24日開幕した東京モーターショーでは、各社の次世代向けコンセプトカー(試作車)や新型車が多く並べられている。中でも目立つのが軽自動車の「ハイテク化」だ。国内の自動車市場の4割近くを占める軽自動車は、新車ランキングでも上位に多くの車種が並び、各社の重要車種になっている。単なる近所向けの「足」として、登録車より簡素で安かった時代はもはや遠い過去のものになっている。

「軽の概念を一新」

 「これまでの軽自動車の概念を一新した、EVならではの力強い走りを提供する」。23日、東京モーターショーの報道発表会。目玉として展示した軽自動車の電気自動車(EV)「ニッサンIMk」の前で、日産自動車の中畔(なかぐろ)邦雄副社長は強調した。

 IMkは、日産が今秋にスカイラインで実用化したばかりの高速道路で手放し運転できる機能「プロパイロット2.0」を、一般道でも使えるようにする。無人駐車やスマートフォンとの連携など、最新機能を盛り込むコンセプトだ。

 こういった最先端の機能を、なぜ「軽」にふんだんに盛り込むのか。日産幹部は「軽を買う人はいまや安いからという理由だけではなく、取り回しの良さなど、大きさがぴったりという理由で買う人が多い。高機能の軽も需要がある」と話す。

ここから続き

 一般的に購入価格も維持費も安く、地方の足として「セカンドカー」需要で買われることが多いとされてきた軽。それが近年は一変している。

200万円近くの価格も

 日産は今年3月に、軽自動車「デイズ」を全面改良して売り出した。これまで日産の軽は、提携相手の三菱自動車が開発していたが、今回は日産が初めて開発。2016年にミニバン「セレナ」に搭載されて話題を集めた運転支援機能「プロパイロット」を、軽自動車で初めて導入。「普通車でもあまりついていない」(販売店関係者)という、急病や事故の際に自動で警察や消防に連絡できる機能「SOSコール」も備えた。

 販売店「東京日産」などを運営する日産東京販売ホールディングスの担当者によると、同社の販売店で新型デイズを買う人には、ノートやセレナなどといった普通車から乗り換える人も少なくない。両方の機能をつける場合は車の値段が150万円を超え、200万円近く支払うケースも目立つ。小型の普通車も視野に入る値段だ。

 他社でも、150万円から200万円近くの軽はいまや珍しくない。ホンダには、スライドドアで車高が高く、家族向けの「N―BOX(ボックス)」というヒット車種がある。夜間の歩行者や横断中の自転車も検知できる衝突軽減ブレーキなど、安全支援パッケージを標準装備しており、150万円を超えるのが普通だ。

高価格でも販売好調

 総務省小売物価統計調査によると、軽の平均価格は01年に約88万円だったが、18年には約140万円まで上昇。高価格化する中でも軽の販売は底堅く、18年の新車販売の527万台のうち、軽は4割近くの192万台を占める。背景には、質感の向上に加え、スライドドア付きで背が高く値段も高い「スーパーハイト」タイプに人気が集まっていることや、自動ブレーキや前の車を追従する機能で軽にも最新のものを入れたいという需要が広がっていることがあるようだ。

 ホンダの15年度の調査では、N―BOXの購入理由として「衝突安全性能」を挙げた人は17.7%、「予防安全性能」を挙げる人は17.0%で、それぞれ購入理由として16、17番目に過ぎなかった。

 それが昨年度は一変。予防安全性能は51.8%で2番目、衝突安全性能は48.2%で4番目と大きく上昇した。

今や都心部のファーストカーに

 ホンダ幹部は「軽は地方のセカンドカーとしての需要が強かったが、いまは都心部のファーストカーとしても乗られるため、最新技術の採用も必要」と説明する。

 三菱自も、東京モーターショーで公開した軽のコンセプトカーに最新の運転支援技術を搭載。いま販売中の軽は、日産のプロパイロットと同一の機能をつければ200数十万円になるが、それでもこの高価格グレードが当初の予想より多く売れているという。

 担当者は「軽は運転が苦手な方が乗ることも多い。衝突予防や被害軽減などで良い機能を求められる」と話す。