Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 秀樹のクラリネット 第3回

2011-04-08 03:04:58 | 日記
 秀樹のクラリネットはあっという間に江戸川の人達に知れ渡った。新年度から一緒になる江戸川区内の中学生にも。
「秀樹のクラリネット」
 として評判を呼んでいた。
早くもファンになった女の子がいたほどである。
 秀樹には震災以来気がかりな事があった。
「小学校以来仲の良かった中田真子の消息が分からない事である」
 秀樹は真子の事を案じながら気がついたら、
「ふるさと」
 を吹いていた。
江戸川の人達も秀樹のクラリネットにあわせて歌を歌っている。
「だが秀樹の心を苦しみを知る者はいなかった」
 知れと言う方が無理であるが。
「ぼくは負けない」
 秀樹はクラリネットを吹きながらこう思った。