文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば77:下段本文82-85

2011年12月26日 | 文明開化と平仮名英語

77下段本文82-85


 ③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語、②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予想させる。①『外国商通古と者つけ』は下段が全107語。 いずれも刊年不明なるも年代順は≪③①⇒②≫の順と見ている。

久しぶりに①『外国商通古と者つけ』②『外国商通言葉集』③『外国商通古と者附』が(①の一例欠を除き)顔をそろえた恰好で活気が出てきた。やはり、商売は肝心のところは虎視眈々といったところであろう。

ここでは、従前の例に倣って②の順を尊重して82行から85行とした。

 
 82行目:②日本語≪ねだん≫英語読みぷらいす。英語綴りはprice。① 85行目には②と同様≪ねだん ぷらいす≫が見られる。③には114行目≪ねだん⇒ね多(だ)ん≫崩字の使用≪ぷ⇒ふ≫の違い。三者ともほぼ同じ、ご覧下さい。
⑤『新撰英語実用便』には
≪直段 ねだん フライス≫値段と漢字が少し異なるが。≪プ⇒フ≫の違い。細部の違いで、大筋同じでわかりやすい。

83行目:
②日本語≪いくら≫英語読み者(は)ーまッち英語綴り how much
③115行目、①66行目とも≪いくら 者(は)まつち
『新撰英語実用便』には≪何程 いくら ハゥマッチ≫≪いくら⇔何程≫とは成程と感心

 
84行目:②日本語≪た可(か)い≫英語読みでいや
≫さて英語綴りは dear 。
③116行目では≪
た可(か)い てゑや
≫≪で⇒て≫の違いが気がかり。

儲け話は商売では片時も頭から離れないであろうが、より耳学問を尊重した③①には別途③99行目に≪
かう志(じ)起(き) でやぷらいす≫①51行目に≪高志(じ)き でやぷらいす≫とそれぞれ別建てで引用されていた。商売の関心事を知らされた。ぼんやり見ていると≪買う時期≫とまちがいそうだ・・・
⑤『新撰英語実用便』には高値 た可(か)い デェヤ。⑥『改正増補英語箋』には≪價貴アタヒタカキ costly≫さすがレベルの違いを示しているようだ。


85行目:②の日本語≪や春(す)い≫英語読みちいぷ。英語綴り cheap。 ③①ともほぼ同じ。
⑤『新撰英語実用便』では安値 や春(す)い チイプ
⑥『改正増補英語箋』には≪價賤アタイヤスキ price is cheap プライス イス チープ≫。これも漢字が難しい。
いよいよ核心に触れる重要な部分に差し掛かってきたようだ
 
次回  78:下段本文86-89

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本

    ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑤-2尾嵜冨五郎蔵板『英語手引草 扱言編』(刊年不明)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
  
   



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