Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 秀樹のクラリネット 第10回

2011-04-16 02:21:37 | 日記
「あの事は内緒にしておいて」
 すっかり落ち着きを取り戻した田村秀樹は、新しいクラスメート村田愛子にこう言った。
「もちろん、あなたが不利になるような事は言わないよ」
 愛子は歯切れのいい下町言葉でこう言うのだった。
「二人だけの秘密」
「ええ、、、、」
 二人の仲は急速に接近していった。
「ぼくには今までクラリネットという宝があった。そして今また新しい宝ができた。愛子ちゃんだ」
 この言葉に愛子は涙を流して喜んだのである。
「うれしい」
 秀樹はクラリネットを取り出して愛子にこう言った。
「ぼく達のテーマーソングだ」
 曲目は、
「オーバー・ザ・レインボー」
 である。
秀樹の演奏には熱がこもっていた。
 二番までは普通の演奏、三番に入るとジャズのアドリブ演奏でこの曲を演奏すると、愛子は秀樹のあまりの腕前の凄さにため息をついて驚嘆した。