メメント・モリ

このブログでは司法試験関連の受験日記・講座・書評について色々掲載していきたいと思います。

問題集:司法試験口述過去問集 LEC 早稲田セミナー

2005-09-17 17:06:35 | 司法試験:問題集
ご無沙汰しております。
そろそろ、論文合格発表前の時期になりましたので、口述対策がてらに、過去問集を再びご紹介します。過去の記事は記事末尾のリンクをご覧ください。

辰巳、LECの単年度版は論点解説や参考文献、判例なども掲載があり、丁寧ですが、口述本試験の対策としては問題量が少ないので、通年度版も入手する必要があるでしょう。昔は早稲田しか発売していませんでしたが、今はLECも通年度版を発売しています。
現在まで口述の勉強を全然していない人は、早稲田の通年度版では量が多すぎて不安をあおるだけなので、LECのものがいいでしょう(こちらは平成12年~)。
また、勉強が進んでおらず、論文の結果には期待が持てない、という方は、とりあえず論文の復習と、苦手分野の克服に努めてください。

さて、合格発表~口述本試験まであと一月少しです。
いまから口述の勉強をはじめられるかたは、論文発表までは、2科目あるいは3科目準備するのがやっとです。この場合、人それぞれでしょうが、苦手科目からはじめてはいかがでしょう(直前になって不安にならないため)。個人差がありますが、暗記部分の多い民訴からはじめるのがいいのではないでしょうか。

口述の勉強では、何をおいてもまず「基本的な知識」がすらすらでてくるようにする必要があります。定義の暗記や条文の要件効果など、重要なものであやふやなところはしっかりと予習してください。また、不得意分野もこの機会に克服した方がいいです。この際、口述本試験では当該分野がどのように出題されているか、という点も注目しておくと、不安や疑問も解消されます。

なお、「定義」はたしかに暗記しておいた方がいいですが、そればかりに勉強時間を割かないように。定義は、概念の法的性質や、特徴を捉えた説明がなされていれば、それで十分です(超有名なものは除く。論文で書く機会があるかどうかで分けるのがいいでしょう)。試験官も話のとっかかりで聞くだけで、暗記力を試しているのではないでしょうから、過剰におそれないように。

また、条文そのままの定義は、論文試験では六法を参照できるので覚える必要はないのですが、口述ではそうはいかないので、これは忘れないよう、暗記してください。

次回は、論文本試験合格発表について

過去の記事はこちら
http://blog.goo.ne.jp/guidemanager/e/dcc45e6f73d278e2196ca92ea0410694 早稲田セミナー
http://blog.goo.ne.jp/guidemanager/e/0ce5aea4c286af21a70674ef4b67c03d LEC

問題集:口述過去問集 体系別(平成5~15年)早稲田セミナー

2004-11-23 11:21:58 | 司法試験:問題集
 早稲田の通年版の口述過去問集です。口述試験とはどういうものか興味があったので、一年目、択一に落ちた夏から使っていました。もっとも、一番使ったのは去年の通常期でしょうか。

 内容について、、、口述受験者でさえ「口述過去問は細かすぎる」として、受験界一般には口述本の無用論が強いです。しかし、上手に使えば、口述本はやみくもな物量作戦の勉強より、ずっと効果的です。
 択一、論文を通して意表をつくような問題も、過去に口述で問われていることが多いです。
 例えば、平成12年択一憲法の国際人権規約に関する知識(選択議定書批准せず)について、過去に何度か口述で聞かれています。また、論文についていえば、ここ数年を考えても平成10年は憲法統治(議員立法定数)、刑法(早すぎた構成要件実現)、15年は民訴(引換給付と既判力の客観的範囲についてかなり前に聞かれました)、16年は憲法統治(議員の年齢資格)など、明らかに口述がモチーフとなっている出題がなされる場合があります。
 これには理由があります。相手方は、当該問題について受験生がどの程度知っているか、「さぐり」を入れたいのです。そうしないと、いざ出題した時に、皆が出来てしまったり、逆に誰もかけない、ということになると、出題としては失敗だからです(点差がつかない)。

 とはいえ、過去にあったような出題意図をそのまま聞くような形式は、近年ではあまり取られていないようです。去年の口述過去問における議員年齢制限の論点など、辰巳口述本の解説によると、
「被選挙権に関して、年齢制限はあるか→憲法上の明文はないが、公職選挙法上、選挙権の年齢より高く定められている(同法9条、10条)」
 これだけです。
 これでは、答案は埋まりませんね。おそらく、特定一部の受験生にやや突っ込んだ形で聞いて、全体からすれば目立たない感じにして、慎重にレベル調査しているのではないでしょうか。私も今年の口述で、問題の筋からはあまり関係ないことをやたら詳しくきかれたフシがあります(基本ではない)から、こういった推測も成り立つのではないでしょうか。(ついでに言うと、前年聞かれた論点が「ズバリ」ではなく、その周辺から出題されるのも、最近のトレンドです)
 そういった観点から、口述過去問を読むというのも割と意義深いことだと思います。

 また、口述は択一論文とあわせて、もっとも細かい知識が問われます。このことは逆にいえば口述が司法試験の出題範囲の最大枠である、ともいえます。何年か前、口述過去問を愛用して一発合格を果たした受験生が予備校のパンフレットに掲載されていました。上手く使えば、口述過去問は効果的であることが実証されたと言っていいでしょう。
 しかしながら、大多数の受験生にとっては口述過去問集は分からないことだらけで、ただ試験に対する恐怖心を煽るだけの結果になってしまう危険が高いでしょう。

 教科書を読み、問題集をある程度解いて、その科目の理解度が現時点での最高潮に達したその時点で口述過去問を読み、それでも読みづらかった場合には、口述本は使わないように。

 もう1つ、口述本はテキストと比べ、記述の正確さにかなり疑問があります。「本当にこれで正しいのか」という疑問が生じた場合、必ず、他の文献を当たりましょう。

講座:再現答案分析講義 早稲田セミナー 羽広政男

2004-11-11 23:42:52 | 司法試験:問題集
 セミナーの再現分析講義。正式名称は不明です。成績表の到着を待って複数回行うこともあるようです。

 再現分析はここ3年で特にクローズアップされるようになった講義です。
 というのも、近年の本試験問題は、基本的でありながら、いわゆる予備校典型論点型が少なくなってきています。また、主観的に出来た問題も、成績を見ると予想外に低かったりして、合格答案のイメージがしづらくなっている傾向があります。そういう現状に対して、再現分析はニーズが増えているのでしょう。

 LEC・辰巳・伊藤塾も何らかの形で再現分析講義をしています。個人的に一番役立ったのは去年の辰巳ですが、平成14年版の羽広講師の分析もそれなりに役立ちました。

 いわゆるA評価や合格答案だけでなく、F・G答案も同時に検討してくださるので、答案のどの部分が致命的に減点されたのかなど、非常に参考になる部分がありました。
 もっとも、伊藤塾のものと同様、6時間しかなく、必然的に解説は大まかな、急ぎ足のものになってしまいます。だから、あらかじめ出題論点・問題分析の予習をしていないと講義の内容に全くついていけない危険もあります。また、六科目12問しっかり分析したい人には若干物足りないかもしれません。

 明日以降も、再現分析講義の紹介をしますが、この手の講義については、来年の合格を確実にしたい受験生は費用の出し惜しみをすべきではないと思います。これらの講義はあくまで、その講師の「主観・推測」を述べているに過ぎません。多くの意見を集約し、最大公約数をはじき出す方がより確かな合格のイメージをつかめるのではないでしょうか。
 

問題集:択一過去問集・LEC/辰巳 

2004-11-09 23:59:53 | 司法試験:問題集
 択一には気が早いかもしれませんが、そろそろ過去問集も来年度版が出てくるころですので、私が使った2社の過去問をご紹介します。

 受験一年目、12月頃に辰巳大阪本校で辰巳の過去問集を購入しました。
 辰巳の過去問集は体系別に昭和56年から今年の問題を掲載しています。解説の丁寧さという点で、LEC・セミナー・法学書院の追随を許さない(らしい)。伊藤塾ではその出来のよさから、他校の教材なのに受付で販売しているのは有名な話です。

 とはいえ、全く問題がないかというと、そういうものでもないです。私が購入した平成12年度版は、憲法の問題と解答が対応していない昭和の問題もあったし、同じ文章が重複するミスプリもありました。また、よく言われることですが、他の過去問集と解答が違う箇所も多々ありました(これは、平成13年以前は解答が公表されなかったことに起因します)。刑法の解説がやたらしつこいのもイヤになりました。まぐれでなく正解したのなら、別に読む必要ないでしょう。そういった意味で、あまり過大評価するべきではないです。あくまで、相対的に優れている、という点に留意してください。
 また、内容とは関係ありませんが、判例六法サイズ6冊分にもなるので、相当な重量になります。腰を悪くするので、持ち運ぶ方はばらして使いましょう。

 2年使ってかなり傷んだので、14年度は新しくなったLECの過去問集を購入しました。この本の特徴はなんといっても薄いこと。辰巳の半分以下の重量になっています。ばらして持ち運ぶ私は、内容はそっちのけで、この点に惚れて購入しました。掲載年度はほぼ同じ(昭和57~)ですが、辰巳の過去問集に比べると圧倒的に解説の量が少ない。しかし、もう過去問はやり尽くして、解答は確認程度しか読まなくなっていた私には全く支障ありませんでした。

 なお、この過去問集の最大の特徴は、「年度別」であることです。平成の直近の問題が年度別なのは便利なのですが、昭和50年代の問題を年度別で解く人はいないでしょう。そこで、この本の購入者は、必然的に本をバラして体系別に並べ替えることになります。割とメンドクサイ作業でしたが、一晩2,3時間でこなせます。一つ注意しておきますが、もし本に「背表紙をアイロンで熱して外す」などと書いてあっても参考にしないように。ネチャネチャになって、どうしようもなくなります。普通に真中からカッターで割り、一枚ずつ手で丁寧にめくればきれいにはがれます。この作業はわりと楽しい。

 最後に、意外と実践していない人が多いので一点おすすめしておきます。
 問題集をばらしてファイルすることは、重要度に応じて検討する問題を区別できるという利点と同時に、やればやるほど検討不要の問題が増えてファイルが痩せてくるので、目に見えて学習の成果がわかってやる気が出てくる、という効果もあります。心理的な効果ですが、かなり重要なことだと考えています。
 問題集を目の前にして、やる気の起きない人。是非ばらして小分けにして少しづつ解いていってください。はかどり方が全然違いますよ!

問題集:判例で書く刑事訴訟法 早稲田セミナー 板橋喜彦 著

2004-11-06 23:53:31 | 司法試験:問題集
 昨日紹介した、判例で書くシリーズの刑事訴訟版です。刑訴は学説と判例の乖離が大きく、特に判例を主体とした本が少なかったため、もっとも要望が高かったと言えます。数々の重要判例について判例を深く知るにはもってこいの本です。
 但し、近時本試験の傾向として判例がそのまま出ることは少なく、むしろ判例を応用させる問題が多いので、答案例丸暗記は避けましょう。あくまで、判例をより深く理解する素材として使用することをおすすめします。

 また、判例だけに留まらず、予備校テキストでは穴になりがちな知識、たとえば公判手続の基本原理・公判期日外の証人尋問・聴覚障害者の訴訟能力などが問題として掲載されていて、勉強になります。

 ただ、刑訴判例の結論にはかなり公益優先になっているものもあります。こういう判例で書く解答は、個人的には「理由付けが苦しいな、説得力が弱いな」という印象を持っています。ですから、使えそうな問題だけ構成・マーキングして、性に合わない問題は放置しました。民訴編ほどは勉強しませんでした。

 なお、第3版(民訴は第2版)になり、ページ数が急激に増えましたが、半分以上は判旨紹介ですので実質的には増ページはそれほどありません。

問題集:判例で書く民事訴訟法 早稲田セミナー 板橋喜彦 著

2004-11-05 20:29:05 | 司法試験:問題集
 「判例で書く」シリーズの民事訴訟編です。全40問(第1版のもの:現在の2版には差し替え・追加あり)について解答例・解説、及び論証カードと重要判例の判旨が掲載されています。

 司法試験が実務家登用試験である以上、実務上もっとも重視される判例については検討が必要です。出来ることなら判例を自説にして答案を書きたい、と考える受験生も多いと思われます。
 にもかかわらず、近年まで判例を自説にした答案・論証が少なかったのは、判例を自説とした答案を掲載した信頼できる書籍が無かったためでした。
 本書はこの要望に応える形で作成されています。それゆえ、百選を読んだだけではわからない、判例の価値判断・理論構成について補充した形で論証されている解答例はそのまま実際の答練・本試験で通用するものも多いです。

 とくに、当事者の確定と法人格否認・法定訴訟担当・形成の訴えの利益・安全配慮義務の主張責任・和解の既判力など、判例の結論は知っていても、その理論構成・妥当性まで深く知りえなかった論点について、詳細に解説がなされていて、思わず唸る内容が多くあります。
 また、高橋・伊藤・上田など、近年広く使われている基本書・演習書の問題意識を消化して作問されているため、基本書を読んでいない方には初めて聞く議論もあります。
 私のように、予備校本主体で読んでいる人は、テキストと異なった表現・説明があるのでそれを読むことで頭が活性化され、民訴の理解が深まるでしょう。
 
 もっとも、使用上注意すべき点が多々あります。
 まず、判例の解説に熱心なあまり、解答例が長すぎてそのままでは使えません。また、本番ではまず書けないような込み入った説明・制度についてまで説明されている場合があります。「せっかく勉強したんだから」と考えてしまい、答練でいわゆる「引き込み」をやってしまう危険もあります(失敗済み)。もし、これが難問でパニックになりやすい本試験だったら、と考えると恐ろしい。

 また、一般に言われるように、合格答案には様々なスタイルがあります。
 私が受験当時目指していたのは、条文・定義・趣旨といった基本事項は堅固でありながら、問題の所在・あてはめ・事案における具体的利益状況などは柔軟にその場の思考過程を示す「基本派生・思考型」の答案でした。
 これに対し、本書の答案は、答練の参考答案のように定義・趣旨・規範に留まらず、判例の事案の利益状況についても正確に記憶・再現する「暗記型」の答案である印象を受けました。これは、本書が基本的には判例の解説本たる性格を有しているためかも知れません。しかし、著者の勉強スタイルが、「起きてから寝るまでずっと勉強しつづけ、巻末の論証カードを試験直前まで読み込む」というものらしいので、おそらく暗記主体の勉強をしていたのでしょう。
 そこで「自分の目指すスタイルと違う答案である」と認識した私は、本書の利用を答練の問題のようにファイリングせず、答案構成後にわからなかった理由付け・納得した説明などをマーキングし、その中でも重要なものはC-BOOKに書き写す、という参考書的な使い方をしました。(解答例が実践的でなく、知識が多めであるという点で、学者の演習書に近いものがあります。)

 以上をまとめると、この本は独特のクセがあり、そのクセを自分自身どう扱うかよく考えないと上手く利用できない本である、といえます。また、「司法試験論文本試験で合格答案を書く」という観点からは直接的な効果の薄い本かもしれません。
 しかし、私はこの本を読んで民訴の具体的な流れや当事者の利益・手続などをより鮮明にイメージできて、民訴が好きになりました。そういう意味では、非常に読んで良かったという感想を持っています。

 

問題集:司法試験 口述の扉 LEC

2004-11-03 22:03:35 | 司法試験:問題集
 LECの口述再現集。単年度版を2001年から発売していましたが、今年は平成12年から15年までをまとめて発売しているようです。内容は問答の要約と実際の再現、それに論点解説と口述素材解答例がついてきます。他社の口述再現集と比較すると充実しています。しかも、単年度版だと1000円前後とリーズナブル。

 ところで、口述試験は論文のネタ本としての有効度が広く知られています。しかし、実際に論文の出題予想として使いこなすのは難しいのが現状です。出題後に調べれば「ああ、ここから出てたのか」とわかりますが、それをピンポイントで予測するのは困難です。しかも、1つの問答を論文形式で準備することは出来ない以上、読んで身につくのは、問題意識を聞いただけで、現場で論証をひねり出し、再現できる実力者だけ、と言うことになります。多くの受験生はこのようなレベルに到達していません。それより、直前期は今までの問題検討と、基本的論証・要件の再確認に費やすべきです。

 もっとも、口述再現は試験委員の問題意識、ひっかけかたといった興味深いことがわかります。そこで、時間のあるこの時期に、息抜きがてら読んでみてもいいでしょう。

 余談になりますが、口述再現は基本的には割と優秀な人のものと思ってもらっていいと思います。今年受験して思ったのですが、本当にわからないことを聞かれた場合、何をどういわれて、どう答えたかすらわけがわからなくなっているのが普通です。一部露出説の不都合性についてご教授して頂きましたが、何のことやらさっぱり覚えていません。
 また、他の受験生の口述模試も5人ほど見ましたが、殆どが何かしら詰まって、沈黙や撤回をされるのが殆どです。これを読んで過剰に口述を怖がらないように。(とはいえ、私も結果発表までは怖い)


問題集:司法試験シンプル答案作成術 法学書院

2004-11-02 17:15:20 | 司法試験:問題集
 法学書院は受験新法の出版社で、司法試験の合格体験記や対話で学ぶシリーズなど、数多くの受験対策書を出版しています。宣伝力があまりないのか、身の回りで使っている人が少ないですが、割と外れなく、ちゃんと使える本が多いです。
 今回はその中でも、受験新法オリジナル問題から編纂した問題集「シンプル答案作成術」をご紹介します。

 シンプル答案と銘打ってはいますが、著者は基本書主義の弁護士なので、問題によっては割と細かい知識まで追っています。記述量も問題によっては1時間で書ききれない量のものも。

 もっとも特徴的なのが、問題の質です。良し悪しは別として、かなり独自のものが多いです。
 いくつか引用しましょう「中央省庁等改革基本法の改正点を議院内閣制から説明する問題」「損害賠償の範囲が相当因果関係によって定まるという命題に関する批判について」「普通取引約款規制」など、かなりアカデミックな出題が約半数を占めます。 個人的にはこれらは出題可能性としては低いと思います。

 しかし、残りの半数はいわゆる基本的制度の応用や穴を聞く問題で、いい意味で穴埋めになる良い教材でした。例えば「続審主義と弁論の更新権」「商法266条1項5号の「法令」の判断と経営判断原則」など。

 計48問の問題と解答例の後に著者のコメントがあるのですが、これがなかなか、ためになります。また、著者が冒頭で述べている、「減点主義」には私も強く賛同するところです。
 受験生は勉強に熱心なあまり、採点官をうならせよう、感動させようと必死にイイコトを書こうとする傾向があります(特に男)。 しかし、実際に採点していて感動するような答案にめぐりあうことなど皆無だそうです。むしろ「こいつ狙ってるな」と見透かされるのがオチだそうです(私も添削して実感しました)。2年前、いい答案を書こうと躍起になっていた私はこのコメントにたしなめられました。
 著者の小高さんがおっしゃるには「加点事由」は相対的で不確実なものだが、「減点事由」は普遍性があるということです。確かにそうだと思います。とすれば、減点事由を可能な限り少なくすることこそが論文に確実に受かる秘訣であるといえます。

 とはいえ、この問題集の問題は王道ではないので、確実に受かるための必須のものではありません。予備校の問題をやり尽くして頭の訓練素材が欲しい方、解答例の無い演習書や、受験新法の誌上答練の問題だけ集めようとしている方にはお勧めします。

 最後に、各科目の初めにはやたら読むべき基本書が羅列されていますが、基本書読みが勉強にならない人は別に真に受ける必要はありません。

問題集:民法の底力 辰巳 伊藤進教授

2004-10-31 23:30:41 | 司法試験:問題集
 実況中継でおなじみ、伊藤先生のオリジナル問題集です。元ネタは日曜答練、公開模試などから編集しています。
 内容について、全40問とかなりの量があります。特徴的なのは、予備校問題ではあまり見られない一行問題が多数掲載されていることです。一行問題の充実を考えている方はどうぞ購読ください。
 難度は全体的にはあまり高くないです。といっても典型的というわけではなく、要求される知識の幅が割と狭いということです。基本的定義要件効果が身についていない人には、どう書いたらよいのかわからないものも多いでしょう。
 さらに、演習書に良くあるように、解答例がついていません。ですので、模範解答を想像しながら読める人にしか役立ちません。

 去年の年明けに私は、結構この本を詰めて使っていました。時間を計って答案構成し、解説を照らしあわせて思考過程を修正していました。
 しかし、やればやるほど、収録されている問題の質には疑問を感じずにはいられませんでした。比較問題でありながら、小問1は比較できるが小問2は比較不可能(或いは無関係)な実質一行問題、特定の少数説からしか書けない問題、メイン論点が超絶に細かい問題など、オリジナリティはあっても質が練られていないと感じられました。


 民法的思考を養いたい方、未知の事例・問いかけを求める方、民法が好きでたまらない方にはおすすめします。しかし、伊藤先生の過去問の解説に感動し、「伊藤先生の作問なら、本試験レベルの良問が解ける!」と期待して買った受験生には失望又は混乱をもたらすでしょう。

問題集:辰巳論文実況中継シリーズ 刑事訴訟法 安富潔教授

2004-10-30 23:30:39 | 司法試験:問題集
 刑法・民訴のレビューが内容の乏しいものでしたので、刑訴に関しては再度読み直して見ました。知識も蓄積した今なら過去の印象も払拭されるかと思いました。が、やっぱり3年前読んだままの印象でした。

 まず、この本も書き方より論点解説中心のものです。しかも、解説がわかりやすいかみくだいたものではなく、あくまで学者用語なので、基本書同様、読みにくい。あえて読む必要があるのか、疑問です。

 次に、この本の特徴として、完全解を呈示せず、受験生の答案を安富先生が評釈する形をとっています。これが、物議をかもし出す元凶となっています。解答全体でなく、ワンセンテンスごとにいちいちレスをつける珍しい形で、かなり細かい言い回しについても突っ込みを入れていきます。
 「学者はここまでシビアに考えるのか」と感心する部分もありますが、多くは揚げ足とりのように感じてしまいます。「枝葉に入って大局が見えてこない答案」については、よく批判の対象となるところですが、先生の講評は大局が見えない指摘ではないか、と疑いの目をもってしまいます。刑訴に対して合格答案のイメージを持たない人がこの本を読んだ場合、混乱し不安が生じることは間違いありません。

 もっとも、参考になるところもあります。先生は用語についてかなりシビアですが、これは真摯に受け止めていいだろう、と思います。条文の言い回しや、判例の言い回しは勝手に意訳しないことが大事です。
 また、中ごろに色々細かい指摘をしておきながらも、「良い答案は一読できる分かり易い答案、短い答案である」と述べられています。これは本当にそうだと思います。

問題集:辰巳論文実況中継シリーズ 民訴 和田吉弘先生

2004-10-29 01:06:50 | 司法試験:問題集
 実況中継シリーズの中でも、もっとも最後に発売されたのが民訴でした。私は平成12年からの民訴には恐怖を感じていたので、飛びつきました。

 結果は、、、悪くないんだけど、なんだかなー。
 まず、文字が小さい上に量がかなりあるので、通読するだけで結構な時間がとられてしまう。しかも「そうだったのか!」という目からウロコ系の指摘は少なく、よくも悪くもオーソドックスさを感じてしまいました。

 個人的な感想として「これ読むくらいなら、自分でC-BOOK使って定義や要件、条文、論点を覚えることに時間を使った方がいいな」と思い、手放しました。
 もちろん、刑法ほどには悪くありません。先生は司法合格者だから、手堅い印象もあります。ただ、何もサプライズがないのです。読後の充実感がないと言いましょうか・・・

問題集:辰巳論文実況中継シリーズ 刑法 船山教授

2004-10-28 13:29:46 | 司法試験:問題集
 実況中継シリーズ、刑法です。一応、このシリーズは全部読みましたが、この刑法がもっとも(私にとっては)使えませんでした。もう、読んだのが3年まえなので、内容を詳しく覚えていませんが、「刑法の合格答案の書き方」を試行錯誤していた私にとっては全く得るものはなかった、と記憶しています。それより、論点の説明が主体だったような・・・なお、先生は行為無価値論です。

 いいところを何か紹介するのがこのブログの趣旨ですので、必死に思い出しました。
 ひとつありました。
 「〇〇先生の教科書には過失の共同正犯の具体例として、ビルの屋上から共同して材木を投げ下ろす、という事例が挙げられていますが、あれは不適切です。そんな危険な行為は通行者への傷害の未必の故意がありますから過失の共同正犯になりません!」

 確かにそうだ。

問題集:辰巳論文実況中継シリーズ 手形法 田邊光政教授 会社法 石山卓磨教授

2004-10-27 10:00:44 | 司法試験:問題集
 いまは答練の商法の時期ですので,商法過去問に関する情報をお伝えします。

 商法はその対象領域があまりに広く、しかも答練スケジュールの関係で十分な予習をせずそのまま進むかたも多くいらっしゃると思います。 商法の苦手克服について、即効性のあるものはありませんでした。答案のコツをつかむというより、広く確かな知識をどんどん蓄積していくことが安定した合格答案作成に効果的だと考えます。その意味で、答案を集めるより、基本書またはテキストをしっかり読み潰すことが攻略の鍵になります。
 とはいえ、あの広い領域について漫然と読んでいても、なかなか効果的な学習にはならないでしょう。まずは商法を好きになることが攻略への一歩と考えます。

 そこで、今回ご紹介するライブ本シリーズになります。両書は論文過去問を素材に、各科目の教授が関連論点を非常に興味深く説明してくださいます。手形法では比較法的観点から、会社法では実務や学説の状況を踏まえつつ、一見無味乾燥な論点を楽しく解説してくださいます。説明個所は司法試験レベルを超える場合が少々ありますが、知的興味を刺激するのに一役買ってくれるのでよしとしましょう。
 
 手形法では、田邊先生が人的抗弁について属人性説という少数説をとられているので、その点注意が必要です。問題数が少ない(H12初版では19問)ですが、少数精鋭で参考になる問題ばかりです。小切手法や為替手形など、予備校テキストでは説明しない個所を解説してくださいます。ただ、勉強があまり進んでいない方は飛ばしてもいいでしょう。出題可能性は低いです。 
 また、大きな特徴として、田邊先生の監修答案が実況中継シリーズ中もっとも出来がいいということが挙げられます。過去問参考答案としても、日常の学習に役立ちます。これは本当におすすめします。

 会社法は、頻繁に版の改訂が行われます。改訂の度に問題数が増加してゆくのですが、あれはちょっと多すぎではないでしょうか。ご自身で検討する順序を決めてから取り掛かることをおすすめします。

 最後に、ここ2年の商法の本試験は簡単でしたが、それ以前の問題を見てください。ギョッとする出題がされていることに気付かされます。「もうああいう難しい問題は出ないよ」と考えるかた、それは希望的観測に過ぎません。相手方は意表をつくことが大好きです。ここ2年の本試験の成績が良くても、必ず難問対策を怠らないでください。来年あたり、きそうな予感です。

問題集:対話で学ぶ民法 法学書院

2004-10-06 23:47:50 | 司法試験:問題集
 法学書院の対話で学ぶシリーズ・民法です。教師役の弁護士が2人の受験生が論文過去問の答案を作成したあとに採点ポイント・論点を説明する独自の形式です。
 このシリーズは総じて読みやすいのですが、民法は読みやすい上にためになる記述がいろいろありました。中でも、衝撃的だったのは「民法の答案はどれだけ書いたか書けなかったか、ではなく基本からどれだけ積み上げられたか、によって出来不出来をはかるべき」という記述でした(今手持ちに無いのですが、確かこういう記述だったと思います)。
 人によっては「何だ当たり前のことじゃないか」と思われるかたがいらっしゃるかと思われます。しかし、当時(平成15年11月)の私にとっては身につまされる思いでした。15年の本試験で問題文の文言を使い切るために、無理矢理な条文適用をして、それでGをとったからです。難問であればあるほど、基本からの積み上げを心がけて、慎重になるべきです。

 ところで、対話シリーズはさらっと読めるのでそのまま読み流してしまい、頭に残らない危険もあります。また、解答例が対話文章に並走してあるのでコピーしてストックするのにはむいていません。
 使い方としては、(1)自分の手持ちの資料との比較をする(2)入門書として使い、後で貞友民法で補充する といいでしょう。問題は平成以降のものが多いです(20~30問程度?)。

問題集:辰巳決定版LIVE過去問解説講義 民法 貞友義典先生

2004-10-06 00:16:20 | 司法試験:問題集
辰巳の看板講師、貞友先生の民法過去問解説本です。

 前述の伊藤先生と違って、この本は中上級者向けです。問題数も昭和60年から平成13年まで掲載されていて、情報量も豊富です。特に難しい平成元年1問や平成8年1問などは、基本書には載っていない論点ながら、先生独自の考察が加えられていて大変参考になります。
 また、問題で直接問われていない論点についても「この事情がこう変化したならもっと難しくなる~」など、広がりのある勉強をさせてくださいます。これらの応用の中から実際本試験で出題されたものも多数あります(過去問検討が未来の本試験問題の予想につながる好例です)。

 もっとも、民法に関して先生は研究者の域に達しています(論特の論点解説の参考文献に平井民法などと並んで、貞友ライブ本があったのが印象的でした)。ですので、試験的にはあまり触れる必要の無い論点を検討したり、神経質なほど説の妥当性にこだわったりします(前述の平成8年の問題などは、先生自身が説明しながら酷く悩むので、読んでるこっちも混乱します。試験的にはここはあっさり判例で済ませばいいと思う)。こういうところまではいっしょに付き合う必要はありません。
 また、解答例も受験生にとっては実践的ではありません。規範とあてはめが融合されていたり、省略がかなり大胆だったり。
 この本は参考書であるという割り切りが重要です。

 伊藤民法と両方購入なさった方は両方に掲載されている問題について、両先生の指摘する重要ポイントがどう違うか読み比べると面白いです。とくに昭和61年1問、平成7年1問なんかはお互いの視点の違いが如実に反映されています。どちらが妥当かは皆さんの判断にお任せします(私は伊藤先生のスタイルの方が好きですが)。