Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 秀樹のクラリネット 第22回

2011-04-29 04:01:02 | 日記
 ネット配信された秀樹のクラリネットを聞いたフランス人女性から便りが届いた。
「その昔私の恋人は日本人のクラリネット奏者で、ヒデキという名前でした。あなたの演奏を聞いて昔を思い出し涙が止まらなくなりました。パリで楽しい日々を送ったのです。 私の自動車事故でなくなってしまいました。でもネットであなたの演奏を聞いた時、昔の素晴らしい日々の記憶が蘇って来たのです。ヒデキは私のためにラビアンローズをよく吹いてくれました。ぜひあなたの演奏でラビアンローズを聞かせてください」
 この内容だった。
テレビ局のプロモートで、ヒデキが通っている中学校のジャズ研究会のメンバーと一緒に演奏する事になった。
 秀樹たちの演奏がネット配信されると、また世界中で大反響となったのである。
「ヨーロッパはいうに及ばず、アメリカ、アジア、オーストラリアで大反響となった」
 世界各地の人々から、
「あなたの思い出(ベニー。グッドマン)」
「聖者が街にやってくる」
「愛の讃歌」
「エーデルワイス」
「アリラン」
 リクエストが相次いだのだった。
あのフランス人女性がネットで語りかけてきた。
「トレビアン・イデキ。 アーイデキ。(フランス語にはHの発音がないためヒデキを発音するとイデキに聞こえる)」
 熱狂している。
震災にあってすべてを失った少年、田村秀樹のクラリネットは世界の人々を魅了したのである。