米国の求めに応じてカナダで逮捕された中国通信機器大手・華為技術ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(47)を米国に引き渡すかどうかの審理が20日午前10時(日本時間21日午前3時)、カナダ西部バンクーバーのブリティッシュコロンビア州上級裁判所で始まった。孟氏は保釈中で、足元にはGPS(全地球測位システム)付きの追跡装置がつけられていた。

 20日午前6時、雨がちらつく裁判所前。辺りはまだ真っ暗だったが、カナダ公共放送CBCはすでにテントを張って4時間後の開廷に備えていた。CBCによると、「世界中のメディアが傍聴のためのパスを申請した」という。

 午前9時半の時点で傍聴を希望する列は100人に達した。法廷内とガラスで隔てられた傍聴席約150席は全て埋まり、中国人とみられる傍聴者も目立った。

 孟氏は黒地に白の水玉模様が入ったワンピース姿で、午前9時40分に法廷に入った。ハイヒールをはいた左の足首には、GPS付きの追跡装置がつけられていた。これは、孟氏の保釈条件の一つだ。

 2018年12月1日に逮捕された孟氏が保釈されたのはそのわずか10日後で、米国が起訴するより前だった。他の保釈条件としては、保釈金1千万カナダドル(約8億4千万円)を納める▽バンクーバーに滞在し続ける▽パスポートを預ける――が定められた。

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 現在、保釈金より高い1千数百万カナダドルもの価値があるといわれる邸宅に住む孟氏は、24時間監視下に置かれている。その一方、連絡の自由は十分確保されているとみられる。逮捕から1年となった昨年12月には、ファーウェイのホームページに「恐怖や痛み、失望や無力感、苦しみやもがきの1年間でした」とする本人の書簡が寄せられた。

 20日もスマートフォン2台を手に法廷に現れた孟氏。弁護団と言葉を交わす際には笑顔も見られ、その後はペンを片手に手元の資料を読み込んでいた。審理が始まると、隣に座った通訳の話に耳を傾け、休廷中には関係者とみられるスーツ姿の男性と傍聴席で会話を交わす姿もみられた。

 孟氏は、米司法当局から銀行詐欺と通信詐欺の罪に問われている。仮に米国で裁判を受けて有罪になった場合、最大で禁錮30年の刑を科せられる。

 米司法省が発表した起訴状によると、孟氏の起訴内容は2007年11月ごろから15年5月ごろ、イランを拠点とするスカイコム社について、実際は華為の関連企業だったのに、「現地の取引先」と米金融機関に虚偽の申告をして不正に取引をしたなどというもの。