<歴史上、「太陽の沈まない国」と呼ばれるのは、ハプスブルク家のスペイン王国(スペイン帝国) と七年戦争後のイギリス(イギリス帝国)である。>
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(北京=原田逸策) 2020/1/17 23:00 日本経済新聞 電子版 :::::
「14億人の巨大市場」に元気がない理由は携帯電話の販売動向から浮かぶ。
中国情報通信研究院によると19年の出荷台数は3億8900万台と3年連続で前年割れし、16年からの減少幅は1億7千万台に及ぶ。
実はこのわずか3年間で18~30歳の若者は3千万人も減った。90年代に「一人っ子政策」が浸透し、99年生まれは1400万人と90年生まれ(2800万人)の半分しかいない。スマホや自動車、衣服が売れないのは消費意欲が旺盛な若者の減少も大きな要因だ。
17日発表した19年の出生数は前年比58万人減の1465万人と3年連続で減った。1人の女性が生涯に生む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は12~16年平均で1.2程度。出産適齢期の女性も25年までの10年間に約4割減り、出生数の減少は今後も続く。
中国では15~64歳の生産年齢人口は13年の10億人をピークに減り始めた。
一人っ子政策で出産を抑えたため、総人口に占める生産年齢人口の比率は10年に75%まで上昇し、日本(ピーク時に70%)よりも高い。
一般に生産年齢人口やその比率が拡大すれば、経済成長を押し上げる「人口ボーナス」が働く。中国はそのメリットを最大限に享受してきたが、逆回転が始まる。
高速成長を支えた「農民工」らも頭打ちだ。農村部からの人口流入は都市部でマンションの爆発的な需要を生んだ。
だが戸籍のある場所を離れて暮らす「流動人口」は19年末に2億3600万人と5年連続で減った。高齢化した農民工が故郷に帰っているからだ。
中泰証券の李迅雷首席エコノミストは「23年ごろから人口動態の経済への下押し圧力がはっきりする」とみる。
約2700万人いる63年生まれが60歳で定年退職するからだ。
中国で62~76年生まれは各年2千万人以上いる「団塊の世代」だ。
60歳定年が中国では厳格に実施されており、仮に15~59歳を生産年齢人口とすると22年からは毎年約1千万人(約1%)ずつ減る。
問題は生産年齢人口が減り始めたのに、国全体は豊かになっていない「未富先老(豊かになる前に老いる)」だ。
生産年齢人口がピークだった1995年の日本の1人あたりGDPは円高もあって米国の1.5倍だったが、
13年の中国は米国の7分の1以下だ。
医療や年金など社会保障への財政支出も17年の1.2兆元(約20兆円)から急拡大する。
19年には中国社会科学院が「公的年金の積立金が35年に底をつく」との試算を公表した。軍事や治安などの支出も圧迫しそうで、習指導部が掲げる「中華民族の偉大な復興」にも影を投げかける。
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