メメント・モリ

このブログでは司法試験関連の受験日記・講座・書評について色々掲載していきたいと思います。

問題集:司法試験短答過去問肢別本 辰巳法律研究所

2004-09-30 22:16:06 | 司法試験:問題集
 今日は肢別本の紹介です。
 肢別本は賛否両論で「使うな」という人と「使ってよかった」という人と様々です。要は使い方次第だということです。
 とある1回合格者は「肢別本なんか要らない、択一式受験六法を100回読んで覚えればいい!」といっていましたが、こういう意見は参考になりませんね(覚えられるかっ!)。

 肢別本がもっとも威力を発揮するのは民法です。民法はもっとも知識量が多いので、手っ取り早く本試験の既出知識を肢別本で暗記できるからです。
 たまに「肢別本で今年は14点取れた」とかいうような意見・報告を目にしますが、これはアテにしてはいけません。こういう意見を聞いた何も知らない初学者は、あたかも肢別本の肢がそのまま出るかのようなイメージを持つでしょうが、現在そのような状況は少ないです。肢がそのまま出るのではなく、過去に聞かれた判例、条文、論点やそれらに付随するものが形を代えて聞かれることを取り上げて、何点取れるという議論をしているので注意が必要です。したがって、肢別本でよく聞かれる知識領域については、教科書に戻って定義・論点・判例を確認する丁寧な勉強が効果的です。
 
 とはいえ、肢別本はいつでもどこでも手軽に択一の演習ができるので、使い方によっては教科書ベタ読みよりよっぽど有意義に時間が使えます。特に、民法は知識の拡充が得点力に直結するので時間が許すなら使うべきでしょう。
 ただし、そのまま使うと量が多すぎます。当たり前の知識・常識的な肢はどんどん削って以後見ないように消しましょう。なお、ここで注意が必要なのが「常識」の尺度です。学習し始めの頃は感覚的に結論を判断できたことも、数々の条文論点判例などで法律的な価値基準を学んだあとでは結論が変わることもしばしばあるからです。したがって、常識的に正解できると考える肢も、理由があやふやなら、しばし保留してまたあとで確認しましょう。

 また、2度目からはその結論がどの条文、判例といった理由から導かれるのか、を覚えておきましょう。余り理由がはっきりしない場合にはその肢は不要です。

 憲法については現在の傾向からすれば、肢別本はあまり効果ありません。しかし、憲法は傾向がコロコロ変わりますので、保険の意味で軽くといておくといいかも知れません(私の場合、その保険は5年間効果なしでしたが、平成13年の知識型なら肢別が威力を発揮してくれるでしょう)。

 刑法はいらない。

講師:永山在浩先生(辰巳法律研究所)

2004-09-28 20:21:36 | 司法試験:講師
 ご存知辰巳の名物講師、10年連続で論文に落ちつづけた苦労人です。優等生シリーズはベテラン・初学者を問わず、大変人気ですが、顔を公表しないためその素性は謎に包まれています。

 私は、関西辰巳でのガイダンスを3回ほど受講しました。意外に感じたのですが、先生は講義が大変上手でした。塾講師経験が長いらしく、抑揚のある語り口で、いままで聞いた司法試験講師の中でもベスト3にはいります。
 おまけに、世話焼きな方で、講義後質問をする受験生にも親切に答えてくださいました。(「ロースクールってどうなるんですかぁ~」「××の基本書でも民法だいじょうぶですかぁ~」)といったしょうもない質問にも親身になって答えていました。先生親切すぎ・・・
 先生の主要な講義は書籍化されますが、講義をあえて聞く価値があると思います。(私の求めるカンフル剤としての効き目もバッチリです)

 「10年も受からなかった人なんだから、要するに要領の悪い人なんだろ」という先入観をもっていらっしゃる方も多いと思います。しかし、私が講義を聞いたり先生の書籍を読んだ印象ではむしろ事務処理能力などの頭の回転はいい方だと感じました。実際、先生は刑法と手形が得意科目だとおっしゃっていたので、そういう面では司法試験に向いているのでしょう。
 ただ、何かの講義で言っていたのですが、「高校のあるとき、これからは英語を一切勉強しないと決めた」とか「ここの論証の説明に1月悩んだ」など、かなりこだわりの強い面があることを知りました。そういう強いこだわりのために、論文試験の答案のスタイルに悩んだのでしょうね。

 勉強が進んでくると、いろいろな知識・原則例外を知るので、ひとこと何か書くにしても「必ずしもそうとは限らない」など、自分の中での葛藤が増えてきます。そうなってくると、余り重要でない知識や例外は無視して切り捨てる必要があります。そこで、ジレンマが生じるのではないでしょうか。先生はそういう割り切りを出来ない、というところがあったんではないでしょうか。かくいう私もそのタイプでした。
 
 先生は毎年本試験問題を解いて、年末年始は再現答案と成績の相関を調べつづけるらしいです。ここが、普通の予備校講師と全然違うところで、受験生から支持される所以だと思います。全く頭が下がります。
 邪推になりますが、10年司法試験に落ちつづけた永山先生は、10年かけて司法試験に復讐しつづけていたのではないでしょうか(いい意味で、ですが)。
 とすると、平成6年の合格からもう10年たったので、本当はもうやめたいけど、受験生の懇願でやむなく講師を続けているのでしょうね(なんとなく,最近そういう雰囲気があります)。

 なお、私が勉強を始めた平成11年ころは先生の方法論は余りもてはやされていませんでしたが、最近は受験生の多数派にさえなっているようですね。もはやベテランが最後にすがるものではなくなってきたようです。優等生シリーズなどの内容はまた今後書き込みます。

問題集:新実例刑事訴訟法

2004-09-27 09:17:37 | 司法試験:問題集
 事例形式で刑訴の応用を学ぶ本で全3冊。青林書院から発売されています。
 この本が、司法試験のネタ本として本格的に使われ始めたのは平成12年から。
 問題を参照していただければわかりますが、12年1問の「必要な処分」13年1問の「フロッピーの包括差押」同年2問小問一の「記憶喪失と2号前段」14年1問の「体内麻薬の押収」2問の「訴因変更」15年1問の「写真撮影」(これはかする程度)16年2問小問二の「違法証拠の主張適格」など、相当数の事例・論点が引用されています。 出題可能性という点では既に紹介した本をはるかに凌いでいます。

 恥ずかしながら、私は平成14年の刑訴でパニックになってGをとってしまい、得意のはずの刑訴に対して恐怖感を抱いてしまいました。そこで、日練の講義中で紹介されたこの本を借りて読んでみると、14年の問題がほぼそのまま載っていることに驚きました。冬から春にかけてこの本を一通り読みました。

 もっとも、前述したように演習書は解答例がないため、読みこなすのに手間がかかります。しかも3分冊でボリュームも相当ある(東大出版の基本書サイズ)ため、ヘタをすれば刑訴はこれに掛かりっきりになる危険があります。

 さらに、私は14年の麻薬のインパクトからこの本に注目しましたが、本当にこの本を読まないと差がつくのか、といえばそうではないと思います。12,13年,14年2問の的中論点は百選判例で判例百選をちゃんと読んでいれば意味はわかる問題でした。15年以降はこの本からズバリ(この本しか)というような論点・事例は出題されなくなってきていると考えています。
 
 むしろ、中途半端に読み流すと引き込みの危険が増すだけです。16年の第2問も、主張適格の問題が的中したという考えもあるでしょうが、これはあえてこの問題を持ってくるまでもなく、他の要件「特信状況」で事例解決できるのでいらない論点といえます。せいぜい加点事由ではないでしょうか。

 自戒の念を込めて言いますが、本試験でわからない問題に対処できなかった経験から、ネタ本を探し、出題予想をすることは、必ずしも自分にとって良い結果をもたらさないことがあります。
 問題に正面から向き合わず、そいつの出所を頭の中で検索すると「似て非なるもの」を引き出してくる危険がある。それよりも、普段から過去問や良問を素材に「問題文が何を書いてほしいのか」を徹底的に追及する勉強をした方がよっぽど本試験の難問対策になると思います。ただ、事例を知らないと適切な論点抽出ができないので、百選に載っている事例に関しては、すべて論点抽出をしておいたほうがいいです。これは出題予想というより、刑訴の基礎的な学習内容です。(私が14年刑訴で酷い点を取ったのは、ここを怠ったからです)。

 結論をいうと、この本をネタ探しとして読むことはおすすめしません。刑訴が好きで、教科書より深く知りたい、という趣味の領域ならば、いい本といえますが。

問題集:演習刑法(木村光江)

2004-09-25 17:51:14 | 司法試験:問題集
 現司法試験委員木村光江さんの演習書です。この本の画期的なところは解答例がついているところです。

 したがって、解答例がないと答案のイメージが湧かない初中級の受験生でも、違和感なく使えます。しかも解説がわかりやすいし、試験委員であるという安心感もある。問題も平成13年頃までの比較的新しい重要判例を下に作られているので、出題予想という点でも優れています。
 また、結果無価値といっても、行為無価値と解答内容が大きく異なるのは因果と違法性の問題くらいなので、通説の方でも十分使えます。

 但し、注意しなければいけないのは、解答例がいわゆる司法試験受験生の大多数が書くようなフォームではないということです。大多数の受験生は刑法では構成要件・違法・責任の順に書き、客観事情主観事情を分け、可能な限り条文趣旨を挙げつつ文言を解釈します。しかし、演習刑法の答案は、いわゆる論点をクローズアップした形で、条文や体系といったフォームはあまり重視していません。

 数々の合格答案を研究して、演習刑法のようなスタイルでも受かる、という確信を持っている方は別として,合格答案のイメージがない方が、この本を読んで「試験委員のお墨付きなのだから、こういう答案を書けば本試験も合格だ」と即断するのは非常に危険なことです。
 解答例は、あくまで「参考」答案です。そのまま書けば本試験合格ということは疑ってかかった方がいいです。

 余談になりますが、この本のうちの3割以上は私にとって見知った問題でした。というのも、先生が過去に解説された日曜答練の問題がそのまま載っているからです。おそらく、大学答練や日練の過去問を編集したものなのでしょう。

問題集:分析と展開・基礎演習民法

2004-09-24 22:52:20 | 司法試験:問題集
 14,15年と民法が足を引っ張ったので、今年の民法対策としてこの二冊を選びました。

 まず、分析と展開の方は、割と見馴れた問題が多く、とりたてて新たにストックするような問題は見当たりませんでした。債務不履行責任の拡大のように、論点を解説するためだけの事例もあり、あえて検討の必要がない問題もあります。 
 なお、Ⅱについては今年改訂がなされました。債権総論を中心に新しい問題が収録されていますが、将来債権の譲渡など良くある問題ですので、取り立ててこの問題集を求める必要はありません。 
 大部分は予備校の予想問題に引用されているので、いまやこの本を読むことで大きなアドバンテージは得られないのではないでしょうか。


 次に、基礎演習民法の方は、分析と展開よりも、事例の応用性が高く、頭をひねる問題が多いです。50問前後でボリュームもかなりあります。全然基礎じゃありません。ただ、明大平野教授の問題ほどは難しくないです(あれは細かすぎとの意見もありますが)。 解説がかなりあっさりの部分もありますので、知識のインプットとしては使えません。あくまで事例に対する法律構成を参考にする本と位置付けましょう。

 結論を言うと、どちらも中上級者向けの本ですが、解くべき問題がなくもてあましている方以外には私はおすすめしません。 こういうものより先に、民法なら貞友ライブや伊藤ライブなどの過去問をしっかり検討することをおすすめします。

 なお、典型でない民法問題をお探しの方には、受験新法の誌上答練Bコースを(やや)おすすめします。バックナンバーを大学図書館などで探し、該当箇所をコピーして解きまくりましょう。大阪ですと、西長堀の市立図書館にあります(カウンター請求のこと、ハイローヤーもあり)。 但し、こちらにも解答例はありません。解説を読んで答案を想起できないと意味ありません。

雑談:演習書(学者作成問題集)の効用

2004-09-23 12:36:30 | 司法試験:雑談
 基本書主義の方は、予備校の問題集は信用できない!という方もおられるでしょう。また、本試験のネタ本だといわれる各種の演習書を、秋からの機会に読んでみようかという方もおられるでしょう。
 私はいわゆる演習書は、分析と展開・基礎演習民法、演習刑法、新実例刑事訴訟法を読みましたので、これらの本から得られた経験についてお話します。

 いわゆる演習書が予備校のものともっとも違うのは、解答例がないということです。ですので、問題を読んで答案構成しても、それが正しいのか、どう直せばいいのかを自らが判断できないと意味がありません。私見ですが、このレベルに到達するには論文本試験で平均点以上が取れる程度の実力が必要でしょう。もし、読み流すだけで、構成その他問題を深く検討せずに読み流すなら、百害あって一理なしです。引き込みの可能性が増すだけです。

 また、各論点についても自分の使う教科書の説と同じとは限らないので、説の違いや帰結をはっきり解っていないと、なぜ説明が違ってくるのか、わけがわからなくなってきます。
 実際私がこれらの本に手を出したのは、去年論文試験にAで落ちてからです。予備校の問題をたくさんこなしていない人は、あえて手を出すことはないでしょう。

 読んだだけでその記述の意味を理解して、かつ本試験用にその場でFIX出来る秀才と違い、我々凡人が本試験で演習書の中身を理解し、その効果を発揮するためには、(1)答案構成した上でその間違いを教科書・解説と照らし合わせて修正し(2)丁寧めの構成を残して本番で出題された場合どう表現するかを予め考えておく必要があります。これをするには、専業受験生でも1冊1ヶ月程度かかるのではないでしょうか。
 もっとも、演習書の問題とほぼ似た問題を持っている場合や、一部のみ見慣れない聞き方をされている場合にはそのエッセンスだけを教科書や自作の問題集に転記すればいいです。私の場合、演習書にたどり着くまでに3000問以上予備校問題を解いていたので、後者の手法が多かったです。

 自分の使おうとする演習書がそこまでする価値があるのか、よく考えてから読みましょう。予備校の予想問題でもかなりの部分が借用されていますので、まずは予備校問題を潰すことから考えてはいかがでしょうか。

 明日からは、具体的に私が使った演習書の内容をご紹介いたします。

講座:合格者講義の選び方

2004-09-21 18:34:33 | 司法試験:講座
 先に論文式受験六法について解説いたしましたので、ここで合格者講義の選び方をちょっと気が早いですが、ご説明いたします。

 合格者は当然ですが、法律の講義に関しては素人です。したがって、講義の技術的な巧拙はあまり重視しない方がいいでしょう。解らないところは講義後に質問しましょう。その意味でライブで受講するのができれば望ましいと思われます。
 一般的に講義を受けるような合格者は塾講師か「教え魔」である可能性が高いです。講義の内容に関わらず、受験全般のことに関しても、こちらが丁寧にたずねれば倍にして返してくれます。また、合格した人と生で触れ合えることで大変な刺激になります。 講義がイマイチそうでも、やる気がありそうな合格者だったら、質問専用として受講してもいいかもしれません。受講生が少なければ少ないほど独占できます。

 講義がヘタでも、レジュメのサンプルをチェックしましょう。出来がいいものはそれだけで受ける価値があるかもしれません。直近の合格者の方法論は、予備校講師や本では入手できない貴重な情報です。

 さらに、合格者の中には、講師経験が豊富なのか、予備校の専任講師顔負けの名講義をされる方もおられます。彼らは長年の経験でくたびれた弁護士先生と違い、やる気にあふれています。こういう講義はやはり聞かなければ意味がありません。

 とはいえ、辰巳・セミナー・伊藤塾と合格者講義は数多くあり、やみくもに受講していては時間も費用も無駄になってしまいます。そこで、ガイダンスのテープを入手して、通勤通学の時間にチェックしましょう。
 なお、年明け早々からガイダンスにわざわざ出席する人もいますが、役立つかどうか解らない講義に貴重な時間を割く必要はありません。よっぽど勉強にやる気がでない人以外は、少々費用が掛かってもガイダンステープを入手しましょう。聞き終わったら即ヤフオクで売れば、出費も押さえられるかもしれません。

講座:論文式受験六法(2000年度版)辰巳法律研究所

2004-09-21 18:14:49 | 司法試験:講座
 毎年恒例の辰巳合格者講義シリーズの内、基幹講座的役割を果たしている講義です。講義の内容は、各科目の答案作成法、ポイント、定義趣旨要件効果、論証例などのサブノート的教材を使って、各項目を説明していく形式でした。

 現在のスタイルがどうなのかわかりませんが,2000年度(99年合格者の講義)の講義では、レジュメは各科目の講師の手作りでした。したがって、出来の良し悪しが各科目の講師の質にかなり影響されます。講義時間は各科目12時間で行うので、当然はじかれる箇所はあります。網羅的に解説しようとする科目もありましたが、必然的にレジュメ棒読みの退屈なものになりました。

 当時わたしは初受験で、論文の書き方も解らず不安を感じていました。この講義の憲民刑を担当されていた「表宏機」さんという方の講義はすばらしかった。とてもやさしい語り口で、長くなりがちな論証を「たったこれだけで表現できるのか」という短いものを呈示してくださり、その後の論証例を作る際の参考になりました。また、特に憲刑に関しては答案の書き方の鉄則を定型化してくださって、それ以後公法系の科目は得意になりました。公法系で安定してAが取れるようになったのは彼のおかげだと思っています。

 憲民刑に気を良くした私は、その後商訴も購入しましたがこれはあまり効果がなかった。憲民刑のように、総論として講師のポリシーを述べ、その後具体的検討に入るのではなく、各論点についてそれなりの解説を述べるに過ぎないので、まとめ講義としての意味しかありませんでした。
 特に商法はひどかった。キャリア職の風格ある女性講師なのですが、ただレジュメを棒読みするだけで全く面白くない。前にも言った通り、私は知識インプットとして講義を使わないので、これは時間の無駄と感じ、途中で聞くのを止めました。

 おそらく、論文式受験六法に関しては「表講師」のような人は珍しい例であって、大多数は各科目のまとめ講義なのだろうと思われます。その意味で、積極的に講義から何か新しいものを会得しよう、と考える方には、あまりおすすめできる講義ではないのかもしれません。 
 ただ、講義の内容・質は講師によって大きく変化します。今から通信講義で受講を検討される方は、予め辰巳に講義形態やレジュメの内容などを問い合わせた方がいいでしょう。全科目受講すれば10万円ちかくなりますので。

 なお、いくつか合格者講義を受講した経験からいえるのですが、講義時間や量の少ない講義は料金が安いですが,効果もそれなりだと考えてもらって結構だと思います。
 複雑な法律の解釈を丁寧に教えようとすると、ある程度の時間がかかります。また、法律には例外が多くあるので,答案の作成技術もひとことふたことでは説明しきれないからです。

 ただし、例外として、答案の再現検討講義は使いようによっては短い講義でも高い効果が得られます。ただし、この場合、受講生自身がある程度答案の良し悪しを判断できる能力を備えている必要があります。

講座:憲法判例百選スピードマスター(棟居快行) 辰巳法律研究所

2004-09-17 00:16:41 | 司法試験:講座
 成城大学教授の棟居快行(むねすえとしゆき)先生が、百選を解説してくださる講義でした。確か2001年頃の講義で、全12時間あったと思います。

 大学教授なので、試験上のポイントや論証例などは説明しません。代わりに、各判例の争点を一言で書いたレジュメを使って、その答えが判旨のどこに現れているのかを解説していきます。全ての判例に触れられることはなく、重要なものを2,30詳しく、あとは流す程度でした。
 網羅的に百選の事案と争点を、講義だけでマスターできる!と期待して買ったひとはガックリしたと思います。

 しかし、私にとってこの講義は聞いてよかった。棟居先生は説明が非常にくだけていて(悪く言えば下品なのでしょうか)、憲法という高尚な科目の説明を非常に卑近な例を用いて紹介してくださいました。また、かなりニヒリストなのも棟居先生の特徴です。それまで、憲法というものに対して何か胡散臭さを感じていた私は、目からウロコが落ちた思いでした。
 人権・平和一辺倒でなく、一歩引いた目で個人の尊厳や統治システムを眺める先生の姿勢に感銘をうけ、講義後先生のLIVE過去問講義を読んで、私は憲法が好きになりました。

 好きになると、少し勉強が楽になるので、それから憲法は得意科目となりました。先生の講義の内容をエッセンスだけ言うと「最高裁判例を優秀答案として、どのように事例を解決しているか、を見ろ」「事案から、争点を抽出した上でその答えを判旨から探せ」だったと思います。

 なお、棟居先生は辰巳の加藤晋介先生の親友らしいですが、その思考というか、いうことがそっくりでした。テンションの上がらない加藤先生といった感じでしょうか。毒舌ぶりもすごいです。抽象的権利の説明に、当時話題だった乙武君を例に出して、教室がドッ引きになったのはかなり衝撃的でした。先生も直後に謝りましたが。

 興味のある方は「憲法フィールドノート」も読んでみてください。どういう人権が現実に問題になって、訴訟で取り上げられるまでどういう経過を辿るか、というジャーナリズム的アプローチがなされていて、おもしろいですよ。
 


司法試験受験生のためのビジネス実務法務

2004-09-15 22:22:05 | 司法試験:雑談
 ビジネス実務法務検定は、簿記と同じく、商工会議所が主催となって作られた民間資格です。3級から1級まであり、1級は論文試験ですが、受験資格として2級の合格資格が必要になります。
 余りメジャーな資格ではなく、とったからといって世間的にバリューがあるものでは余りありません。もともと企業法務部の方が仕事ついでに取る資格のようなので、あくまで実務経験に裏付けられないと、一般企業は評価しないでしょう。

 3級はかんたんなので、司法試験受験生としては2級を目指すのがよろしいかと思います。科目別でなく、択一試験のように何十問かいっしょに出され、問題ごとに異なった科目が出題されます。
 対象科目は多岐に渡ります。民法、商法、手形法、民訴(国際管轄も)、民執・民保、PL法、不正競争防止法、消費者保護法、証券取引法、労働三法など、聞いただけではしり込みするかもしれませんが、あくまでも核は最初の4,5つくらいです。民商がよくできれば合格点は取れます。

 また、民商法に関する問題は実務をにらんだものが多いので、感心させられる良問も多く、特に担保物権法、商法総則、商行為のあたりは司法ではよくわからなかった条文の活用が解って勉強になりました。教科書ガイドでも書きましたが,商法総則商行為の穴を埋めるのにビジ法2級の問題は役立ちました。
 教材としては、公式テキストと問題集、自由国民社の過去問本が出ていますが、過去問本は必読です。解説がとてもよくできています。

 2級は毎年2回、1級は1回行われます。次回は12月初めですので、今からの勉強でも間に合います。択一合格レベルの方なら、1,2週間3時間程度の勉強で合格レベルに達します。余力があるか、司法へのモチベーションが下がったならば、一度検討してみてください。

 より詳しく、この試験のこと(弁護士内での評価、1級の難易度など)を知っている方は、どうか情報提供をお願いします。今年1級を受けてみようか検討中ですので。

 次回から,また講座評に戻ります。

 ビジネス実務HP
  教科書ガイド        




 

司法試験受験生のためのTOEIC

2004-09-14 21:05:09 | 司法試験:雑談
 勉強を始めて2,3年の方は司法試験の勉強に邁進されているので、他の勉強のことなど全く考えないでしょう。でも、私のように何度か試験に挫折すると、他の資格を取って自信付けにしたり、気分転換を図る方もおられるのはないでしょうか。そこで、今回はメジャーな資格であるTOEICについてお話します。

 TOEICはビジネス用の英語のリーディングとリスニングの能力を測る世界的な資格で、990点満点のうち何点取れたかを資格の指標としています。つまり、合格不合格ではないのです。ロースクールにもTOEICを入学の際評価するところがあるので、弁護士にとっては割と必要な資格ではないでしょうか。

 過去問が公開されていないため、過去問検討はできません。TOEICで高得点を取るためだけの勉強は邪道らしいです。
 とはいえ、漫然と英語の本や映画を見ていても力はつきません。ですので、一応対策として高校・大学時代の教材を復習するといいでしょう。私の場合、Z会の速読英単語(基礎)という本を高校時代に熱心に読んで英語の成績が上がったので、あらためてこれをCD付きで買い直しました。
 ついでに文法を復習するため、ネットで評判の良かった長本吉斉のTOEIC文法急所総攻撃とTOEIC文法鉄則大攻略という本を2週間程度で解き、その上でベレ出版のTOEICテスト大特訓プログラムという実践本を解きました。
 リスニング対策として、図書館からNHKのhopes,loves,and dreamsというCDブックを借りて聞いていました。これはNHKにしてはシビアな内容(離婚・青年の挫折・中年の恋愛)で現実的なテーマが気に入って何度も聞きました。

 勉強期間は週3日2時間くらいで3ヶ月、結果は730点でした。一応履歴書に書ける最低限度らしいです。
 私が使った教材はどれも当たりだったと思っています。司法試験のような、きつい勉強を毎日される方にとっては、TOEIC対策は非常に楽に感じられるでしょう。 息抜きとして、毎日30分とかやってみてはいかがでしょうか。

講師:加藤晋介先生(辰巳法律研究所)

2004-09-14 00:25:05 | 司法試験:講師
 辰巳の名物講師加藤先生には、好き嫌いがはっきり分かれます。好きな方は歯に衣着せぬあの毒舌が好きなのでしょうし、嫌いな方はそこが受け付けないのでしょう。有名なのは、基本書解析講座のシリーズでしょうが、ローラー答練や択一、論文直前期には単発の講義をなさいますので、興味のある方はそちらからアプローチしてはいかがでしょう。

 私は、ローラー答練の講義と論文直前期のガイダンス「論文直前期の過ごし方」しか聞いたことがないので、メインの解析講座については評価できません。ですので、ローラーの講義から先生の特徴を説明いたします。

 講義スタイルは普通ですが、この方も沢井講師と同じく法律的雑談が多いです。と言うより「キレ芸」や「寸劇」を盛り込んだ漫談です。要約すれば、情報量はそれほど多くないというのが感想でしょうか。
 また、強調することはあくまで基本的な知識であって、ベテラン相手のマニアックな解説は致しません。この点を勘違いされている方も多いのではないでしょうか(もっとも解析講義ではそこまで踏み込むのかどうかは知りません)。私が講義に期待するのは情報量ではなく、感心することや、勉強対象に愛着をもてるようにしてもらうことですので、加藤先生の講義は楽しく受けさせていただきました。

 あと、この方は板書図が異常に凝っています。動物の進化系図みたいな図を書かれます。あれは即興で書けるものではないでしょうね、よく予習していらっしゃるのだと思います(私は使いませんが)。



 ローラーの出題についてはかなり、評判が悪いです。これまで賛成意見に出会ったことがないくらい、叩かれています。「こんなのかかないよ」というような解答例も評判が悪いです。 (余談になりますが、辰巳の論予パーフェクト答案のタイトル下に「ここまで書けないとあきらめずに、目標として~」とありますが、あれは目標とすべき答案ではありません。あてはめがない答案とか、尻切れ答案とか、酷いもんがあります。「こんなの書かないよ、と捨てずに一応ストックしてください」の間違いです)

 私は加藤先生の問題はそれほど悪い問題ではない、と思います。30%くらいの確率で良問も出題されます。「制度的保障とは」や「窃盗と横領の不法領得意思が何故違うか」や「刑訴の証明責任と刑法230条の2の解釈」など必ず、基本的知識を正面から問う問題で、必ず教科書知識で解けるようにできているものが殆どです。その聞き方が特殊なので皆面食らうのではないでしょうか。

 大事なのはこういう問題でも、成績優秀者が居る、ということです。彼らがどういうところからアプローチして先生の意図する答案に近づいたのかを推測することは大変勉強になります。
 「どんな問題でも24点は取れる、という特殊技能を体得すれば論文合格は非常に確率が高くなる」という理論は多くの合格者・講師が主張しますが、そのためには加藤先生の問題でも24点を下らないような技術である必要があります。

 ただ、個人的感想として、加藤先生の解答例は表現が特殊で本番で応用できるものではありません。フレッシュ答案か優答をストックして復習することをおすすめします。

講座:論文合格特訓講座(沢井講師)

2004-09-13 01:46:40 | 司法試験:講座
 ひたすら問題検討をする講座です。問題集を独学で解いて、編集して、という作業を講師の助力を得て行うものと考えておけばいいでしょう。2001年の沢井講師の講義では、計144問+関連過去問を検討しました。驚くべきことに、その年の場屋取引、記憶喪失による2号書面の適否などがズバリあたりました。

 解答例の質は他の予備校のものと比べてもやや良いものが多かったです(優答付き)。辰巳の解答例は総じて正確かつ丁寧です(その分表現がカタいことも)。

 沢井講師の説明は良かったといえるか、と言われれば良かったと答えますが、勉強になるか、と言われれば肯定できません。
 こちら側が期待するのは、差がつく表現例や論点のバランス、痛いミスの指摘なのですが、そういう指摘はあったりなかったりでした。

 沢井講師はエレファントカシマシの宮本(たとえが古くてすいません)のような喋りで、「この答案がいかに優れているか、この論点がいかに難しいか」を説明する時には自分でどんどんヒートアップしていくのです。それを聞いていると「ああ、この人本当に法律好きなんだな」と一種ほほえましい感情が湧いてきます。そうすると、私は嫌いな法律がちょっとだけ好きになります。

 私は、講義というものは知識のインプット素材としては見ておらず、一時のカンフル剤のようなものとして捉えています。昨日の書き込みと重なりますが、講義を聴いて自分のやる気を奮いたたせるために使うことを想定しています。
 そういう意味で、沢井講師の講義は法律に興味を持たせるためにはよい効果がありました。ただ、言っていることは支離滅裂のことがあるので、知識のインプットとしてはあまり役に立ちませんでした。

 なお、現在は沢井講師ではなく、柳沢講師という判例重視の方が行っているそうです。この方の講義は聴いた事がないので、他の方の評を参考にしてください。(受講した方は、よろしければ感想をお聞かせください)。

 総括すると、論特の教材は手に入れる価値はありますが、講義は人によっては必要ないと思われます。
 また、教材は辰巳の論予、日練の過去問を素材にしてありますので、予想答練をストックしている方は必要ありません。

雑談:集中力の維持

2004-09-11 17:48:54 | 司法試験:雑談
 受験生にとって、講座や教材の良し悪しよりも、はるかに重要な問題は「いかに毎日集中して長時間勉強できるか」だと思います。

 ごく一部の人を除いて「机に座ったら即座に頭がフル回転して時間も忘れて勉強に没頭できる」というのは夢でしょう。たまにガイダンスを聞いたあとでそういう気分になって、珍しく勉強がはかどっても、次の日には居眠りをしてしまう。そういう経験ありませんか?

 または「頭がフリーズして何をやっても全然進まない」という日がありませんか?私の場合10日周期でありますよ。

 法律の勉強は抽象性が高い部分が多いし、英語などと違って深い思考が必要とされる学問だから、どうしても一定以上の「集中タイム」の確保が必要になってきます。そのためには自発的に「よし!この問題点を理解するぞ!」という意欲が必要になるのですが、それが全然湧いてこないときは皆さんどうしてるのでしょうか。 

 授業を聞くなど、嫌な状況を「我慢する」のは割と長時間耐えられます。しかし、自発的に難しい問題や退屈な要件を理解しようと「意欲する」のはすごく難しいです。

 私の場合、心がけていることは「朝の早起き」と「勉強する環境に出向く」ことです。
 朝、2度寝すると頭がだらけてしまって、もうその一日はダラペースで進行します。だから、少々眠くても朝はロケットスタートを心がけています。
 また、どうしても自宅では誘惑が多くて集中力の維持が困難です。予備校の自習室など、勉強のできる環境に身をおくことでペースの維持が保てます。
 ただ、これらはいずれも体に負担が掛かることです。睡眠不足や偏食をしていると定期的に風邪をひいてしまいます。

 皆さんは、どうやって勉強のペースをつかんでいるのでしょうか。

答練:日曜答練(+講義)

2004-09-11 16:37:11 | 司法試験:答練
 辰巳法律研究所の看板答練。各科目の中堅以上の学者を招いて、出題と解説を担当していただくのが特徴です。出題数はローラーの半分で全48問、「日曜」という名前にかかわらず、月曜火曜もやっています。

 受けたことのない受験生は、普通の答練に飽き足らなくなったベテラン受験生が「頭の体操」的に受けるマニアックな答練だと誤解するようです。

 しかし、そこまでマニアックではありません。学者にもよりますが、一応その年の本試験で出題の可能性のある論点・判例を中心に出題されますので、他の予備校答練と同じような問題(例えば商法でいえば、財産引受の追認、定款による代理人制限、白地手形など)も多いです。
 また、一時期見られたような、学者が自説の正当性を主張したいがために、あえて通説では不都合が生じるような事例を問題にするいわゆる「答練の私物化」は減少傾向にあります。
 さらに、11年の憲法2、13年の民訴1など、問題がズバリ的中する場合もあり、予想問題として優れていることもあります(もっとも、私自身は的中予想に懐疑的ですのでその点はアテにしませんでした)。

 もっとも、残念ながら「なんじゃこら」という問題もあります。昨年度でいえば手形・総則分野から出題された「番頭の無権限振り出し」、民法担保物権で出題された「根抵当権の一部譲渡」等があります(これらは最高点26・受験生はほぼ壊滅状態・優答は実質なしという明らかに出題を誤った問題でした)。
 また、初見の問題を作ろうとして、わざと改正直後の制度を聞くだけの問題を出したり、あまり練られていない問題も出題されます。こういう問題の検討は、司法試験的には百害あって一利なしです。

 ただ、10%弱でしょうか、今まで典型として気に求めなかったかんたんな論点の意外な利用法や、一瞬問題点がわからないけれども、順序だてて考えれば、基本事項に沿った応用的論点が見えてくるような「良問」が出題されます。これらのためだけに、日練は受講する意味があるといい得るでしょう。
 したがって、普通の答練をやり尽くし、予習さえすれば全科目平均50点をキープできるような方にはおすすめします。が、それ以外の方は普通の答練を受けましょう。くれぐれも、全問コピーしてストックなどしないように。不安要素が増えるだけです。

 なお、隠れた日練の活用法として、論証の精錬があります。上述したように、日練といえど典型論点が出題される訳ですが、その際には優答がどのような論証を書いてくるかに注意して自分の論証例と比較するのです。日練の成績優秀者は間違いなく受験界では実力上位の方です。したがってその彼らが書く論証はおそらく受験生の中ではトップレベルの優れた論証であることが多いのです。その論証からは盗むべき表現方法がたくさんあります。


 では、学者の講義は役立つでしょうか。
 これも、玉石混交ですね。バイト感覚でレジュメ棒読みのやる気なしもいれば、熱弁を振るってくださり、感銘を受ける先生もいらっしゃいます。 
 参考までに挙げておくと、商法の大塚先生、宮島先生刑訴の白鳥先生、上口先生、憲法の渋谷先生、矢島先生、刑法の前田・木村先生の講義などは「なるほど!」と関心させられることしきりでした。
 ただ、ハズレだった場合90分+αも座って話を聞くのは時間がもったいないので、できればテープで通学途中など空いた時間に聞くことをおすすめします。 


 蛇足になりますが、付属の過去問検討講義にはあまり期待しないほうが良いです。学者がなぜかイヤイヤやっていて、論点の解説に終始する場合が殆どですから。