トランプ・ゼレンスキー会談が物別れに終わり、米国はウクライナへの軍事支援を一時停止した。
世界経済への影響も懸念されるなか、注目が集まるのが、中国の習近平・国家主席の動向だ。
キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司・主任研究員は、トランプ氏が米メディアに、ウクライナに関して「いつかロシア領になるかもしれないし、ならないかもしれない」と発言したことに着目する。
「トランプ氏の発言は、ウクライナの領土割譲を容認するようなニュアンスで、そうなれば“力による現状変更”を米国が認めたことになる。
習氏

からすれば、“では、我々が力で台湾を奪っても誰も文句は言えませんね”という主張になる。
習氏にとって有利な状況が整ってきたと考えているでしょう」
■台湾総統の支持基盤の揺らぎも好機に
もともと米情報機関などは習氏の3期目が終わる2027年までに台湾侵攻が起きる可能性をかねてから指摘してきたが、トランプ政権の誕生による混乱で、
「習氏が今年か来年にも併合に動く可能性が高まった」(峯村氏)と見ている。
実際、習氏が備えを進めている様子も窺える。
それが人民解放軍の幹部らの「粛清」だ。昨年から陸海軍や治安部隊の幹部の失脚が報じられ、国防相も汚職問題で立場を追われている。
「こうした『反腐敗運動』は、かつて習氏が権力を掌握するために進めたものでしたが、現在は局面が変わり、軍幹部らの戦う意思や能力、寝返る可能性などを考慮して粛清していると考えられます。
まさに台湾有事を見据えた体制整備と言っていい」(峯村氏)

一方のトランプ氏は、中国による台湾への武力侵攻を認めないか、という問いに「何もコメントしない」と答える曖昧な姿勢を見せる。
軍事的関与の意思を示したバイデン前大統領とは全く違うスタンスだ。
峯村氏が言う。 「台湾の併合に動くに際し、中国にとって最も重要な要件は米軍が軍事介入してこないことです。
流石に露骨な軍事侵攻は米軍が動く可能性があって習氏にとってもハイリスク。
海上封鎖したうえでエネルギーや物資が不足した台湾を情報戦でも揺さぶって内側から崩壊させるシナリオの可能性が高いと見ていますが、それに際しても、米軍の最高指揮官であるトランプ氏が『台湾併合を黙認する』との確証が得られることが、習氏にとってのGOサインになるでしょう」
ウクライナやグリーンランドをめぐる問題がどう決着するかは、その判断につながってくる。
それ以外の部分でも「最近、台湾の頼清徳・総統の支持率が初めて5割を切り、支持基盤が揺らいでいることも中国にとっては好機」(同前)となっているのだ。
台湾有事のXデーが来れば、当然ながら日本への影響も甚大だ。


台湾との半導体貿易などが滞る経済的リスクは大きいし、
東アジアで米軍が動かなければ中国の軍事的脅威により直接的に晒される事態となる。
トランプ2.0がもたらす外交安全保障の課題にどう向き合うか。対応が急務だ。
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