<私たち現場の医療従事者は両方を疑って診療しなければいけないのは明白であり、普段からの標準予防策が重要になることは言うまでもありません。>
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2020/10/16
倉原優(近畿中央呼吸器センター)
倉原優(近畿中央呼吸器センター)
倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。08年から始めた自身のブログ「呼吸器内科医」をベースにした書籍『「寄り道」呼吸器診療-呼吸器科医が悩む疑問とエビデンス-』を、2013年に刊行した。
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SARS-CoV-2の感染では、細菌感染症やその他ウイルス感染症の併発が少なからず報告されています1)。自験でも、尿中肺炎球菌抗原が陽性になったCOVID-19症例がありました。
インフルエンザシーズンを迎えるに当たって問題になるのは、両ウイルスの鑑別ですが、共感染の可能性を考えると、もはや鑑別することに意味があるのかどうかという議論も出てきそうです。
日本感染症学会が提言した「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」によると、「COVID-19とインフルエンザの鑑別は困難である」と明記されています2)。
発熱、咳嗽、倦怠感など、呼吸器系に感染するウイルスはだいたい同じ症状ですから、そりゃあ鑑別は難しいでしょう。
Larsenらによるインフルエンザ患者2470人、COVID-19患者5万5924人の検討では、ハッセ図に示すように、インフルエンザは「咳嗽→発熱」の経過、COVID-19は「発熱→咳嗽」の経過をたどりやすいとされています(図1、2)3)。なるほど、「コロナは熱から来やすい」ということか。皆さんの印象はいかがでしょうか?
図1 インフルエンザのハッセ図(赤:最もたどりやすい経過、青:最もたどりにくい経過)(文献3より引用)
インフルエンザシーズンを迎えるに当たって問題になるのは、両ウイルスの鑑別ですが、共感染の可能性を考えると、もはや鑑別することに意味があるのかどうかという議論も出てきそうです。
日本感染症学会が提言した「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」によると、「COVID-19とインフルエンザの鑑別は困難である」と明記されています2)。
発熱、咳嗽、倦怠感など、呼吸器系に感染するウイルスはだいたい同じ症状ですから、そりゃあ鑑別は難しいでしょう。
Larsenらによるインフルエンザ患者2470人、COVID-19患者5万5924人の検討では、ハッセ図に示すように、インフルエンザは「咳嗽→発熱」の経過、COVID-19は「発熱→咳嗽」の経過をたどりやすいとされています(図1、2)3)。なるほど、「コロナは熱から来やすい」ということか。皆さんの印象はいかがでしょうか?
図1 インフルエンザのハッセ図(赤:最もたどりやすい経過、青:最もたどりにくい経過)(文献3より引用)

図2 COVID-19のハッセ図(赤:最もたどりやすい経過、青:最もたどりにくい経過)(文献3より引用)

いずれ、インフルエンザウイルスとSARS-CoV-2の感染を同時に判定できるキットが登場する見込みで、もしかすると次のインフルエンザシーズンではそれが活躍するかもしれません。
個人的には、入院が必要ない軽症例には、インフルエンザウイルスもSARS-CoV-2も検出しなくてよいと思っています。しかしインフルエンザですら陰性証明を求める人がいる世の中、世間が「非検査」を許容してくれないかもしれません。ソフトバンクグループの孫正義社長も「PCRどんどんやろう」と情報発信していますし、世論がこれに追随する可能性もあります。
高齢者や基礎疾患を有する人だけが入院対象となり、それ以外は事実上2類感染症相当の扱いでなくなるなら、なおさら軽症例は検査しなくてもよいと思うのですが、残念ながら、恐らく「両方検査できるようになったら取りあえず検査する」というのがニューノーマルになるのでしょう。
個人的には、入院が必要ない軽症例には、インフルエンザウイルスもSARS-CoV-2も検出しなくてよいと思っています。しかしインフルエンザですら陰性証明を求める人がいる世の中、世間が「非検査」を許容してくれないかもしれません。ソフトバンクグループの孫正義社長も「PCRどんどんやろう」と情報発信していますし、世論がこれに追随する可能性もあります。
高齢者や基礎疾患を有する人だけが入院対象となり、それ以外は事実上2類感染症相当の扱いでなくなるなら、なおさら軽症例は検査しなくてもよいと思うのですが、残念ながら、恐らく「両方検査できるようになったら取りあえず検査する」というのがニューノーマルになるのでしょう。
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、9月4日にCOVID-19流行下における季節インフルエンザ流行対策について、「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」の通知を発出しています。
帰国者・接触者相談センターを都道府県ごとの受診・相談センターへ変更し、発熱などの有症状患者さんから相談があった場合、最寄りの適切な医療機関の案内や受診調整を行うことなど、指針が示されています。
結局のところ、私たち現場の医療従事者は両方を疑って診療しなければいけないのは明白であり、普段からの標準予防策が重要になることは言うまでもありません。
帰国者・接触者相談センターを都道府県ごとの受診・相談センターへ変更し、発熱などの有症状患者さんから相談があった場合、最寄りの適切な医療機関の案内や受診調整を行うことなど、指針が示されています。
結局のところ、私たち現場の医療従事者は両方を疑って診療しなければいけないのは明白であり、普段からの標準予防策が重要になることは言うまでもありません。
(参考文献)
1) Lansbury L, et al. Co-infections in people with COVID-19: a systematic review and meta-analysis. J Infect. 2020 Aug; 81(2):266-75.
2) 一般社団法人日本感染症学会提言 今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて.
3) Larsen JR, et al. Modeling the Onset of Symptoms of COVID-19. Front.Public Health,13 August 2020.
1) Lansbury L, et al. Co-infections in people with COVID-19: a systematic review and meta-analysis. J Infect. 2020 Aug; 81(2):266-75.
2) 一般社団法人日本感染症学会提言 今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて.
3) Larsen JR, et al. Modeling the Onset of Symptoms of COVID-19. Front.Public Health,13 August 2020.