メメント・モリ

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講座:憲法判例百選スピードマスター(棟居快行) 辰巳法律研究所

2004-09-17 00:16:41 | 司法試験:講座
 成城大学教授の棟居快行(むねすえとしゆき)先生が、百選を解説してくださる講義でした。確か2001年頃の講義で、全12時間あったと思います。

 大学教授なので、試験上のポイントや論証例などは説明しません。代わりに、各判例の争点を一言で書いたレジュメを使って、その答えが判旨のどこに現れているのかを解説していきます。全ての判例に触れられることはなく、重要なものを2,30詳しく、あとは流す程度でした。
 網羅的に百選の事案と争点を、講義だけでマスターできる!と期待して買ったひとはガックリしたと思います。

 しかし、私にとってこの講義は聞いてよかった。棟居先生は説明が非常にくだけていて(悪く言えば下品なのでしょうか)、憲法という高尚な科目の説明を非常に卑近な例を用いて紹介してくださいました。また、かなりニヒリストなのも棟居先生の特徴です。それまで、憲法というものに対して何か胡散臭さを感じていた私は、目からウロコが落ちた思いでした。
 人権・平和一辺倒でなく、一歩引いた目で個人の尊厳や統治システムを眺める先生の姿勢に感銘をうけ、講義後先生のLIVE過去問講義を読んで、私は憲法が好きになりました。

 好きになると、少し勉強が楽になるので、それから憲法は得意科目となりました。先生の講義の内容をエッセンスだけ言うと「最高裁判例を優秀答案として、どのように事例を解決しているか、を見ろ」「事案から、争点を抽出した上でその答えを判旨から探せ」だったと思います。

 なお、棟居先生は辰巳の加藤晋介先生の親友らしいですが、その思考というか、いうことがそっくりでした。テンションの上がらない加藤先生といった感じでしょうか。毒舌ぶりもすごいです。抽象的権利の説明に、当時話題だった乙武君を例に出して、教室がドッ引きになったのはかなり衝撃的でした。先生も直後に謝りましたが。

 興味のある方は「憲法フィールドノート」も読んでみてください。どういう人権が現実に問題になって、訴訟で取り上げられるまでどういう経過を辿るか、というジャーナリズム的アプローチがなされていて、おもしろいですよ。