で実際のピン形状やサイズが規定内であることを証明する写真も用意して抗議。一方何らかの理由でこちらの主張が受け入れてもらえなかった場合、このAR(彼女もこの大会に複数の選手を派遣)に他選手から予備のピンを秦選手用に集め貸してもらえるよう打診。万一に備えました。
結局その後、当初秦選手持参のピン形状(二段平行型)は使用OKということになり事なきを得ましたが、最初「規定違反」の報をもらった時点では、全く予期せぬ事態だっただけに、試合迄24時間を切っている中で事態の解決を図らなければいけない状況はまあそれなりのプレッシャーがありました。
今回改めて感じたこととして海外大会では、
・日本での「当たり前」が通用しないことは良くある。たとえ自分たちに非がなかったとしても。。。
・そういった場合の備えを常に心がけておくこと(今回の場合なら試合時使用する用具の規定の確認やそれを証明する資料の準備など)。もちろんこれら備えをしても不測の事態が完全になくなることはありませんが、何もしないよりは断然マシ
・これら状況が起こった際に対処できる体制構築(選手、コーチ陣、AR、大会主催者との連携体制)
・更には何となく心配や不安事がある場合は早めに確かなルートで調べ明確化しておく
の4点
(何かあっても、自分たちが正しいと思うことを論理的に説明主張できる準備をしておくことが重要)
あとは普段慣れしている日本の試合でも上記を意識して行動することが大切(秦選手陣営がそうしていなかったという訳ではない)。これにより海外での不測の事態に対する心の準備、リスク軽減、落ち着いて対処できる可能性がより高まるはず。そしてやはり勝手の違う海外での試合や合宿で経験を積むことは選手、コーチ、そしてAR(私も含め)にとって大切だと再認識した今大会でした
話しは変わりますが、今大会前に福島原発処理水の対応を巡り日中関係悪化の報道が多く見受けられていたこともあり、(それとは全く関係ないにせよ)主催者や厦門の人たちの秦選手や弊社スタッフに対する接し方に少し不安と神経をとがらせていた部分は正直ありました。ところが現地からの報告では、試合時にスタンドからアジアチャンピオンである秦選手に声援(それも名前を呼んで)を送る中国の観客がいたり、この大会に参加していた中国人選手が秦選手との写真撮影を求めてくる場面もあったりと、、、これには私も驚いたと同時に、国や政治、それに付随する複雑な状況・問題を越えて人と人を繋げる力がスポーツ、そしてトップアスリートにはあるんだなと改めて強く感じました。遠征終了まで色々ありましたが秦選手、そして関わったスタッフと共に多くのことを学び、一人ひとりが大きな経験を得ることができたDL厦門大会でした。
📷インプレスランニング
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