文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば75:下段本文74-77

2011年12月12日 | 文明開化と平仮名英語

75下段本文74-77


 ③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語、②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予想させる。①『外国商通古と者つけ』は下段が全107語。 いずれも刊年不明なるも年代順は≪③①⇒②≫の順と見ている。

これまでしばしば②『外国商通言葉集』にのみ収録されていて③『外国商通古と者附』及び①『外国商通古と者つけ』には収録されていないことが続いていたが、今回は③と①のそれぞれ二例づつ見つかった。といっても、同じ言葉というよりも類語の類を見つけたといったほうが当たっているだろう。従前と同様に
3部作のうち1部にのみ収録されている場合に赤丸印表示。

こでは、従前の例に倣って②の順を尊重して74行から77行とした。

 
 74行目:②日本語「おもう」英語読み志(し)んき。英語綴りは語尾のに戸惑うが think。②に相当する言葉は③①とも見つけ出せなかった。
⑤『新撰英語実用便』、⑤-2『英語手引草 扱言編』とも≪
思おもう ミーン≫。
⑥『改正増補英語箋』には≪思オモフ to mean ツー ミーン≫どうやら思い方が違うようだ・・・

75行目:②日本語「だます」英語読みで志(し)ーぷ
⑤-2『英語手引草 扱言編』≪欺瞞 だま春(す) デシーブ
⑥『改正増補英語箋』には≪欺瞞 ダマス to deceive ツー デセイフ
よく見ると綴りが違うように思うが?
類似の言葉に⑤『新撰英語実用便』、⑤-2『英語手引草 扱言編』とも≪偽いつ王(わ)る ライス≫。
⑥『改正増補英語箋』には≪偽イツハリノ false フェールス≫どうやら思い方が、とらえ方が違う・・・
類語辞典を手元において調べる必要があるようだ。


 
76行目:②日本語「里(り)こう」英語読みくれぶる英語綴り clever 語尾が気にかかる。同類というか、類似のというか近い言葉が③①からそれぞれ見つけた≪かしこき 王(わ)いす≫英語綴り wise
⑤『新撰英語実用便』、⑤-2『英語手引草 扱言編』⑥『改正増補英語箋』には何故か見当たらない。



77行目:②の日本語「ぐまひ」英語読みふーり志(し)。英語綴り foolish
久しぶりに③①そろって日本語「おろ可(か)」英語読みふーる

か者、英語綴り fool


⑤『新撰英語実用便』⑤-2『英語手引草 扱言編』 ⑥『改正増補英語箋』にはそれらしい言葉が見当たらない。愚かの意で⑤『新撰英語実用便』に≪愚意 ばからしい フーリシ≫ 英語綴りfoolish

同じ編者で取り上げる言葉がこんなにも違うのは,何故か、悩ましい・・・。編者は編者で種々の種本というか、親本の影響を受けたのであろう・・・
 
次回  76:下段本文78-81

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本

     ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本

   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑤-2尾嵜冨五郎蔵板『英語手引草 扱言編』(刊年不明)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵



最新の画像もっと見る