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 円安で、家電生産の国内回帰が広がっている。パナソニックシャープは、日本市場向け家電の生産の一部を海外から国内に戻す。日本メーカーの多くは、1980年代半ばからの円高傾向のなか、海外での生産を増やしてきた。だが、ここ2年ほどで円安が進み、国内生産でも採算が取れるようになってきた。

 パナソニックは、今春以降、中国で生産していた電子レンジを神戸工場(兵庫県)に、エアコンを草津工場(滋賀県)に、洗濯機を袋井工場(静岡県)に、それぞれ移すことを検討している。

 パナソニックは国内で売る製品の多くを海外で作っており、円安が進むと輸入価格があがり、採算が悪化する。1ドル=110円よりも円安になると、1円の円安で家電でのもうけが18億円減る計算だ。今の為替レート(1ドル=119円前後)では、国内生産の方が有利だ。

 シャープの高橋興三社長は6日、「1ドルが120円の水準なら、国内回帰を進めていく」と話した。6月にも空気清浄機やプラズマクラスターイオン発生機を中国での生産から八尾工場(大阪府)に切り替える。

 シャープは、家電や複写機など完成品の多くを海外で生産している。国内生産は、価格の高い大型冷蔵庫や大型液晶テレビなど最上位機種に限ってきた。

 今後は、国内で売れ筋の容量350リットル以下の中型冷蔵庫や、52型以下の液晶テレビの生産を海外から国内に移す。

 ダイキン工業も国内シフトに積極的だ。井上礼之会長は5日、「中国で生産している家庭用エアコンのうち50万~100万台を国内に移したい」と話した。

 ただ、すべての製品で国内回帰が進むわけではない。シャープの高橋社長は「海外の工場をカラにするわけにいかない。日本は人手不足で、(国内回帰は)簡単にはいかない」と話し、国内への大規模な設備投資は否定した。

 パナソニック広報も「為替の影響を受けにくい体制にするためにも、どの品目を回帰させるか慎重に決めていく」と話す。