Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 秀樹のクラリネット 第12回

2011-04-19 04:14:42 | 日記
 秀樹のクラリネットもさることながら他のジャズ研究会のメンバーの腕前も凄いものがあった。
「中学生がやっているとは思えない」
 との声があちらこちらから上がったのである。
「うちは音楽には力を入れていますから」
 校長先生も満足そうだ。
演奏している秀樹自身も、
「ドラムとキーボードがプロ並だ。さすが東京の底力」
 演奏しながら仲間の技量に舌を巻いていた。
みんなの手拍子で被災した人々の興奮が最高に盛り上がっとき一人の中年男性が、
「月光仮面をやってくんないか」
 とリクエストしてきた。
秀樹はこの曲は良く知っていたのでこの申し出に気軽に応じた。秀樹のクラリネットに合わせてこの中年男性は、
「どこの誰かは知らないけれど、だれもがみんな知っている」
 涙をこぼしながら唄い出した。
秀樹は演奏しながら心の底で、
「みんな強いヒーローの出現を望んでいるのだ。だれか助けてくれと言っている」
 こう思うと涙がこぼれた。
そのうち、みんなで月光仮面の歌が大合唱となった。

*この物語はフィクションです。