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経営者はメンタルヘルスにどう取組むべきか:ヒューマンリスクとしてのメンタルヘルス2010年2月24日嶋田 美奈

2022-06-05 17:14:10 | 連絡
開催日 2010年2月24日
スピーカ 嶋田 美奈 ((株)ICD代表取締役/臨床心理士)
モデレータ 森川 正之 (RIETI副所長)
 RIETI(独立行政法人経済産業研究所、英語名称:The Research Institute of Economy, Trade and Industry)は、2001年に設立された政策シンクタンクです。理論的・実証的な研究とともに政策現場とのシナジー効果を発揮して、エビデンスに基づく政策提言を行うことをミッションとしており、これまで20年以上にわたる活動を通じて内外から高い評価を得ています。
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〇メンタルヘルスとは
メンタルヘルスとは「心の健康」で、メンタルヘルスケアは「心の健康づくり」を指します。
メンタルヘルス不全者とはメンタルな問題を抱え、業務や生活に支障をきたす者、もしくは支障をきたすおそれのある者と理解されています。
メンタルヘルス不全者は経済状況の悪化や就職難のほか、心の病の認知度が向上していることを背景に増加傾向にあります。
米国労働安全衛生研究所(NIOSH)による職業性ストレスモデルによると、「急性のストレス反応(心理、生理、行動)」は「職場のストレッサー(作業、作業環境、人間関係など)」に「個人的要因(年齢、性別、性格など)」と「仕事以外の要因(家庭など)」と「緩衝要因(社会的支援)」の3つの要因のいずれかまたはすべてが作用して引き起こされます。
ストレス反応の方向性と程度はそれぞれの要因の有無により異なります。「疾病(ストレス関連疾病)」はストレス反応を受けた後も状況が改善されなかった場合に起こるといわれています。
NIOSHによるストレスモデル以外にもいくつかのモデルが存在しますが、明確な解決モデルは提示されていません。
それぞれの要因について個人差が大きく、共通の対策を講じることが難しいためです。どこからが病気なのか、急性と慢性との区別が難しいのも解決モデルが提示されないことの大きな要因となっています。
ー略ー
〇経営者のメンタルヘルス
現在取り組まれている企業のメンタルヘルスは従業員が主になっており、経営者・経営陣を対象としたメンタルヘルス対策はありません。
しかし一方でメンタルヘルスの問題を抱える経営者の数は増加しています。
実際、中小企業経営者の自殺者数は大企業管理職の自殺者数の約4倍の多さになっています。
経営者・経営陣を対象としたメンタルヘルス対策を考える必要があります。
そうした対策は従業員を対象としたメンタルヘルス対策とは別物として位置付ける必要があります。
企業として精神科医や心療内科医といった専門医とのネットワークを持つ必要もあります。
経営者自身も健康管理とストレスコントロールをうまくして、疲れた時には健康対策として進んで休みを取る姿勢を企業内でアピールすることも必要です。
〇質疑応答
Q:
(1) 日本人の自殺者が世界の中でも多いのは国民性の問題も絡んでいるとお考えですか。
(2) 社会に進出することに不安を感じる学生が多い中、どういうアドバイスをすればメンタルヘルス問題の軽減につながるでしょうか。
(3) メンタルヘルス不全者なので人員削減の対象とするという考えに合理性はありますか。
A:
(1) 専門的に研究している訳ではないので断言はできませんが、国民性の問題は絡んでいると思います。「自分が大変になったときに他人に迷惑をかけないため」といったところで日本人には変な意味での「潔さ」があるのかもしれません。
(2) 学生に対するアドバイスは、自分にあった企業に入ることです。
自分の中でやりたいこと、企業の中で自分を活かせる分野をみつけることです。
すぐにあきらめないことも大切です。
何事もそうですが、基礎的なことはおもしろくありません。
おもしろさは、自分の中にある程度の知識や情報が蓄積されてから感じるものです。
その意味で、最初の2~3年は我慢して、いろいろなことがわかった上でおもしろくないのであれば、その時点で判断すれば良いのだと思います。
(3) メンタルヘルス不全者だから人員削減の対象とするというのは常識的な考え方ではありません。
メンタルヘルス不全者でもパフォーマンスの高い従業員は多くいます。
従って、メンタルヘルス不全者でもパフォーマンスの高い人材とそうでない人材は別の次元で考えるべきです。
メンタルヘルス不全だからという理由だけで問題を片づけることはできません。
Q:
ベックのうつ病調査表 (BDI テスト)を従業員に回答させて、それを時系列で追っていけばメンタルヘルスケアの効果はわかるのではないでしょうか。
メンタルヘルスの取り組みはうつ病に対し医学的に効果のある治療法(認知行動療法や対人関係療法)とは関係のないように思えます。効果はあるのでしょうか。
A:
BDIテストで費用対効果が明かになるのであれば、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
メンタルヘルスの取り組みの目的はメンタルヘルス不全者の早期発見であり、治療ではありません。
これがメンタルヘルス分野での主流の考えです。
認知行動療法や対人関係療法でケアするのはハイリスクアプローチで、そうしたケアはEAPや専門スタッフにより提供されるものです。
これは企業内での取り組みとは別の話です。
企業内でのメンタルヘルスケアの取り組みは、従業員1人ひとりがメンタルヘルスケアに関する知識を持ち、メンタルヘルスに関する問題を発見し、ストレスを早めにコントロールし、問題を放置しないようにするための予防的手法として取り入れられているものです。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。



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