メメント・モリ

このブログでは司法試験関連の受験日記・講座・書評について色々掲載していきたいと思います。

テキスト:論文の優等生になる講座 辰巳永山在浩講師

2005-02-07 10:23:38 | 司法試験:テキスト
 今日は勢いづいてきたので、ついでに論文の優等生もご紹介します。

 短答の優等生と同じく、この本でも永山哲学が貫かれています。基本は「その年の試験委員がそのような受験生を欲したのか、どういう能力を欲していたのか」ということを探求しています。
 先生は正直にも、「自分の予想する評価基準と、再現答案を分析した評価基準とがずれた」などと、逡巡の過程をお話してくれる場面もあります(H13)。これは、裏を返せばそれほど試験の評価基準が一定でない、コロコロ変わるものだ、ということを物語っています。

 もちろん、いつになっても変わらない規準というものもあります。
 例えば、知識の正確さです。これは、定義・趣旨・要件の正確な暗記、といった形式的部分にとどまりません。その知識を具体的場面でどのように使うか、どう応用できるか、といった面で正しく基本的知識、概念を理解しているか、ということはかなり綿密に読まれている、と思います。(余談になりますが、最近添削をしていても、この点が押さえられていない受験生がほとんどであることに気づかされます。「現場思考」も結構ですが、それには責任と危険が伴うこともしっかり認識しておく必要があります)

 具体的な本の中身に戻ります。この本では、基本的に憲民刑に重点を置いて、問題分析と再現検討を行います。民訴、刑訴に疑問がある人はあまり参考にならないでしょう。そういう方は予備校が毎年行う再現分析講義を利用してください。この手の講義の紹介も過去のブログで行っております。
 
 なお、再現答案を読むときは、ある程度実力があるかた(択一合格程度)は是非、評価を見ないでその答案の良し悪しにアタリをつけてから読むようにしてください。そうでないと、再現分析は意味がありません。これは注意。
 また、個人的な感想ですが、択一がズバリはまったのに対し、論文の優等生については、先生の評価基準と自分の評価基準とがズレることもしばしばありました。実際、再現答案で、なぜこれがAであっちがGかわからない場合もありました。こういうときはあまり悩んでも仕方ありません。しばらく勉強を積んだ後戻ってくればわかることもありますし、そうでない場合は放置しておいてもいいでしょう。

 最後に注意点を1つ。まだ勉強が進んでいない人がこの本を読んでも、いまいちピンと来ず、かえって混乱を来たす危険もあります。
 そういう方は、論文の優等生「科目別編」を先に勉強しましょう。これについては、いずれご紹介いたします。

テキスト:短答の優等生になる講座 辰巳永山在浩講師

2005-02-07 09:51:59 | 司法試験:テキスト
 こんにちは、ながらく教材の更新が滞っており、申し訳ありませんでした。
 現在、会員の方々のため、民法の勉強法ガイドを執筆中でございます。1週間のうちに順次別ページでアップしていく予定です。

 さて、今回は、辰巳永山先生の代表作「短答の優等生になる講座」です。
 以前、永山先生に関して書かせていただいたときは、先生の人となりを主に書いたので、今回は具体的な本の中身についてご紹介したいと思います。
 この本は平成7年度から14年度まで続いていて(部分的に絶版あり)、単年度ごとにその年の傾向や、解法などについて紹介した本です。知識の解説は基本的にありません。それよりも「限られた時間の中で、どの問題をどう解くのか、どれを捨てるのか、どの程度知識を備えておく必要があるのか、そして最も重要な『本年度受験のためにすべきことは何か』」について深い考察を加える本です。
 ただ、以前自由国民社から出版されていた「択一王の必勝戦略」やその他の解法本(「短答刑法びじゅある本」というのがあるらしいですが・・)とは違い、あまり解法そのものには重点を置いていません。それよりも「司法試験委員がどういう能力を要求しているか」「どういう勉強をすると受かりやすいのか」といった一般論を意識しながら各科目の問題の解説に入っていきます。

 先生は、かなりマニアックな性格の方で、問題冊子のページ数に始まり、文字数、合格者の平均年齢、果ては余白やページ裏表に渡る問題の扱いにまで、試験委員会の意図を探ろうとします。まあ、合わない人は、その辺は無視してもらって結構でしょう。
 それよりも大事なのが、「合格するための勉強とは何か」「合格するための思考とは何か」を私たちに問いかけるところです。

 先生は、いろいろな例を出して「(悪い意味で)個性的な受験生はいらない。向こうが要求することを淡々とこなす受験生が欲しい、と出題者側は考えている」とおっしゃいます。このことはもっともだと思います。実際、私も受験生の発想・価値観などは千差万別でも、司法試験に受かるための「司法試験受験生的発想(思想?)」はおおむね一定している、という実感があります。
 そのような発想を磨くためにも、この本は重宝するでしょう。

 決して胡散臭い本ではありません。むしろ他のどの講師よりも、「司法試験」に真正面から立ち向かい、試行錯誤している永山先生の真面目な人柄を感じる一冊だと思います。
 択一に苦労されている方は一度買って読んでみてください。



 

テキスト:判例六法 有斐閣

2004-12-22 00:54:48 | 司法試験:テキスト
 テキストというと語弊がありますが、受験生の使う参照六法の中で司法試験用六法を除いて、1.2番目の人気のある六法です。

 その名のとおり、判例が条文の後ろに掲載されている六法です。他には岩波の「判例基本六法」もありますが、掲載量では、判例六法が群を抜いて多いです。また、民法などカタカナ書きの条文もひらがなに直してあるのも特徴のひとつです。
 使っている人は多くても、その使い方については今まで語られてこなかったのではないでしょうか。そこで、私が6科目別にどのような使い方をしていたのか、今回は特別にご紹介いたします。


 憲法:判例重視の憲法は、意外と判例六法の活躍の場が少なかったです。というのも、憲法で勉強していて判例が気になった場合、ちょっとその規範や結論を見ただけで解決するような簡単な疑問点は少ないからです。結局百選や手持ちのテキストに戻らないといけないハメになります。

 民法:たとえば、612条で信頼関係破壊理論を学習したとします。テキストにはそれに関する代表的な判例しか載っていません。もっと判例の当てはめの限界を知りたい場合、判例六法にあたります。そうすると、さまざまな「当てはめ判例」が掲載されていて、判例の価値観・判例の射程というものがおぼろげに見えてきます。110条の「正当事由」なんかもその例です。

 刑法:ここも重要判例については判旨とともに、事案も重要なので、判例六法では調べません。代わりに、ちょっとマイナーな罪「信用毀損・文書毀棄など」についてどういう場合がつみになるのか、あてはめかたを学習していました。

 商法・訴訟法:商訴以下が判例六法の真骨頂です。まず、民法・刑法などと同じようにややマイナーな条文・制度について、具体的にどんな事例で使われているのか読み、イメージを膨らますのに役立てました。さらに、当該条文から派生するさまざまな知識、関連条文についても判例六法で学習しました。
 例えば、株主の買取請求権について、245条の2を開けば、その条文の後ろにそれ以外の株主買取請求権が掲載されています。また、必要的口頭弁論の原則である87条を開けば、3項のいう「特別の定め」すなわち例外規定の具体的条文がその後ろに掲載されています。


 気になったひとつの条文から発展的に条文知識を学べることが判例六法のいいところだと思います。
 ただし、いくら関連事項が掲載されているとしても、あらかじめその条文についてある程度テキストで知っておかないと、ただ条文だけを読んでも身に付かないでしょう。判例六法は条文の「復習ツール」として使うのがいいのではないでしょうか。

 ちなみに、以下は余談になります。
 編集委員に司法試験委員が混じっていることも人気の理由のひとつなのでしょうか。あまり気づいている人はいないと思いますが、司法試験の論文試験でネタになった判例が出題年前後に判例六法にあえて掲載される場合があります。(具体例として、平成15年刑訴第1問と判例六法刑訴197条28番の関係があります。)これが、論文出題「前」に掲載されることが特定できたなら、かなりの出題予想となります。
もっとも、そんなヒマなことをやっている余裕があったら、他の勉強をしたほうがマシだと思います(自分で紹介しておいてなんですが)。

テキスト:憲法判例百選2

2004-12-22 00:05:00 | 司法試験:テキスト
 10日ほどあけて申し訳ありませんでした。多忙を極めたもので、ご容赦願います。その分今回はたくさん記事を書きます。

 1について、あまり反響が無かったので、書くべきか迷ったのですが、2だけ書かないのもきもちわるいので、一応書いておきます。

 2は半分が人権(社会権以後)、もう半分が統治機構の判例で構成されています。これは、論文試験対策の観点からはあまり重要性が高くない領域なので、1よりは本腰入れて取り組まなくて結構です。判例の論理を読み取る、というような突っ込んだ勉強までは必要なく、事案と判旨を読んでおけば足りるのが大勢です。

 よって、今回は「試験にメインで問われない判例」ではなく、逆に「役立つあるいはメインで問われる可能性のある判例」を指摘しようと思います。

 メインで問われる可能性のある判例:
115.116.118.122.127.132.133.135.137.139.142.147.148.151.
155.156.157.159.160.172.173.175.176.180.185.189.192-196.
203-206.225
 解説が役立った判例:
146.180.194.196 

 上記でメインといったのは択一・論文を通しての場合です。どちらで出るかはわかりません。ただ、統治分野では特定の判例を知らないからといって、格別問題に答えにくいようなことはほぼありません(例外として、裁判所・憲法訴訟に関する重要判例はしっかり勉強しておきましょう。判例の事件解決の方法を学ぶためです。)

テキスト:憲法判例百選1

2004-12-11 13:58:06 | 司法試験:テキスト
 有斐閣のジュリスト別冊、受験を始めてその存在を知り、本屋で探してもらって発見したときは、その外見のしょぼさにびっくりしました。内容を見てもびっくり、実は大学の教養課程で受講した、法学基礎の授業で使われていた教材だったのです。その授業を受けてあまりのつまらなさに、司法試験受験を一度は断念しかけただけに「相性の悪い教材だな」と思い、購入しても一年使いませんでした。

 いくら最近の択一が判例重視の傾向だからといって、この本を一から読んでいてはただ憲法が嫌いになるだけです。「つまみ食い」を繰り返し、最終的にはほとんどの判例を検討していた、という使い方が理想的ではあります。くれぐれも、頭から読みつぶそうと思わないように。また、掲載判例について、ある程度疑問点、予備知識などがないと、上滑りの読み方しかできないでしょう。初期段階では無理して背伸びせず、基本書・テキストの判例を読んでおけば足ります。

 また、よく言われているように、解説は本当に質がばらばらです。その目的とするところも掲載判例によって違ってきますので、自分の求めている情報が載っていない、と判断した場合には遠慮なく読み飛ばしてください。私が求めていた情報は、当該判例の先例的意義や射程、応用可能性や重要な判断要素の指摘でした。

 なお、みなさんが欲している情報は「どの判例をしっかり読めばいいのか」という点でしょう。
 これは、その人の学習到達度、必要とする理解の程度によって異なるので一概には言えません。ただ、「これは試験でメインに聞かれることはないだろう」と思われる判例もあります。また、個人的に解説を読んでためになったものもあります。そこで、今回はそれらの番号についてご紹介いたします。学習の一助となれば幸いです。

 およそメインとしての出題可能性が考えられない判例:16.19.29.51.55.89.90.106
 参考になった解説:7.12.14.15.27.30.32.33.76.96.97.102.
 なお、ためになる、といっても記述の一部ですので、すべてを目を皿のようにして読む必要はありません。
 また、判旨を読む前に、その事件がどのような利益状況の下、誰がどのような主張をしたために出てきたものなのか、をしっかり把握しておく必要があります。ここは必ずやってください。すべての科目で重要なことです。

テキスト:択一式受験六法(自由国民社)

2004-09-08 10:39:05 | 司法試験:テキスト
 初めて択一を受けた2000年、そのころ択一対策本で定評のあった択一式受験六法を買いました。

 しかし、この本は私にとっては非常に相性が悪かったです。
 まず、3段組のレイアウトが読みにくい。しかも、どこに何が書いてあるか、わかりにくくて知りたいところを調べにくい。1ヶ月ほど使って止めました。

 次の年は、LECの完択を使ったのですが、これがメチャメチャつかいやすい! プロヴィ主体だった私には、レジュメ形式の完択がよかったようです。
 ただ、内容はプロヴィを択一用に編集しただけなので、常にプロヴィ・C-BOOKを傍らに置いている人はあえて買う必要はないでしょう。

 余談になりますが、2000年は択一式受験六法の大改訂の年で、民法の発売が2月に延期されました。それを知って私は「だったら択一の民法対策は2月からにして、その分憲刑をやっておこう」とかんがえました。

 これがどれくらいアホか、択一を受験した人ならわかりますね。そのころ「民法は得点源にすべき」という合格者のアドバイスを聞いて私は「民法は簡単なのか」と勘違いしていました。
 実際には民法は事前の準備に一番手間がかかり、難しいが、その日の問題、体調によって点数が上下しないから「得点源」になりうる、という意味でのアドバイスなのに。

テキスト:プロヴィデンステキスト(LEC入門講座教材編) C-BOOK

2004-09-07 00:45:08 | 司法試験:テキスト
 入門講座のテキストはプロヴィでした。バインダー形式のテキストで、講座がレベルアップするにしたがって補充していく、という斬新なものでした。

 しかし、いかんせんバインダーが重い!2冊もって登校するときには腰がもげそうになります。また、量的にもシケタイなどと比べたらかなり多いので、読むだけで相当の時間がかかります。

 そのせいか、高野講師は科目が進むにしたがって、補助レジュメ主体の講義になり、プロヴィは参考書としての扱いになってしまいました。

 内容的な話をすると、とにかく主要論点を網羅することに命をかけている本なので、どうでもいい論点も論証ブロックとして囲んであったりして、勉強量が無駄に増える危険があります。(もしくは、多すぎて挫折する危険があります)。 

 入門講座をいいかげんに受けていた私は、この「内容の振り分け」がいまいちわからず、受験後2年間このテキストそっちのけで問題をひたすら解く、という勉強にシフトしました。しかし、この勉強法は一定程度実力を付けるのには効果がありましたが、まもなく頭打ちになり、択一試験も1、2点差で落ちるということを2年繰り返しました。

 そこで、択一の弱点補強に加えて、プロヴィの内容をしっかり理解する、という勉強法を確立してからやっと択一を突破することができました。ここでの「内容のふりわけ」は講師からの指摘ではなく、自分で数多くの論文・択一問題を検討して行いました。入門・論基礎をマジメに受けていればこんな遠回りをしなくてよかったのですが。

 絶対にプロヴィ(C-BOOK)でなければいけない、ということはありませんが、シケタイと比べた場合、私にはプロヴィが合っていました。シケタイが文章形式主体で内容が薄めなのに対して、プロヴィ・C-BOOKは表・まとめノート形式で一覧性に長けているので重要情報を漏れなく確認するにはうってつけでした。(逆に、文章形式でないと読む気がしない人は、シケタイが合っているでしょう。ただ、勉強が進むにしたがって補充すべき箇所が多々あるでしょうが。)

 というわけで、プロヴィデンス・C-BOOKは網羅性という点で他の書を圧倒する長所がありますが、その形式には個人的な相性があります。メインテキスト、或いは参考書として検討されるかたは、一度、図書館・書店などで確認されてはいかがでしょうか。

 (なお、プロヴィ・C-BOOKに愛着のある私は、この夏休みにこれらをより使いやすく、実戦的に使うためにガイド本を作成しました。興味のある方はブックマークからご覧ください。)