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金魚日和

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薬指の標本/小川洋子

2010年08月08日 | 本・作家
先回、川上弘美氏の作品をとりあげた際、
『蛇を踏む~溺レる~竜宮』路線の賛美者である事を書き落とした。
あの書き方では単なる『センセイの鞄』嫌いなタコ好き人間宣言である、反省。

で、その川上さんと小川さんは、
自分の中では表裏一体の関係に置かれている。

…どちらが表・裏、という訳では無いので、
“軟硬”“熱冷”“日本酒とブランデー”の関係、といった方が適切なのかもしれない。
余計にワカランな。


この作品は、 “失われゆくモノ”で溢れている氏の世界にあって、
“失われゆくモノを標本にして残す”事を軸に展開される話しである。

ただし、“残された(=標本化された)モノ”に関して語られる事は、無い。
標本は「繰り返し思い出し、懐かしむ為に」つくられるのでは無く、
「封じ込め、分離し、完結させる為に」つくられるモノなのだ。
静かに、少しずつ、だが決然と喪失して行く氏の世界にあって、
失なわれたモノに対する感傷は、読み手の想像の中だけにしか許されていない。


束縛と自由、フェティシズムが支配する世界の歪んだ恋愛小説であり、
2年後、『ホテル・アイリス』という長篇作品に昇華される。 ←勝手な決めつけ


『偶然の祝福』文庫本の解説は川上さんが書いておいでだ。