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いま、変わるために必要なこと。 ―――
“ 今求められているもの、それは価値観の転換であり心の持ち方の転換だ。
それ以外の何ものでもない。そのことに「気づく」必要がある ” (あとがきより)
“ エッセイという形で文章を書くには、言語化する前に、まず自分が対象を
どのようにきめ細かく見ているか、そして見る自分は対象にどのような意味を
見出しているか、その「見る眼」と「気づき」が大事だ。
一口で感性と言うことができよう ”
“ この絵本が今の時代に語りかけているテーマを一言で言うなら、それは、
≪孤独な時間の大切さ≫ということになろう。
なぜ、「孤独な時間」は大切なのか。答えは簡単だ。人は孤独な時こそ、
とことん悩んだり、苦しんだり、寂そう感にとらわれたりして、それらを乗り越える
ために懸命に考えるからだ。逆を言うなら、人は孤独にならなければ、真剣に
「考える」という経験をしないで過ごしてしまい、考えるという「心の習慣」が
身につかないだろう ”
“ 「なぜこの大人向けの本で絵本の話を延々と」などと言うなかれ。
想像力や感性の枯れた大人にこそ、絵本はその再生の特効薬なのだから ”
<「さよなら」と、キツネがいいました。「さっきの秘密をいおうかね。
なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ」>(サンテグジュペリ『星の王子さま』)
<目に見えるものに価値をおく社会と、目に見えないものに価値をおくことができる
社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。
夜の闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように。>
(星野道夫『森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて』)
“ 「父親である柳田さんが内観を受けることが、息子さんにとって意味があるか
どうかは、私にもわかりません。問題は、柳田さんが崖っ縁に立たされて、
もうこの先はない、というぎりぎりの切羽詰まった心境になって、その中で結果の
ことなど考えずに、全身を投げ出すくらいの覚悟で内観を受けるなら、意味が
出てくるかもしれません」 ”
(精神科の治療を受けている息子の父親として、内観を受ける事を医師から
進められた事を、臨床心理学者である河合隼雄先生に柳田氏が質問したこと
の返事)
<人生には時に「100点以外はダメなときがある」ことを知る必要がある。
努力を続けてきた、という人のなかには、常に80点の努力を続けてきている
人がある。確かにその人の「平均点」は人並み以上どころか、大変に高い。
ところが、100点以外はダメ、というときも80点をとっていては駄目なのである>
(河合隼雄『こころの処方箋』)
“ 最近の自分の文章を読み直してみると、事故や事件や社会問題について論じて
いても、ただ論理的に分析しているだけでなく、関係する人々の心の動きや
生き方や価値観などを直接論じなくても視野に入れていることが感じられる。
それは河合先生に背中を押される思いで書いているからだと思う ”
柳田邦男氏の講演を聴いて感じたことだが、以前の書物にはなかった「心のさま」
が感じられたのは、このような含みがあったことが解り、納得した次第である。
河合隼雄氏の「100点以外はダメなときがある」のくだりは、『リーダーシップ原論』
のなかでいわれていることに通ずるものがある。
「いつも100~120%の力を出すことが大切。
50、60%の力で、できることばかりして いたのでは伸びなくなる」
『自分の壁』に挑戦していかなければ、いつまでたっても壁は破れない。